三つ巴の戦い⑦~死闘:前編~
シアは先手を打ち【魔矢】を放つ。シアは何の気配も発することなく【魔矢】を放った事にエハンは目を細める。
(ほぉ…人間にしてはやるではないか…)
詠唱をすることなくこのレベルの【魔矢】を放った事にエハンは驚いたようだ。エハンはシアの【魔矢】を防ぐために防御陣を形成する。その形成する時間は驚嘆すべき速度だ。
だが…。
シアの放った【魔矢】はエハンの防御陣に当たる前に消滅する。消滅した理由はシアの放った【魔矢】同士が衝突し消滅したのだ。
衝突し消滅した【魔矢】にエハンは一瞬そちらに気が逸れてしまったのだ。まさか、防御陣にあたって消滅するのではなく、自滅するとは思わなかったのだ。魔術による攻撃が攻撃を為していないことにエハンは呆然としてしまったのだ。
ドサッ…
エハンの背後に何かが落ちた音がしたため、エハンはつい後ろを振り返ってしまった。振り返った足下に枝が落ちている。その枝の先端には青々とした歯が付いており、自然に落下した物ではないのが明らかだ。折れた先は何かで撃ち抜かれた様な痕があった。
(…これは…あの女の【魔矢】で撃ち抜かれた…)
エハンがその事に気付いた時にゾワリとした感覚が首筋に走り、エハンは振り返るとジェドの剣が目前に迫っていた。ジェドの剣はエハンの防御陣を斬り裂き、エハンの喉元に迫っている。
「くっ!!」
エハンはジェドの斬撃をかろうじて躱すことに成功する。だが、ジェドはさらに間合いを詰めると再び斬撃を放った。だが、エハンは今度は落ち着きを持ってジェドの斬撃を躱す。
エハンは躱したが、ジェドの斬撃の鋭さに驚きを隠せない。
「今だ!!取り囲んで殺せ!!」
ジェドが叫ぶと魔狼達は武器を持って突撃してくる。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「殺せぇぇぇぇ!!」
「やれぇぇぇぇぇぇ!!!」
恐怖を振り払うように魔狼の男達は雄叫びを上げて突っ込んでくる。エハンはその様子をフンと鼻で嗤うと先程、男を貫いたように爪を伸ばし、魔狼の男の一人を貫いた。
「が…ぁ」
雄叫びを開けていた男の口にエハンの伸びた爪が入り込むと貫かれた男はビクビクを痙攣を始める。爪が元のながさに戻り、抜き去られると男は前のめりに倒れ込んだ。
その凄惨な様子に魔狼達は明らかに狼狽えていた。
「バカが…皆殺しだ!!」
エハンはそう叫ぶと魔狼への蹂躙を始める。エハンは手を魔力で覆い、強化すると魔狼の一人の男の腹を引き裂いた。腹を引き裂かれた男は臓物がこぼれだし、膝をつく。
「ひぃぁぁぁぁぁぁ…俺、俺の…」
臓物をこぼれさせた男は必死に臓物を掻き集めている。エハンは虫を潰すようにその男の頭を上から叩きつぶす。ぐしゃりという音とともに男の命は終わりを告げた。
エハンはガタガタと震える魔狼の男を容赦なく殴りつけると、殴られた男は顔面を打ち砕かれ、肉片を撒き散らしながら木にぶつかる。
「ひるむな!!かかれ!!」
ギリアムが叫ぶと魔狼達は突っ込んでいく。だが、結果は変わらない。エハンは容赦なく魔狼達を肉片に変えていく。腕を引きちぎられ、腹を割かれ、頭を砕かれ、魔狼達は今までの悪行を凝縮したような報いを受けている。
ジェドとすれば、魔狼達に一切同情などしない。彼らは敵であり容赦するような対象ではないのだ。
「シアさん!!」
そこにシェイラ達が到着するとシアに声をかける。すでに魔狼達が虐殺されている場面を見ておりショックを隠せていないようだ。
「みなさん、敵はあの魔族です」
シアの言葉に応援に来た三人がエハンを睨みつける。
「アグルス、行くぞ!!」
「ああ」
ヴェインとアグルスが武器を構えるとエハンに向けて襲いかかろうとする。だが、シアはそれを止める。
「待ってください、二人とも」
シアの言葉にヴェインとアグルスは止まる。
「なんだい?」
「あの魔族は爪を高速で伸ばして攻撃します。指先の動きに十分注意してください」
シアからもたらされた情報に二人は頷く。
ジェドはヴェイン達が参戦したのを確認すると行動を開始する。魔狼の面々が蹂躙される時にまったく動こうとしなかった理由はシアの安全の為である。ジェドがエハンと戦っているときに魔狼の連中がシアを攻撃する可能性があると考えていたために動かなかったのだ。
シアの実力から考えれば魔狼ごときにやられるはずはないのだが、それでも念には念を入れておく必要があったのだ。
そして、ここでヴェインとアグレオが参戦し、シェイラもシアと共にいる。形勢はこちらに傾いていることをジェドは感じ取っていた。
(いける!!)
ジェドは魔狼を蹂躙するエハンに向かって動いた。




