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野茨の血族  作者: 髙津 央
第三章.ドブ

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67.嫉妬☆

 挿絵(By みてみん)


 日之本帝国では、ありふれた雰囲気の若者たちだ。

 ひねた青年は、中二病にありがちな()めた目と、反抗期にありがちな周りの全てを敵と看做(みな)し、つっかかる敵意。

 赤い大蛇の彼女は、恋人への独占欲と、恋人が関心を寄せたものへの嫉妬。


 政晶(まさあき)のクラスにも何人もいる。

 前者は、居ないクラスを探す方が難しいだろう。

 後者も、学校で一度見たことがある。


 いつだったかの放課後、校舎一階の階段下スペースで、何人かの女子が()めていた。

 女子の一人が、学年で人気のある男子に告白したらしい。

 成否は不明だったが、抜け駆けを(とが)められているらしかった。


 グループのリーダー格が、「みんなの勝原(かつばら)君に手ぇ出してんじゃないよ。糞ビッチが」と凄んだ声に足が震えた。

 偶然通り掛かっただけの政晶は、彼女らに気付かれないよう、そっと校舎を出た。


 階段の陰になって姿は見えなかったが、あの子たちはきっと、クロエを睨みつけていた赤い大蛇の彼女と、同じ顔をしていたに違いない。


 ……えーっと……ここって、あぁ言う恐いもん、溜めてあんねんな?


 〈そうだ。心を強く持って臨むのだぞ〉


 ……うん、まぁ、そら相当、気合い要るやろなぁとは(おも)とうけど、あれ、()んだりとかするん? それとも、触っても別にどないもない? こう……物理で。


 〈何の為の鎧だと思っておるのだ?〉


 ……普通の人には視えへん癖に、咬むんや……


 政晶はうんざりしながら、鍵の番人の後について、建物に入った。

 東に建つ宿泊棟は南北に細長く、広場に面した廊下に沿って食堂と小部屋が並んでいる。


 「慈悲の谷様は持ち場にお戻りで、(あざむ)く道様は、巡回なさっておられます」

 政晶に「宿舎の管理者」と名乗った初老の男は、鍵の番人とは顔見知りらしい。再会の挨拶を交わし、導師達の所在を報告する。

 鍵の番人は、それに素っ気なく応え、すぐに退がらせた。


 宿と同じ部屋割で、〈雪〉〈雪丸〉の従兄妹(いとこ)が北の端、政晶たちはその手前の部屋に落ち着いた。


 〈斧〉が魔法で灯を(とも)す。

 荷物を降ろすと、窓の外はすっかり闇に包まれていた。

 麓のような虫の音はなく、風の呻りだけが聞こえる。

 月に照らされた灰色の雲が、西から東に流れて行った。


 食堂は、水瓶と調理台と、四人掛けの食卓が七つあるだけの簡素なものだった。他の若者達は既に食べ始めている。

 政晶は、ドブ水の青年と赤い大蛇の娘を見た。

 特に変わった所はなく、普通にスープを飲み、普通に堅パンを齧っている。


 ……あの人ら、そんな悪い人っぽく見えへんのになぁ。人は見かけによらんもんやねんなぁ。


 〈人前に出す表の顔と、真の顔が異なるのは、ままあることだ。人は本音と建前を使い分けるものだからな。(もっと)も、モノには限度と言うものもあるが……〉


 ……あの人ら、限界超えてまいそうなん?


 〈さあな? ここでひとまず、現在抱えておる穢れは祓われる。しばらくは超えぬだろうが、本人次第だな〉

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地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』

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野茨の環シリーズ 設定資料
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