五島忍と八尾慶吾のクリスマス。
マリナちゃんからドレスをもらったその後です。
クリスマス。
私は初めてできた彼氏と初めて過ごすクリスマス。
友達のマリナからもらったサンタドレスを彼に頼まれて着た。
「あの、もう………良い?」
サンタドレスを着たもののすでに恥ずかしくてぬいで良いかを聞く。
「どうしてですか?とっても可愛いですよ!」
爽やかな笑顔を向けられた。
「は、恥ずかしいから。」
「恥ずかしがっているのも踏まえて可愛いですよ。」
私は顔に熱が集まるのが解った。
「うー、もう………許して!」
真っ赤になった私を八尾君がみつめている。
「…………」
「八尾君?」
私が首を傾げると、八尾君はさっきよりも爽やかな笑顔を作った。
なんだか嘘臭い笑顔だった。
「仕方ないですね。忍さんがそんなに言うなら………」
なぜ笑顔でそれを言う?
私は取り合えず着替えをするために言った。
「や、八尾君が居たら着替えられないから部屋を出ててほしいです。」
「嫌です。」
「…………?」
私は頭がパニックにおちいった。
八尾君は私に近づき肩をつかんだ。
「手伝ってあげます。」
怖い。
「あ、あの、」
「忍さんは僕を男だとわかってますか?」
八尾君は私の腰に右手を回し引き寄せた。
「忍さん。クリスマスプレゼントを下さい。」
「か、鞄の中に………」
「鞄の中にあるプレゼントは僕の本当に欲しいものではないです。鞄の中のプレゼントも嬉しいですが、僕が本当に欲しいのは、忍さんのすべてです。」
八尾君は艶やかに笑うと私にキスをした。
もう、どうしたらいいのか解らない。
クリスマスの事は思い出したくない。
それでも八尾くんの事を好きなんだから、惚れた弱味とは恐ろしいと思わずにはいられないのだった。