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そんな魔法ならいらない  作者: door
Chapter 2 : PAST, PRESENT, and FUTURE
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#24 ヴィジョンズ①

時間にすれば、“僅か”。


だが、断片的な景色が次々と映り込み、オッドアイの少女の頭の中をフラッシュバックするように流れ込んでくる“ソレ”は、


目の前のひとりの青年の、『過去ものがたり』であった。


その景色を、単純に繋ぎ合わせるだけでは、決して“正解”にも“理解”にも辿り着く事はないだろう。


それでも。


アルマがその“赤”の瞳で“”たのは、


積み重ねた日々、想い、その“全てが”、思いもよらぬタイミングで、いとも“簡単”に“壊れて”しまう、


この“世界”の不条理なまでの“残酷さ”だった。


「・・・・・・」


だからこそ、思考が、揺らぐ。


その“魔法ちから”が在るからこそ、少女の心の内は、知らない方がよかったとさえ思える程に、複雑な感情がゆっくりと侵食していく。


そんなアルマの様子に気がついたのか、ルームズ=アルシャロックは軽妙な口調で言葉を投げる。


「・・・どうしたんだい?そんな“浮かない”表情を見せて?・・・その“瞳”で“ナニカ”を“”たのかな?」


両手を広げ、近づいてくるルームズ=アルシャロックに対し、すぐ側で倒れる少年の鮮血を被った“青”の瞳の視界をクリアにする為に、その手で自身の顔を拭うアルマ。


ゆっくりと。言葉を、絞り出す。


「“それでも”・・・知ったとしても、だからと言って今のあなたを“理解”することは出来ないです・・・ナイトを、私の“友達”を傷つけたんだから・・・」


繋ぎ合わせた断片的な“景色”と、『現在いま』の景色とを照らし合わせて“”て、


アルマはそれでも、“強い意志”を覚悟して、その言葉を絞りだした。


決して肯定は出来ない、だが、どうしても全てを否定出来る程、簡単に胸の内で噛み砕くことなど出来なくて・・・・・



「あーあーあー、えっとさ、僕の『過去』の、“ナニ”を“どれだけた”かは知らないけど・・・アルマちゃん、“理解”しようとしてる事自体が、そもそも“不正解”だから、ね?」



「・・・不正解?」



まるで、それはアルマの複雑に揺れ動く心情を見透かしたように、


“飄々”と答えるルームズ=アルシャロックのその言葉に、アルマは困惑を感情のままに言葉に示す。


ルームズ=アルシャロックは、軽妙で気味の悪い笑顔を作りながら、“薄っぺら”な調子で言葉を続ける。


「君が僕を“どんな風”に見定めたかは分からないけどさ・・・こういう状況で、君の“敵”の立場の人間が、実は悲劇の『過去』を持っていて、“同情”する心が芽生えて、闘うにも複雑な気持ちで、」


まるで、舞台俳優が“長台詞”を謳う様に、“重さ”の感じられないリズムで言葉を紡ぐ、ルームズ=アルシャロック。


そして


「・・・“みたい”なさ、そんなどこにでもありそうな“テンプレート”な物語の展開はね、僕には“必要ない”んだよ?」


「・・・一体、どういう・・・」



「言っただろ?僕はね、“全部”が欲しいんだ・・・“全部”だよ?」



ピキリッ



空気が、“変わる”、音がした。



アルマの瞳が捉えたルームズ=アルシャロックの表情から、作り笑顔も、感情も、その一切が『ゼロ』になる。



「『過去』も『現在いま』も『未来』も・・・・・“きっかけ”が何だとか、“特別な理由”が在るだとか、そんな“誰か”に僕の“存在意義”を“決められる”物語なんて・・・“もう”いらないんだ。世界は、“僕だけ”が“唯一”で在ればいい、」



ゆっくりと歩み寄るルームズ=アルシャロック、そして、アルマのすぐ側で立ち止まると、



「だから、君の“魔法”も僕の“モノ”にするのさ。その“魔法ちから”で『過去』も『未来』も“全部”を『現在いま』手に入れる、」



その“手”がアルマの両頬に添えられる、熱のない“気味悪さ”が、その手を伝ってアルマの中へと侵食していく、



「この世界の“全て”を僕は“盗んで”、誰もが僕だけを“記憶”する世界、僕だけが“唯一無二”の世界を作るのさ!アハハハハハハ!!!!!!」



アルマは“理解した”、


目の前の人間は、たとえどれだけ“た”としても、決して“理解できない”という事を、


作られた物語の登場人物などではない、だから筋書きなんてない、


心を少しでも寄り添う事も、この理不尽で“不可思議”な状況を納得させ、“正当化”させる理由が“ない”事を、


そんな当たり前でありきたりな、この世界の“事実”こそが、


彼女の目の前に広がる、“唯一の現実”に在るという事を。



アルマの全身から力が抜け落ちていく、自身の両頬に触れたその手を“否定”することさえ“もうしない”、



“全て”を諦めて、閉ざされる、『オッドアイ』・・・・・・



ガシッ



それは、誰しもが“想像しえなかった”景色。



鈍く軋む“音”、“掴まれる音”。



「はッ、ありー」



ゴッッッッッガンンンンンンンンン!!!!!!



自身の左腕を、突然、視界の外から伸び、掴んできたその“左手”に意識を向け、視線を左へと傾けた瞬間、


ルームズ=アルシャロックの左頬に伝わる、重い衝撃と痛み。


そして、勢いそのままに自身の肢体が右方へと数メートル近く吹き飛ばされ、低空で宙を舞うルームズ=アルシャロックの見える景色は、無作為に右往左往と回転する。


混乱する思考、だが、吹き飛ばされ倒されているという“現実”と、この“現実”を引き起こした、視線の先にいる“正体”だけは、すぐに“理解”していた。


倒された体を起こし、視線を向けるルームズ=アルシャロック。


驚きと混乱により感情が定まらず呆然とするアルマのすぐ側に、殴り飛ばした拳を突き出したまま立ちすくむ、全身傷だらけで立っているのもままならないような、


黒髪の少年の姿が、そこには在った。


「ナイー」


「ーッ!!ありえないだろうッッッッ!!!!!!?」


零れ出すアルマの言葉を掻き消す、ルームズ=アルシャロックの咆哮、そして、瞬間、その“左腕”が“変容”する、


ザッッッッッッッ!!!!!!!!!


目の前の、到底理解できない、その景色を“否定”するように。


空気の刃を一閃、躱しようもない程に満身創痍の黒髪の少年へと放つ、ルームズ=アルシャロック。


距離、速さ、規模。条件反射で放たれた“魔法ちから”とはいえ、避けようもない決殺の一撃が、少年の元へととど



ザッッッ!!!キィィィィンンンンンンン!!!!!!!



ー“かない”。少年が突き出した“右手”に触れた瞬間、



その“魔法ちから”は、“消失”する、



まるで、その“存在”を、『否定』されたかのように。



アルマの瞳に舞い戻る“力”、ルームズ=アルシャロックの瞳に映る“力”。


両極端な“感情”を抱かせたのは、當真が起こした“不可思議”な景色だった。


「・・・なんだ、今のは?何が、起きた・・・?」


ルームズ=アルシャロックの感情が言葉に成った瞬間、當真は片膝をつき、そして、口の中に溜まった血の塊を苦しそうに吐き捨てる。


「くッ、は・・・・・」


「ナイト!!?」


叫び、側に駆け寄るアルマ。今にも再び倒れそうな程、憔悴している當真。


その景色を眺め、ルームズ=アルシャロックは“無自覚”に、“安堵”していた。


(“見間違い”、だったのか?・・・少なからず僕にもダメージが在った分、“再現”が狂ったかな、)


ルームズ=アルシャロックは思考を落ち着かせると同時に、プラプラと両腕を振りながら、一呼吸の“間”を自身に与える。


その束の“間”、駆け寄ったアルマは自身の右腕の痛みなど気にも留めず、必死に、たったひとつの感情だけを想いながら、當真に声を届ける。


「ナイト、ナイト、もういいですから、これ以上は本当に・・・」


動かせる左腕を當真へと必死に伸ばすアルマ、だが、その声が届いた証か、當真は“再び”ゆっくりと立ち上がる。


ボロボロの當真が見据え、その目に捉える景色は、ルームズ=アルシャロック“ただひとり”。


アルマは理解する、目の前の少年は“きっと止まらない”。言葉だけじゃきっと、少年を納得させる理由には“届かない”事を。


だからこそ、その言葉に“明確な理由”を添える為に、オッドアイの少女は『もう一度』、その“青”の瞳の“魔法ちから”を行使する。



ギィィィィィィンンンンンン!!!!!!



“左”の瞳を閉じ、少女の“右”の“青”の瞳が“”るのは、少年の見据える“ひとり”の『未来』。


映り込む景色、少女の頭の中へと流れだす『未来』の“結末エンディング”、


そこには月光に照らされ、悠然と両腕を広げ高笑いをする『大怪盗』の姿と、対比するように地面に倒れ、“文字通り”、“動かなくなった”少年の姿・・・想像通りの“最悪”の『未来けつまつ』しか“”えなかった。


現在いま』に、意識が戻る。アルマは、“確信”に届いた、その意志を少年に伝える。


「ナイト・・・ルームズの『未来』を“”たの、だから“お願い”・・・逃げて。私は大丈夫だから・・・“友達”を、“大切な人”を失うのは、もう嫌だから・・・お願い・・・」


アルマの瞳から零れる雫の波は、もう止められない。少女は、その左手で、今ある力の全てを込めて、黒髪の少年の左腕を掴み、“願い”を謳う。


「・・・だ、そうだよ?その“魔法ちから”の凄さは、僕も君も身をもって知ってるだろう?だからもうさ、潔くこの“物語”から退場したらどうだい?どうあってもさ、『未来げんじつ』は変わらないんだからさ?」


アルマの言葉を、その景色を眺めながら、ルームズ=アルシャロックは軽妙な調子で言葉を謳う、


その“両腕”に“淡い白光”を纏わせながら。


「でもね、君のここまでの“無駄”な“頑張り”に最低限の敬意は表してさ、君がこのまま“物語”からの退場を選択するなら、僕もこれ以上は手を出さないからさ?優しいだろ、僕?アハハ」


ルームズ=アルシャロックの言葉が、飄々と響き渡る。


少年の、不揃いなリズムの呼吸音が、徐々に、月光に照らされた夜闇の空間の中へと消えていく。


そして。


少年は、少女の左手を、そっと、その“右手”を添えて離させる。


俯いていたその顔を上げ、當真はゆっくりと、言葉を紡ぐ。眼前に立ち塞がる『大怪盗』に向けて。


「『未来げんじつ』は変わらない・・・んじゃなくて、お前はただ、自分が“変わる”ことから逃げてるだけだろ、ルームズ?」


「・・・はぁ?」


ルームズ=アルシャロックの表情が、怪訝に、歪む。


その“碧”の瞳に宿る“敵意”に、當真はまっすぐと視線を合わせ、言葉を続ける。


「アルマに・・・言ってた、世界の“全部”が欲しいとか、自分だけが“唯一無二”になりたいだとか・・・くだらねえ、どこまでも“自分の都合の良い”ように周り“だけ”を“変えよう”としてる、そんなの、ただのガキの我儘と一緒じゃねえか?」


「・・・何を、知ったように、僕に説教してるんだい?何様だよ、君?」


ルームズ=アルシャロックが両の拳をギリギリと握りしめる音が、響きわたる。だが、當真の言葉は止まらない。


「何様、でもねえよ・・・“でも”、俺だけじゃねえ。それはお前もだよ、ルームズ?」


「・・・・・・」


「この世界に特別な人間なんてひとりもいねえし、誰だって物語の主人公なんだよ、自分の物語のな・・・だから、その結末は自分で選んで、自分でひとつずつ『未来』を変えていって、正解も不正解も、全部積み重ねた『現在いま』の自分を“見”て、必死に紡いでいくんだよ。誰かが勝手に決めていいもんじゃねえんだよ、」


遠のく意識の中で、聞こえていたルームズ=アルシャロックの言葉を思い返す當真。


その『過去』を知っているわけではない。


それでも。目の前の『大怪盗』の『現在いま』の言葉を、行動を、それを“肯定”した『未来』など、決して受け入れるわけにはいかない、


そんな“薄っぺらな”、“独りよがり”の“願い”の為に、大切な“友達”を悲しませる“理由”が在っていいはずがないのだから。


「ちゃんと自分の事を見ろよ、誰かの記憶に残りたいんなら、『未来げんじつ』を変えてえんなら、まずは他人ひとの“魔法ちから”を盗んで使って、自分にとって都合の良い世界だけを作りたいなんていう、そのくだらねえ自分てめえ自身を“変えて”こい!!」


「・・・・うるさいよ・・・“何も知らない”くせに・・・僕がどれだけ積み重ねてきたか・・・自分を変えたって、何ひとつも“変わらない現実”を、“見た”こともないくせに・・・偉そうに指図してんじゃねえよ、」



ガガガガガガガ!!!!!!バギギギギギギギリリリリリリ!!!!!!!!



夥しい紫の雷光を“右”に、風切り音を越えた不快な切り裂く音を奏でる無数の風の刃を“左”に。



當真の言葉に、フラッシュバックする自身の『過去』の残像の景色を、全て“否定”し掻き消すように、


明確な“敵意”と“殺意”を持って、その手に“魔法ちから”を“再現”するルームズ=アルシャロック。


「所詮!!君は僕の物語の“端役モブ”なんだよ!!どんなに息巻いたって!!『未来ぜつぼう』は変わらないって事を!!教えてあげるよ!!!!!!!」


その“変容”した両手を目の前で重ねるルームズ=アルシャロック、“右”の雷光と“左”の風の刃が、ひとつに重なり、“不可思議”で膨大で、躱し切れない程の圧倒的質量、そして、触れる全てを壊し“否定”するような、まさに“不自然の塊”を、その重ねた手に纏う。



「“部分再現”・・・『融合フュージョン』、“紫電ボルテック・風刃ガスト”」



ゴォォォォォォォバギギギギギギギリリリリリッッッッッズザザザザザザァァァァァァァッッッッッ



猛然と鳴り響く不可解な破壊の轟音を纏った“不自然”の“魔法ちから”の集合体。


ルームズ=アルシャロックの瞳、両腕が、當真へと真っ直ぐに向けられる、その“照準”が定まるまでの、僅かな“空白”、


アルマは、“”えた『未来けしき』へと近づく足音に“抗う”ように、當真に向かって叫ぶ、“願う”。


「ナイト、急いで離れてっ、このままじゃー」



コツン。



アルマの“願い”、声、その“続き”を。當真は、優しくその右手でアルマの頭を打ち、止める。


「勝手に俺の『未来』を決めてんじゃねえよ?“友達を助ける”のが、俺の『現在いま』の“選択”だ、そこはもう、絶対に迷わねえからー」


「ーそんなこと言っても!!!!あんな“魔法ちから”どうやったって・・・・私、“”たんだからっ・・・このままじゃ、ナイトが、しんじゃう・・・ううう、お願いだから・・・」


もう、直接その顔を見上げる事も出来ない、俯き、嘆き、地面へと零れ落ちる涙と、虚しく響く、少女の咆哮、



「アルマ!!!“見ろ”ッッッ!!!ちゃんと!!!!!!」



流れ出す涙も、吐き出す感情も、少女を纏う“負の全て”を吹き飛ばすように、當真は叫ぶ。



少女の“青”と“赤”の瞳が、ゆっくりと當真へと向けられる。



「何が“”えたとしても関係ねえ!!お前の“魔法ちから”がどんなに凄い“魔法ちから”だったとしても、“決める”のは俺だし、お前自身だろ!!“魔法ちから”が見せた景色だけを“見”てんじゃねえ!!!!!!」



「ナイ、ト・・・!!」



拳を振り払う當真。その右手を強く握り締める。



立ち向かう『未来ぜつぼう』を、まっすぐとその目に見据えながら。



「大切な“友達”も助けられないような!!自分一人が助かるような!!そんな見過ごすような『未来』しか見えないんなら!!俺は!!そんな“魔法”ならいらない!!!!!!」



當真の揺るがない“想い”。たとえ、その先の『未来』が決まっていても、當真は“迷わない”。



「アルマ!!その“目”でちゃんと見ろ!!『過去』でも『未来』でもねえ!!自分がどうしたいか、自分がどう在りたいのか!!『現在いま』の自分をちゃんと見て!!決めろっ!!!!!!!」



“だからこそ”。その“声”、“言葉”、“想い”、その目に見える少年の姿は、少女の心に“迷わず”まっすぐと届く。



「ナイト!!!!“変え(勝っ)”て!!!!『未来』に!!!!!!」



「おお!!任せろ!!!!!!」



少年は走り出す。少女の想いを、自分の“選択”を、全てをその拳に握りしめて。



その目に映る『未来ぜつぼう』を『否定す(変え)る』為に。



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