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扉からでる

 わたしたちは猿の穴がある部屋を出て、通路を先へ進んだ。

 引き返すという選択もあったけど、アカツキの話を聞いてその考えは捨てた。

 猿たちと和解し、部屋の離れ小島みたいな場所にたどり着いた時、入ってきたのとは反対側のドアをアカツキが指さした。

 扉の周辺だけ地面が少し残っていて、よく見るとそこに棒のような何かが落ちている。


「ここにたどり着いたときに見つけたんだ」


 アカツキはそう言った。

 扉までたどり着き、実際に手にして確認してみる。


「ロクサイの、角?」


 それは鹿の頭に生えていた左側の角だった。

 辺りを見渡しても、もう片側は見つからない。


「左の角だけ脱落したのかな」

「そういうことって、あるのか?」


 アカツキが難しそうな顔で訊く。


「だいたい同じ時期に脱落するけど、片側だけしばらく残ることもあるみたいですよ」

「じゃあ、別に異常事態ってわけでもないのか」

「そうですね、必ずしも戦闘で落ちたとは限りませんし」


 ためしに猿に話を聞いてみたけど無視された。

 状況からすると、ミカヅキとロクサイはこのドアの先に居るんだろうとは思う。

 まあ、ここで時間を使うより、とっとと先に進んだ方がいい。

 そう考えてわたしとアカツキは部屋を出たのだった。


「そういえば、さっきのアレはなんなんだ?」


 二人並んで歩きながら、アカツキが思い出したように言った。


「アレってどのアレですか?」

「猿たちと交渉してただろ。最後にどうして猿たちはお前の提案を受け入れたんだ」


 ああ、あれか。

 ちょっと説明しづらいんだけど。


「お得な提案にきこえるように話したんです」

「でもさ。最初も次の話も、内容はいっしょだろ」

「話す順番を変えるだけで、イメージも変わるんですよ」


 さすがに朝三暮四といっても伝わらないだろう。

 むしろ、あれって本当に有効なんだってこっちも驚いた。

 違和感。

 なにかおかしい。

 それって何が?


「どうした?」

「なにか、変な感じがしませんか?」


 わたしが言うと、アカツキが立ち止まり辺りを素速く周囲を見回した。


「特に何も感じないけど」


 いや、そういうことじゃなくて。

 だめだ。

 上手く伝えられそうにない。

 というか、自分でもよくわかってないのか。

 何かがおかしい、という違和感。

 あり得ないことが起こっている。

 そんな気がする。


「問題ないんだったら、早く進んだ方がいいんじゃないか?」


 確かにその通りだ。

 わたしとアカツキはふたたび歩き始めた。

 とはいえ、やっぱり朝三暮四みたいな作戦がほんとうに上手くいくなんて出来すぎてる。

 まるでつくりもののお話みたいだ。

 わたしはそう思った。

 そして、ふっと顔を上げると、目の前には本があった。

 本はとても大きい。

 扉サイズの本。


「ビックリした」

「クルッ」


 肩の上で細長栗鼠のイナリが心配そうな声で鳴く。


「別に描写が細かいとかそういう話じゃないんだけど、この本。凄くリアルで、ほんとうに起こったことみたいだ」


 しかも、お話の中にわたしたちが出てくるのだ。

 これは何かの魔法で出来た本で、読む人によって内容が変わるのかも。


「そうだ、みんなはどうしてるの?」


 思わずつぶやいて振り返ると、アカツキもミカヅキも黙々と本を読んでいる。

 わたしは立ち上がって、ミカヅキの後ろから本の中身を覗き込んだ。

 魔法の本だからわたしには読めないとかそんなことはなく、普通に読める文章が書かれている。

 それは、こんなお話だった。

気がつけばこれで九十九話目です。

百話目は本編とは別の番外篇的な話にするかも。

まだ何も考えてないですけど。

こういうのがいいとかもしあったらこっそりおしえてください。

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