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お出かけ前の心配性のお姉さん

「ちょっと荷物多かったかな」


 ミカヅキが背負い袋を装備したわたしの周りをぐるぐる回りながら言った。


「水とか食料が多いんじゃないでしょうか」

「でも、迷うといけないし」

「そんなに複雑な迷宮なんですか」


 だとしたら納得だけど、普段のミカヅキ達はちゃんとその日のうちに帰ってきている。


「用心しておくに越したことはないでしょ」


 ミカヅキはそう言って、背負い袋を引っ張ったり持ち上げたりしている。

 たぶん動きやすさを確かめてるんだろう。

 出かける段になったら妙に世話焼きで、お使いに出る子供を心配するお母さんみたいだ。

 いや、さすがにお母さんは言い過ぎかな。

 妹を心配する姉とか、そんな感じかもしれない。

 実際見た目でいえばこっちは十歳の子供、向こうは十五歳の少女なわけで、もしかしたらそれでつい過保護になっちゃったのかも。


「ムイッ」


 うだうだしているミカヅキを押しのけて、ロクサイが鼻先でわたしの背負い袋を押した。


「あんたは楽観的すぎるの」

「ムイッ」


 口論を始めたミカヅキとロクサイを横目に、軽く身体を動かして様子を見る。

 まあ、これくらいの荷物だったら、動きに制限はなさそうだ。

 せっかく心配してくれてるみたいだから、今回はこれで行こう。


「剣は振れそうですから、大丈夫だと思います」

「まあ邪魔だと思ったら、荷物は途中で捨てればいいからね」


 やっと納得したのか軽く頷いてから、ミカヅキが部屋を出る。

 その後ろをロクサイとわたしが続いた。

 階段を上って二階に上がり、暗く長い廊下を進むと、石造りのらせん階段に出た。

 ここはたそがれの魔女の部屋に繋がる塔の階段部分だ。

 ミカヅキが階段を降りていくので、ロクサイと一緒にその後を追う。

 凄く暗いけど、どちらも気にした様子はない。

 もしかしたら暗闇でも目が見える魔法とかがあるのかもしれない。

 わたしはいつも通り魔力を指先に流し込むと、ピンと弾いて光の玉を作り出した。

 これでなんとか足下が見える。


「あんた、今、何やったの」


 ミカヅキが足を止めて、真剣な顔でこちらの方を見ていた。


「えっと、これは師匠におそわったやつで、簡単な照明を作れるんです」

「いつのまに呪文を唱えてたの? 全然気付かなかった」

「あー、それはですね」


 わたしが呪文を使ってないことをどう説明しようかと悩んでいると、ミカヅキはふいっと前を向いた。


「まあ、別にいいけど。魔術は簡単にひとに話すもんじゃないし」

「ムイッ」


 ロクサイが早く行こうみたいな感じで鳴いた。

 そのまま階段を降りていくと木の扉があって、そこを抜けると広い部屋に出る。

 普段は倉庫に使われているのか、部屋の隅には木の箱がいくつも積み上げられている。

 部屋の奥には両開きの扉があって、その前でアカツキがわたしたちを待っていた。


「なんか変な感じだよな」


 唐突にアカツキが言う。


「そうかもね」

「何が変なんですか?」

「いつも一人で入ってたからな。待ち合わせなんてしたこともないし」


 なるほど、そういうことか。


「ここもすぐに通り過ぎるだけの場所だしね」

「あの扉の先が迷宮なんですか?」


 ぱっと見はごく普通の木製の扉だ。


「たぶんね」

「たぶん?」

「どこからどこまでが迷宮とか、特に決まってないみたいだからな」


 そう言いながら、アカツキが部屋の奥にある扉を押し開けた。

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