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たそがれの魔女からの三つの課題

 わたしはあらためて背を伸ばして話を聞く体勢をとる。

 晴れてわたしの師匠になったたそがれの魔女はちょっと考えるように間を取った。


「君がどの程度魔法が使えるのかは知らないが、森の王に人間の魔法を学べと言われたのだったら、基礎から教える必要がありそうだね」

「よろしくお願いします」


 魔力の操作を主体にした多少の術は使えるけど、いわゆる魔法についてはよくわからないから、いちから教えてもらった方がよさそうだ。


「それではミカヅキから本を四冊受け取りなさい。わたしが与えた魔術の教科書なのだけど、基礎的な内容なので、まずはそこに書かれた魔術を完璧に使いこなせるまで練習しなさい」

「わかりました。ちなみに本に名前はあるんでしょうか」

「特にないが、基礎の魔術に関する本を四冊と言えばミカヅキには通じるからね」


 完璧に習得っていうのはどの程度なのかは気になったけど、まずは本を読んで内容を確認してみた方がよさそうだ。


「今、他の三人の弟子には課題をひとつ与えている。教科書の魔術を習得したら、君にもその課題に取り組んでもらうよ」

「ちなみにどのような課題なんでしょうか」


 ミカヅキ達から課題の内容を聞いてもよかったけど、情報が正しく伝わっているとも限らない。

 前もって知っておいた方がいいかもしれないし、ここで本人から直接話を聞いておきたかった。


「課題というのはね、この屋敷の地下にある迷宮に入り、その最奥の間までたどり着くことだよ」

「屋敷の地下に迷宮があるんですか」


 地下室とかじゃなくて迷宮とは、ちょっと驚きだ。

 どれくらいの広さなんだろう。


「迷宮についての情報を手に入れることも含め、課題とする」

「なるほど」


 これは単に魔法の実技演習みたいなことじゃなくて、総合的な探求力みたいなものを試されてるみたいだ。


「それと、君にはひとつ別の課題を与えよう」

「わたしだけの課題ですか?」

「そのとおり」


 鳥籠の中の鸚鵡があたまを前後させながら、楽しそうな笑い声を上げた。


「君は他の三人をまとめあげて、全員で迷宮に挑みなさい。誰かひとりが先に迷宮の最奥部に到達した場合、君の課題は未達成となる。心しておくように」



 そして、たそがれの魔女に退出するように言われ、わたしは再びらせん階段を降りていく。

 結構めんどくさい課題を出されてしまったな、と思った。

 ひとつめの課題は教科書から魔術を学ぶだけだから、出来るか出来ないかの単純なはなしだ。

 ふたつめは迷宮に入るってやつだけど、これ自体は情報が足らないから判断は付かない。

 でも、目標自体は単純だ。

 みっつめの課題がやっかいだった。

 まずあの三人をまとめなくちゃならない。

 いってみれば先輩の上に立って、新入りのわたしがリーダーシップをとらなくちゃいけないってことだ。

 今日会った印象だとなかなかフリーダムな感じの人もいたし、全員に協調性は期待できそうもない。

 しかも、他の三人が先に課題を達成しちゃ駄目っていうのも厳しい。

 わたしがひとつめの課題に取り組んでいる間に、誰かが迷宮を攻略してしまうかもしれない。

 基礎の魔法はなるべく早く習得しなくちゃいけないし、なんだったら他の三人に迷宮攻略を一時中断してもらう必要があるかもしれない。


「うーん、どうしたもんだろうね」

「クルッ」


 肩の上のイナリががんばってって感じに鳴いて応援してくれた。


「そうだね。まずは情報収集かな」


 魔法の教科書の難易度を調べて、迷宮がどんなところでどのくらい攻略が難しいのかを訊いて、あと現在の進捗状況も確認しないといけない。


「ああ、なるほど」

「クルッ」


 こうやって状況を整理していて気付いた。

 今回わたしに求められているのはプロジェクト管理だ。

 だったら前世での知識が役に立つかもしれない。

 この世界では十歳の女の子だけど、もとはアラサーの社会人だったのだ。

 しかも、ディレクターとしてプロジェクト管理の経験もそれなりにある。

 バラバラのメンバーをまとめて課題に取り組むって点では今回の課題も同じ事だ。

 なんとなく手掛かりを掴んだ気がして、わたしはちょっとやる気がわいてきたのだった。

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