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猫の王様と旅のおもいで

「それで旅の方はどうだったのだ」


 猫の王様は段の上にある自分の席に戻りながらそう訊いてきた。


「コナユキの里の宝玉はちゃんと見つかりましたよ。メダルの効果も確認出来ましたし、見つける時にわたしの魔力で魔術を破ったから課題の方も達成したと思います」


 わたしの報告に、王様は澄まし顔で軽く頷く。


「では、全てつつがなく終えたということか」


 さすがにそこまで上手くいったわけじゃない。

 わたしはつかつかと王様の前まで進み出た。


「結果としてはそうですけど、色々大変だったんです。途中で魔物に襲われたりとか……」


 言いかけて、今現在の問題を思い出した。

 先にその話をしなくては。


「魔物といえば、あのカザリさんって魔物の騎士がマゴット家の屋敷に滞在してるんです。すごく驚いたんですけど、王様は何か知ってますか?」

「あの魔物が? それは初耳だが。そうか。まあ事情はわからなくもない」


 そう言って、猫の王様はフンと鼻を鳴らした。


「その方が旅立ってからも、あの魔物は幾度か我の前に現れたのだ。強い魔力の源を探すという使命のためだと言ってな」


 そうだった。

 あのカザリという魔物の騎士は、どうやら神様のメダルが発する魔力を感知してあらわれたらしいのだ。

 でも、神様のメダルがあることを知られると不味いから、今は魔力を遮断する小袋に入れて隠している。

 安心して袋から出せるのは、結界で守られたこの御所の中だけだ。

 そもそもマゴット領から外に出たのは、なるべくメダルからカザリさんを遠ざける為でもあったんだけど、まさか旅から帰ってきてもまだ居残ってるとは思わなかった。


「もしかして、カザリさんはわたしが神様のメダルを持ってるって気付いてるんでしょうか」

「いや、さすがにそれはなかろう。ただ、強い魔力を持つこの森の後継者として興味を持ったかもしれないな」

「わたし、王様になったりしませんよね」


 猫の王は何を馬鹿なって風に、ちょっと眼を細めた。


「当然だ。とはいえ、現状で他に後継者候補がいないことを知られてしまったようだからな。あの魔物にはそう見えたのだろう」

「後継者だと思われてるんだったら、人間だってことはバレてないみたいですね」

「そうだな。しばらくは精霊が取り替え子として人間たちの中で暮らしているという作り事で押し通すしかあるまい」


 まあカザリさんの滞在もそこまで長くは続かないだろうし、もうしばらくの辛抱だ。

 屋敷の中でもなるべく顔を合わせないようにしておこう。

 バウルの存在が気がかりだけど、普段は屋敷の外にいるみたいだし、思ったほど接触する機会もない。

 バウルとカザリさんがどの程度連携してるのかはわからないけど、なにか仕掛けてこない限りは基本スルーでいいんじゃないだろうか。


「そうだ。今マゴットのお屋敷にはもうひとり手形を持った魔物がいるんです」

「旅から連れ帰った黒犬の魔物のことか?」


 あっさりと言い当てられたのでちょっと驚いた。


「知ってたんですか」

「その方らが森を抜ける道に入った時点で、馬車の中にその魔物が乗っているのを雪走りたちが確認していたからな」


 行きの馬車の中では気がついたけど、帰りの時も雪走り達がわたしたちの馬車を見に来ていたらしい。


「では、何故その魔物を連れ帰ったのかも含めて、旅の話を聞かせてもらおうか」


 猫の王様はそういうと段の上に寝転んで、話を聞く体勢をとった。

 わたしがソファに座ると、良いタイミングで狒々の執事さんがお茶を淹れて持ってきてくれた。

 それからしばらくは、今回の旅の顛末を話した。

 馬車の旅の道行きについて。

 鳥や犬の魔物に襲われたこと。

 神殿騎士との出会い。

 そして、コナユキの里での出来事。


「つまり、宝玉を隠していた結界は、その方の魔力によって強引に壊したということか」

「そうです。課題の解決には魔力を使うことって条件がありましたけど、これでクリアしたことになるはずです」

「とはいえ、力尽くではないか」


 王様は呆れたような声を出した。


「精巧な魔方陣の効果を遮るには、本来高度な魔力の操作が必要になる。施錠された扉の鍵を開けるように、その魔方陣の形に対応した魔術が必要になるのが本来の形なのだ」

「あのやり方じゃ駄目でしたか?」

「まあ、美しくはないな」


 確かに言われてみれば強引だったのかもしれない。

 がっかりしてちょっと肩を落としてしまう。


「とはいえ、力尽くで魔方陣を壊すことも、本来なら出来ないことだ。その方の強い魔力を効果的に発揮した結果ではある」

「じゃあ合格ですか?」

「まあよかろう。ただ、それ程の大きな力を発揮したから、バウルとかいう魔物に眼をつけられたのかもしれぬ」


 この口ぶりでは、どうやら大成功とはいかなかったみたいだ。


「警戒されたって事ですか?」

「そもそも、バウルとやらは強い魔力を警戒する任務に就いていたのだろう? そこに桁外れに強い魔力を持つ者が現れたのだから、その動向を調べるのも当然ではないか」


 なるほど。

 だからバウルはわたしたちについて来るって言ってきかなかったのか。

みじかいけどとりあえず更新しますです。

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