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コナユキのきもち

 チドリさんと別れて自分の泊まっている部屋に戻ってきた。

 ドアを開けて部屋に入ったところで、肩の上でマフラー状態で丸くなっていたイナリが不意に顔を上げる。


「クルッ」


 その視線はベッドの方に向けられていて、かかっている毛布の真ん中がこんもりと盛り上がっていた。

 今までに何度かあったパターンなので正体はわかる。

 近寄っても動かないので毛布をめくってみると、小さな白い子狐が丸くなって眠っていた。


「コナユキ、不用心だよ?」


 わたしの声にもまったく起きる気配もなく、小さくくしゅくしゅ言いながら頬をシーツに擦りつけている。

 ずっと人間に変化しているとなにやらストレスが溜まるとかで、コナユキはこうしてたまに元の姿にもどっている。

 そういう時はたいていわたしの所にやってきて、一緒に寝たりしているのだ。

 もしかしたら、誰かに見つかったときにフォローしてくれるとか思っているのかもしれない。


「コナユキ?」

「クルッ」


 イナリがわたしの肩からダイブして、コナユキのお腹の上に飛び乗った。


「はうっ」


 コナユキはビクッっと震えて頭を上げて周りを見ている。


「起きた?」

「はふぅ。おはようだよ」

「そんな格好で寝て。入ってきたのがわたしじゃなかったらどうするの」

「クルッ」

「うう、ごめんなさい」


 わたしは上着を脱いでベッドに腰掛けると、コナユキの子狐の頭を撫でた。

 眼を細めたコナユキが小さくクシャミをしたので、横に並んで寝っ転がってから毛布を掛けてやった。


「今日はありがとうね、コナユキ」

「ありがとうって、何が?」


 丸まっていたコナユキが身体を伸ばして、毛布からぴょこんと頭を出した。

 その横でイナリも同じように頭を出している。


「バウルとかいう犬の魔物と戦った時のことだよ。良いタイミングで陽動してくれたでしょ」

「あの時は、必死だったから」

「でも、ちゃんと冷静に周りを見て動けてたよ」


 わたしがそう言うと、コナユキはちょっと恥ずかしそうに顔を毛布の中に隠した。


「えへへ。照れるね」

「やっぱり、コナユキは長に向いてるかもね」

「うーん、そんなことないと思うけど」


 そういうコナユキは自信なさげに見えた。

 だから素直に長になれずに、ひとりで里を出てきたんだろう。

 でも、単に逃げたわけじゃないはずだ。


「コナユキ」

「なに?」

「長になれるぐらい、充分にコナユキは強いよ」

「え?」


 わたしはコナユキの眼を見ながら言う。


「集落の中で一番魔力も強いし」

「それは、わたしがお母様の娘で、他に候補が誰もいなかっただけで……」

「みんながそう言ったの?」


 毛布の中でコナユキが首を振る気配があった。


「コナユキは宝玉を探すために旅に出たんでしょ」

「う、うん」

「わたしは、それは勇気だと思う」

「勇気?」


 意外な言葉を聞いたって感じで、コナユキが毛布から顔を出した。


「ひとりで旅に出たのは、今の状況を変えたかったからだよね。その一歩を踏み出せるのは、わたしは勇気だと思う」

「カナエちゃん……」


 わたしはコナユキの頭を優しく撫でる。


「コナユキは自分を強くないと思ってるのかもしれないけど、こうして今ここにいることが、コナユキに勇気があって充分に強い証拠だと思う」

「そう、かな?」

「そうだよ」

「クルッ」


 イナリもそうだよって感じで鳴いて、コナユキの鼻の辺りをふんふんしている。


「だから、胸を張って里に帰ろう。その時はわたしがきっと宝玉を見つけてあげるから」

「ほんと? ほんとに見つけてくれる?」

「もちろん」


 これは神様のメダルの力を使ったから言えるのかもしれない。

 でも、もしその願いが上手く叶ってなかったとしても、わたしはコナユキのために宝玉を見つけてあげようと心に決めていたのだった。

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