暗黒水脈
一方的になると思われた戦いは、こう着状態に陥った。
上から下を支配する体制は終わり、下が上を支える体勢になっていたから、各地の精霊信仰を覚えている層が、ダグーのドッペルゲンガーたちと抗戦をした。
ジニーの翼竜たちが各地へ飛んだのも影響大だった。
元女王陛下の威光は衰えておらずに、迷信深い田舎は特に協力的だった。
各地へはクーとジニーが回り、俺たちはダグーを狙うことになった。
翼竜の情報網のおかげで、ダグーの居場所が判明した。
遥か未開の北東の土地だった。
そこは、闇の精霊が封印された火山だ。
俺たちは翼竜に乗り、火山へと向った。
だが、近づくと雷が落ちてきて、見事に墜落、俺たちは火山のふもとに降り立った。
「あちゃー、翼竜が一撃で殺されるとは」
魔女も箒から降りて、俺たちの下へ駆けつけた。
俺とオズ、二クラスとエマ、そして魔女の計五人だ。
雷となると、当然出てくるのは雷の精霊だ。
「おい、俺の息子はどいつだ?」
魔王がそこにはいた。
「僕だ」
二クラスは魔道銃を両手に遊ばせ、エマから離れていった。
「先に行っていいよ」
「そんな訳には」
「大丈夫――僕には勝つ手段があるから」
「魔王に一対一で勝てるなんて、勇者ぐらいしかできないぞ」
それは魔女もできなかったことだ。
今の二クラスの実力だと勝てる見込みは無さそうだった。
だが、根拠の無い自信を示すほどアホではない。
一対一が良いなら任せてみよう。
「じゃあ、頼むぞ」
「任せて。すぐに追いつくから」
「で、私はコイツなんですか」
エマが黄金の狐を前にした。
おそらく『命』の精霊だ。
「おう、頑張れ」
「私そんなに強くないよ」
「大丈夫、一人一殺だ」
「そんなー」
火山の中腹で黄金の狐に襲われた。野生動物だけあり、動きが速く反撃に攻撃してみたけど、『命』の精霊だけあり何度も何度も回復された。
「逃げながら戦えばいいんだよ。倒すことは考えるな」
「……うん、わかった」
俺はエマの肩を叩いた。
「嘘だよ」
「嘘なの!」
俺はエマと残り、魔女とオズが先へ向った。
エキノコックスが心配だなと思いながら、黄金の狐と対決した。
エマは鞭をしならせて、狐の尻尾を叩いたが、叩いた途端に治った。
俺は頭を手刀で叩きつけて、気絶させようとしたが無意味に終わった。
狐が足をつけるとそこの植物は成長して枯れ死んだ。
命を振りまき、命を弄ぶ、命の精霊だ。
何度も叩いたけど、まったく意味が無かった。
数分後に気付いたが、これと戦うのは無意味と判断した。
逃げるか、と判断した時に、光が一帯を支配した。
麓から爆音が響いて、森を一直線に光が薙いでいた。
見たことがあった――ディエス・イレ。
レスターの魔道銃にディエス・イレの弾丸が残っていたのだろう。
それを今――使った。
黄金の狐は光に見蕩れていた。
その隙を突いて、俺たちは走り出しながら、魔法を連射した。
そこからは追いかけっこになった。
だが、黄金の狐はそれほど攻撃力が無く、どちらも決着をつける力がなかった。
「召喚術、翼竜!」
エマは翼竜を出して、飛び上がった狐を捕獲した。
狐は暴れ回り、翼竜は慌てながら掴んでいた。
もう、逃げる一手しか考えていなかった。
とりあえず、どっかへ運べ。
それしかなかった。
「どこへ行く気だ」
悪意の固まり――シグルズがそこにはいた。
「シグルズか……」
「その名には意味は無い」
魔王軍の悪意の塊がそこにはいた。
魔女とオズの姿が無いので、悪意の塊は俺たちを狙っていたようだ。
剣の嵐だった
エマは戦闘には参加はできず、俺がやっと対抗できるぐらいだった。
はっきり言うと、俺は強くなった。
なぎ払われた剣の隙をついて、拳を顔面にあてた。
「これは、なかなかに強くなったな」
「抜かせ」
「だが、まだまだ」
シグルズは二つに分かれた。
そして、二体になった。
「うげ」
「まあまあ、ゆっくりしていけよ」




