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 ぐっ……あっ……僕の中の思春期が暴れ出ようとしている……。野宿している時に横にいるジニーの寝顔を見ていると、思春期が大きくなって出て行こうとしている。


 僕は立ち上がって、夜風で覚まそうとした。


 少し動いただけで、ジニーはパチッと両目を開けた。


「夜這いですか?」


「ち、違います」前にもこういう会話があった気がする。


「告白の返事を受ける前に、襲われるのはちょっと……。きょうはお風呂にも入っていません。綺麗な姿を見せたいのですが」


 僕は大きくなる思春期を摘まんでひねった。

 ミス! 思春期は痛みでさらに膨らみあがった。


「あのですね……」


「襲うんですか?」


「い、いえ」


「襲うときは優しくしてくださいね。最初は痛いらしいので」


 ……あああああ! 駄目だ駄目だ!


「ちょっと用を足しに」

 小便です。他の意味はありません。


「ああー、すっきりした」

 小便です。他の意味はありません。


 近くで川が流れていたので、両手を洗っていると、下流でコロネが水を飲んでいた。

 ……まあ、いいとするか。


「げっ、小便した手かよ汚いな!」

 小便です。他の意味はありません。


「これから赤龍のところへ行くのか……憂鬱だ」


 コロネはおもらしをしたのを思い出したようだ。


「まあ、追っ手はほとんど無いから旅は楽だけどな」


 あれから魔王軍の追っ手は無い、心配されるのは国王の追っ手だが、軍事活動が迫りつつあるためか、一人も遭遇しなかった。


 前までは戦争と言う渦中にいたが、今では完全な第三者となった。


 ということで、焦りが無いため、緊張感が殆どなくなっていた。


「赤龍のところへ行ったら、商業都市ノイルに行って、俺の友達連中を助け……しまった。俺たち指名手配されているんだった」


 それが問題だった。ジニーはともかく、この国に僕とコロネの安住の地はない。


「あー、戦争が起きる前に知らせたかったんだけどな」


 コロネにも心配事はあるが、僕にも心配事はあった。


 魔女のことだ。


 たまに背中の魔方陣を確認するが残っている。今まではジニーを警護していたから召喚されなかったけど、魔女の耳にジニーが失敗したのを知られたら、ほぼ確実に召喚される。


 行くのは当然良いけど、二人を置いていくことになるのが心苦しかった。


 ジニーは気付いているかも知れないけど、コロネには今考えたことを教えた。


「そうか……となると、俺たち離れ離れになる恐れがあるのか」


「ああ、だから二人が定住できる場所が決まれば安心だけど」


 指名手配されているので他国、となると簡単には決まらなかった。



 次の日も、そのまた次の日も、歩いた。


 街道の近くを通る時に、軍馬の物音が聞こえた。食料を確保に村へ行った時に聞いた話によると、ジニーとその母親が殺されたことにされていた。弟王は事実無根だと言ったけど、国王はジニーの銀色の髪を手に、


「ヴィルヘルムはヴァージニアを殺した証に、私に銀色の髪を送りつけてきた。宝石よりも価値のある髪は、ジニー以外のものではない」


 とかなんとか。

 どうにか大義名分を作り出したそうだ。


 別の村でコロネが冒険者から聞いた話によると、

「ヴィルヘルム領の銀山で働いていたんだが、上の連中の話によると、国王の本当の狙いは銀山だと言っていたよ」


 色んな話の中で何故か耳に残った。前に話したとおり、銀山の利権如きで国王が動くとは思えなかった。それは今でも変わらない。


 だが、何故か旅の最初から銀山という単語が耳にした。


 そのせいかもしれない。


 僕たちが赤龍の洞窟に入る前に、一度だけ街道に近づいた。すると、万単位の軍が動いており、僕とコロネにとっては初めて見る大規模な軍だった。

「はじまるのね」


 ジニーは俯きながら、止められなかった自分を恥じているようだ。やはり元お姫様だ。王族の責任として、国土が荒廃するのに我慢できないのだろう。


「関所の西か、東か。どちらになるか分かりませんが、会戦のようですね」


 会戦なら決着は簡単につく、数には個々の力も無力になる。弟王ヴィルヘルムに勝つ道はあるのだろうか。魔王と言えど、完全復活していない配下を連れていれば苦戦するのは必死だ。


 そして、その時、突然地震が起きた。


「うわっ……」


 遠くの山も森を揺れたように、大きな地鳴りがした。


「びっくりした。赤龍の唸り声かと思った」


 耳と尻尾を振りながら、コロネが抱きついてきた。


「びびりめ」


「うるせーや!」


 その地震がとんでもない事を起こしているとはまだ誰も知らなかった。

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