終)第60話 永遠への誓い
「そっか!それで、彼とも無事にこ・い・び・とになれて、
お父さんとも和解できたんだね!!」
「うん。」
私は今カフフェで裕子と、その後の報告をしていた。
裕子にはたくさん迷惑をかけて、たくさん助けてもらった。
今、こうやって、笑って話せているのも、彼女のおかげだ。
「うんうん。よかった!私も安心したよ。
これで、講義も身が入るってもんよ!」
「え?いつも寝てばっかりで、
身が入っているところなんか見たことないけど?」
「失礼なっ!睡眠学習ってヤツよ。
…でも、いつも通りの美緒に戻ってよかった!」
「ありがとう。」
きっと彼女には感謝してもしきれない。
いくらか、裕子と話していると、私の携帯が鳴った。
開いてみると、彼からだった。
「カフェの前まで来てるみたいだから、もう行くね。
お金は私が払っておくから!」
「おっ、悪いね。ごちそうさま。仲良くやんなよ~。」
手を振る裕子に私も手を振って、会計を済まし、外に出る。
すると、店からわずかばかり離れたところに、彼の車が止まっていた。
車の傍まで寄ると、助手席の窓から「乗って」と言われたので、
「おじゃまします」と乗る。
実は彼に会うのは久しぶりだ。
もういい加減慣れるべきではあるが、それでも緊張する。
何度会っても、彼は私にはまぶしいぐらいの人でいつもそわそわしてしまう。
「元気だった?」
「はい。元気です!」
小学校の健康観察じゃないのだから、もっと言い方があっただろうに…。
完全にテンパっているらしい。
「確かに元気そうだね。」
クスクスと笑いながら、彼は車を走らせる。
子供っぽいと思われただろうか…。
「美緒は花は好き?」
「好きです。母とガーデニングしていましたし。」
「じゃあ、今日はフラワーパークでも行ってみようか。」
フラワーパークか…。
最近は花を見ることもなかったから、久しぶりに見てみたい。
「行ってみたいです!」
「了解。」
高速に乗って、1時間ぐらいかけて私たちはフラワーパークへとやってきた。
彼が入場券を買ってくれて、一緒に園内へと入る。
まるで、イギリス庭園のようで、整えられた花々が咲き乱れている。
広い敷地内を、ゆっくりと二人で歩いて行く。
隣に立つ彼を、ちらっと盗み見る。
ここに咲いている花に負けず劣らず、凛とした表情をしていて、
彼が背中に花を背負っているようだ。
少し見ただけなのに、彼は私の視線に気づいた。
「どうした?」
「なんか、恭哉さんが花を背負ってるようで…、
どこかの国の王子様みたい…」
言った後に気付く。
今、私はものすごく恥ずかしいことを言ったのだと…。
彼に影響されているのだろうか…!?
真っ赤になって、俯いていると急に手を握られた。
びっくりして顔を上げると、口元を緩めて笑っている彼と目が合った。
「僕が、王子なら美緒はお姫様だね。エスコートいたしますよ?
僕のかわいいお姫様…。」
そのまま私の手を持ち上げて、軽く口づけする。
しまった…もっと自分の言うことをよく考えてから言わないと、
とんでもないことになる…。
後悔してももう遅いが…。
心臓が好き勝手に暴れている。
そのまま手を繋いで、歩いていると彼が立ち止まった。
どうしたのだろうかと思っていたら、「如月社長とはどうなった?」
と、聞かれた。
「君の家のことだし、他人の僕が口を挟むんものではないとはわかっているんだけど、
気になっててね。」
“私たち親子の事を心配してくれていたの?”
どこまでも、優しい彼がとても愛おしく思えた。
「あれから、ちゃんと話合って和解しました。
まだ、ぎこちなさはお互いありますけど、それなりに楽しいのでいいんです。」
私たち親子は似た者同士みたいだ。
焦ると話し方がカタコトになったり、話しだしが被ってしまったりと、
色々な発見が見つかって、やっぱり親子なんだなと実感している。
「それなら良かった。和解も出来たことだし…、そろそろ僕は如月社長のことを、
“お義父さん”と呼んでもいいのだろうか?」
「え!?」
「だって、そう遠くない未来の“お義父さん”と、
少しでも仲良くしたいじゃないか。」
「…はぁ。」
父は彼を婚約者として認めてはいるようだが、どうやら彼が苦手らしい。
「恭哉くんは良い人だが、何を考えているのかわからない…」と、
言っていた。
私もまだ彼についてはわからないことが多いのだから、父がそう感じるのも無理はない。
そんなこととは露知らず、
「今度改めて挨拶しないとね」と呑気そうなことを言っていた。
冷たい風が吹いてきた。
日に日に気温が下がって、冬もすぐ傍まできているようだ。
「寒くない?」
「大丈夫です。」
彼は自分を盾にして私に風が当たらないように、風よけになってくれた。
彼に引き寄せられるような形になってしまい、体が密着する。
「あっ、あの…。」
声を掛けようとしたら、優しく抱きしめられた。
さっきまでの、冷たい風も今は何も感じない。
そこにあるのは、彼の温もりだけだった。
「こうして、君と一緒に居られるなんて信じられないな…。」
「恭哉さん…?」
耳元でくすぐるようにそう言われて、私はたじろぐ。
「もう、君には会えないかもしれないって、半ば諦めていたんだ。
だから、こうして君の隣に居られるなんて…思っていなかった。」
「ちゃんと私は、恭哉さんの隣に居ますよ?これからも、ずっと…。」
「ありがとう…。美緒、愛してる…。」
彼は、私から少し体をずらして上から覗きこんでくる。
その目は今まで以上に真剣で、強い…。
私を捕えるその目…。
逸らすことが許されない…。
「僕は、“永遠”なんてこの世には存在しないと思う。どんな物質にしても、
必ず朽ち果てていくだろう?」
私の髪を、指でさらさらとすいていく。
されるがまま、私は彼を見つめる。
「だけど、君を想うこの愛は“永遠”に続くものだと言いきれる。
これから何度別の誰かに生まれ変わっても、必ず君を見つけ出す。
そして、変わらない愛を何度でも君に誓う…。」
情熱的なその言葉は、私の胸の奥へと深く入って行く。
「僕の愛を“永遠”に君へ捧げる。だから、僕の傍にずっと居てほしいんだ。」
「…はい。」
これ以上ないぐらいの、愛の告白だ…。
涙が流れてきた。
「泣かないで…。君に泣かれると僕は非常に困るんだ…。」
「だって、恭哉さんがそんなこと言うから…。」
「いや…、自分でもかなりくさいセリフを言ったとは思ったけど…。
でも、まぎれもない、君への愛だよ。
受け止めてもらえないと、僕はまた子供の時のようにひねくれてしまうんだけど?」
冗談を言う彼が、涙でかすんで見えるけど、
目の前に居る人は、私の大好きな人だ。
「私で良いのなら、お供しますよ?」
笑いながらそう答えると、彼も笑った。
あなたが、求めてくれるのなら、私は喜んであなたに捕われよう…。
どこへも行けないように、しっかりと捕まえていて……。
そしたら、私もあなたを“永遠”に思い続けるから…。 <END>
ここまで、読んでくださって本当にありがとうございました。
果たして、これは完成するのだろうかと心配でしたが、
なんやかんやでどうにかまとまりました…。
小説を書くのは全く初めてで、文章や表現などもめちゃくちゃだと思います…(汗)
作品に関してご感想をいただけると嬉しいです。
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