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不器用な人達  作者: 田月


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赤シート越しの世界

 中学生の時私は初めて、赤シートという物に出会った。

たしか何かしらの参考書についていたんだったと思う。

私はとっても驚いた。

だってそれは、世界を赤色に染めてしまうのに、元の世界の赤色だけは、きれいさっぱり消し去ってしまうのだから。

そして私は「皆これを知らず知らずのうちに装着して(つけて)、生きているんだ」と思った。



中学校の部活の負け試合。

私たちは泣きながら、お互いに慰め合っていた。

そんな時に顧問の先生が私たちの所に来て言った。

「何泣いてるんだ。結果が一番大事だ」

チームの子たちはとっても怒って「マジありえない」「空気読めよ」など口々に顧問に文句を言ってた。

でも私は平気だった。

なぜなら先生は、知らず知らずのうちに赤シートを装着して(つけて)「結果が一番大事。」の後の文字が見えていないだけだから。

ホントはこう続いているはずだ。

「結果が一番大事。でもそれまでの努力はもっと大事。」って。



大体文章の重要な所っていうのは、赤文字で書いてある。

それは学校のプリントも参考書もこの世界だって一緒。

私にも赤シートで、見えない部分を見ることはもちろん出来ない。

でも世界と私たちとの間にある赤シートに気が付いて、何か重要な内容が消えているかもしれないと思うだけで、消えた箇所の輪郭がうっすらとつかめる気がするのだ。



高校1年生の進路希望調査。

私はなりたい職業と行きたい専門学校があった。

それをお母さんに話すと「今の時代何が起こるか分からないんだから。大学には絶対行かなきゃダメよ」と言われた。

これもおそらく、赤シートを通さず見たホントの世界ではこう書いてあるはずだ。

「大学には絶対に行かなければならない。でも本気でやりたい職業や行きたい学校がある場合は迷わずそっちに行くべき。」って。

しかし私は咄嗟に「確かにそっちの方が安定だもんね。ごめんごめん。もうちょっとよく考える」と言ってしまった。

お母さんの意見も確かに一理ある。

それでも私の気持ちも、私なりに悩んで、考えて、その上で決めたこと。

安定を捨ててでも、進むべき道だと思っていた。

それは私が一番分かっていたはずだったのに。



しかしそんな気持ちの中、赤シートを見つめる冷静な部分の私は思うのだ。

私は今何が見えていないのだろうか。

どんな重要な箇所が赤シートで隠されているのだろうか。

いつかは推測くらい出来るようになるだろうか。

そしてそれを推測できた時私はどう思うのだろうか。

まだまだ私には難題で、輪郭の端っこすらもつかめそうにはなかった。

それでも私はそこに確かにあるものをとらえて、お母さんに私の考える赤シートの先を見せることを、自分の胸に小さく誓った。



「人生は見えている安定を大切にするべきだ。でも見えない不安定に飛び込み、正解を見つける覚悟は最も大切にするべき。」

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