第41話 自信過剰っていうやつ?
「でさぁ、ちょっと聞きたいのだけど」
私は暗闇の中、疑問を口にする。
「なんで、こんなくっそ狭い中で、霍良といなければならないわけ?」
朝日が昇らぬうちに白に叩き起こされ。馬車に詰め込まれた。くっそ狭い二人しか座れない空間には、すでに霍良がいたのだ。
そして今現在、ガタガタと揺れる馬車の中に霍良と一緒に閉じ込められている状態になっている。
そう、昨日はあれから『じぃーじぃと一緒に寝るかのぅ』という言葉を断り、霍良と行動するように言われた手前、霍家の屋敷に泊まったのだ。
いや、護衛にという建前なら、馬でいいじゃない。私には白がいるんだから。
「くそ狭かろうが、王の陵墓に参るのには、最低限の体裁というのがあるだろう」
「墓荒らしに行くのだけど?」
「誰がそんな理由を堂々と掲げて陵墓に行くのだ」
隣からと私の膝の上から呆れた視線が飛んできた。
でも霍将軍の遠回しの話から、墓の中に骨があるか確認しろってことだよね。
もし無かったら、あの殭屍は高美人本人ということだ。
墓荒らしに盗掘されていたら知らないけどね。
まぁ、そこから何が見えてくるかは、まだわからない。だけど、高美人も術師というなら、背後の術師も高美人と関わりがあった人物となるだろう。
「それよりもお腹が空いたのだけど?」
叩き起こされて、人の姿になった白に抱えられて馬車に詰め込まれたのだ。だから何も食べていない。
「ほら、食え」
霍良が私に饅頭を渡してくれた。まだ温かい饅頭をだ。
もらった饅頭を半分に割り、膝の上にいる白に差し出し、私はもう半分にかぶりつく。
美味しい!
「それで墓荒らしはどうやってするわけ?」
私はその辺りには詳しくはない。
穴を掘るとか無理だよ。地面を吹き飛ばすならできるけど。
「あ? 堂々と陵墓を開ければいいんだ。こっちは霍芙蓉様の許可を持っているんだ。コソコソする必要はない」
霍良はそう言って、赤い朱印が押された紙を私に見せてくれた。
ん? なぜ、高美人の墓に入るのに、芙蓉様の許可で可能になるのか理解できない。
「なぜ、そうなるのか意味がわからないのだけど、饅頭もっとない?」
「食い物のことしか頭にないのか?」
いや、美味しかったし、もっと食べたいし、頭を使うには美味しいものが必要だと思う。
仙桃だとなおいい。
霍良は二つ饅頭をくれたので、一つは白に渡した。
「俺の方が意味がわからないな。窮奇と言えば、四凶と呼ばれるものだろう? なぜ、猫のようになっている」
今は、猫だね。移動するときは窮奇の姿の方がいいけど、道士として依頼を受けているときは猫の姿のほうがいい。
人の姿は、ご飯を作ってくれるときか、買い物をするときぐらいしかみない。
「それはお母様に調伏されたからじゃない? 子供の頃からいるから、私からすれば、当たり前なのだけど?」
「俺には理解できないな」
「そうかな? 黄帝の子孫だっけ? 元は人だから別におかしなことじゃないと思うけど?」
「なんだと!」
あれ? この話は知らないのか。まぁ、神話時代の話だからね。
霍良が驚きながら、饅頭を食べている白を見ている。だけど、今はどう見ても猫だよ。
「別に俺は善良なるモノじゃない。山ほど人を食ったし、殺してきた。それは事実だ」
ぺろりと饅頭を一つ食べきった白が言う。
窮奇の残虐性は有名だ。正義を嫌い悪を好む。正しいものを殺し食らい、悪を優遇してきた。
だから、母に調伏されることになったのだろう。
「俺は黎明のおもりを任されているが、それ以外がどうなろうと構わない。玉瑛様の手前、芙蓉と天行には気を使ってやるがな」
気を使っている。というものの父とは距離を置いていた。仙桃は貪り食っているけどね。
「あと、正義感をふりかざす赤麒は好かない」
「え? 昨日仲良く話していたじゃない」
「アレは黎明の残念さに共感しただけだ」
ひどい言葉が返ってきた。残念ってなによ。別におかしなこと言った覚えはない。
「子供の頃から思っていたが……」
霍良が大きくため息を吐きながら言ってきた。
「黎明はどこか浮き世離れをしているよな」
「もしかして、常識がないとか言われている?」
それは三年前ぐらいなら、退魔師協会のババアによく怒られていたけど、最近は滅多に怒られなくなった自覚はある。
「俺の嫁にと祖父様から言われたら、是が非でも嫁になりたいと答えるのが普通だろう?」
「うわぁ~自信過剰っていうやつ?」
どれだけ自分がモテると思っているわけ?
確かに見た目は武人という雄々しさがあり、頼りがいがあるだろう。
なんというか、兄貴という感じで部下に慕われるだろうという雰囲気を持っている。
だけど、私の好みじゃない。私の好みは断然父だ。私に甘々な父だ。ぐうたら生活を許してくれる父だ。
「引くわ」
予約日間違えてましたm(_ _)m




