第34話 皇帝って暇なの?
「ということだから、その高美人という妃を知っている人と話がしたい」
まずはその高美人という人から潰していきたい。
なぜ、今なのか。
一番の謎がここだ。
二十年前から立ち入り禁止の宮で、今更何があるというのか。
そこである理由は何か。
高美人を装っているだけなのか。
それとも魂だけは本物なのか。
「できれば、口を出してくる使用人抜きでね」
武官の政頼という人の事件も関係しているのだろう。だけど、王離から聞いた話では、人として問題があるようだった。
こっちから当たれば無関係な情報がでてきて、情報過多で混乱しそうだ。
だから、人の行き来が制限された閉じられた空間の情報が欲しい。
ただ、問題なのが二代前となると後宮内は一新されているだろう。
ということは、情報源は限られてくる。
「わかった。余が太皇太后に会いにいく予定をつけよう」
……え? 琅宋も邪魔なのだけど。
「琅宋って暇なの? 案内人が必要なら、王離でいいじゃない」
「あ……いや……その……」
何故にオロオロしだすの?
皇帝がわざわざこんなことに首を突っ込まなくてもいいじゃない。
「琅宋。はっきりと言えばぁ〜? 黎明ちゃんと、もっと遊びたいって」
「は?」
遊びたいってなに?
馬鹿の言葉に耳を疑った。
いや、馬鹿の言葉を本気にすると、碌なことがないのは体験済みだ。
「違うぞ!」
思わず立ち上がって反論する琅宋。
別に本気には捉えていないよ。
「一緒にいたいからだ」
「なにそれ?」
何が違うのだろう?
一緒にいたいって、子供か?
「陛下。陛下がいれば人払いができると、言えばいいのでは?」
「あ……」
背後から琅宋にこそこそと声をかける王離。
こそこそとしてるものの、王離の声が大きいので、私に丸聞こえだけどね。
そして再び椅子に座って、卓上にうなだれる琅宋。
本当にこれが、この国の皇帝なのだろうか。
実は別人が皇帝役にいるとかではないのか。
それであれば、納得できる。
「琅宋って馬鹿?」
思わず言ってしまった。そして何故か、一人と二匹の呆れたような視線が私に突き刺さる。
私の肩にくっついている白まで、何故か残念な子を見るような視線を向けてくるのだ。
いや、残念なのは琅宋の方だよね?
「まぁ、マイナススタートだから仕方がないが、これは厳しいなぁ。赤麒」
「いやぁ〜。これはこれで面白いからいいよ。窮奇」
人外同士が何か言っているけど、面白いってどういう意味? 人外の言葉は理解できるけど、言っている意味がわからない。
「黎明。芙蓉に言わなければならないことがあるんじゃないのか? それもそこの皇帝を連れてだ」
「う……」
白の言葉に、今度は私が卓上にうなだれる。
説明もなしに仙桃を食べさせたことだ。
まさか、説明を受けていないとは思っていなかった。
説明を受けたから仙桃を食べるのを否定したのかと思ったら、どうもそのことに対しての知識が全く無いようだった。
まぁ、無理やり食べさせた私も悪いのだ。しかしムシ屋敷で、琅宋のおもりをし続けるのも限界だったのもあったから仕方がない。
「そうだね〜。それじゃ、僕が部屋を出ていこう。黎明ちゃんはゆっくりここにいるといいよ」
卓の上で項垂れている私の頭を撫で、炎駒は部屋を出ていった。
窓を開けてだ。
自由過ぎる。そこは出入り口ではないよ。
そして卓の上に項垂れている私と琅宋。呆れている王離と白が残ったのだった。
「陛下。この老婆にどのような御用でしょうか?」
……何故かトゲがあるように聞こえてしまう言葉と共に、芙蓉様が部屋に入ってこられた。
おつきの人は部屋の外で待つように言っているので、芙蓉様一人が礼の姿をとって立っている。
「太皇太后。そこの席についてくれ」
「陛下と同じ席などとんでもございません。老婆はここで良いでございます」
表情を無くしたかと思うほど無表情な琅宋が席につくようにいうも、芙蓉様はその場から一歩も動く様子がない。
なにこれ?
この状況がとっても怖いのだけど?
これは私が動いた方がいいのだろうか。
椅子から立って、空いている椅子を持つ。そして、芙蓉様のところにいく。
二人の間に何があったのかは知らないけど、芙蓉様の方が距離を取ろうとしている感じがする。
「芙蓉様。どうぞお座りください」
「黎明は気が利きますね」
そう言ってにこやかな笑みを浮かべて腰を下ろす芙蓉様。
誰かと違って、という聞こえない声が聞こえて来たのは気の所為にしておこう。
二人の間に何があったの!
あ、こういう関係なので、王離が芙蓉様のところに直接行くことになったのかな?




