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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第6章「戦国武将編」
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第185話「再起への誓い」

黒影衆の里に、朝日が差し込んでいた。

医療所の一室では、白石ユズハが四人の忍びの診察記録を確認していた。

蒼真、蓮司、凛、そして神崎レイ。

かつての激戦で負傷した四人は、長い療養期間を過ごしていた。

しかし、その日、ようやく回復の兆しが明確に現れ始めていた。

「蒼真さん、まずはこちらへ」

ユズハに呼ばれ、蒼真が椅子へ腰を下ろした。

「お願いします」

「脇腹の痛みはどうですか?」

「ほとんどなくなりました。身体を捻っても、前みたいな痛みはありません」

ユズハは傷の状態を慎重に確認した。

「……傷口はしっかり塞がっていますね」

蒼真の表情が明るくなった。

「じゃあ、もう訓練できますか?」

「軽い訓練なら許可できそうです」

「本当ですか!」

「ただし、強い風遁や激しい戦闘訓練はまだ禁止です」

蒼真は苦笑した。

「やっぱり、いきなり全部は駄目ですよね」

「当然です」

ユズハは記録に筆を走らせた。

「まずは身体を動かす感覚を取り戻してください」

「はい!」

続いて、蓮司が診察を受けた。

「蓮司さん、腹部の痛みは?」

「もうほとんどありません。歩くのも普通にできます」

「軽く身体を捻ってみてください」

蓮司はゆっくりと上半身を動かした。

以前なら痛みが走っていた動作だった。

しかし、今回は表情を変えることなく動かせた。

「……おお、痛くねえ」

ユズハは頷いた。

「回復は順調ですね」

「じゃあ、俺も剣を振っていいんですか?」

「軽い素振りからです」

「よっしゃ!」

「ただし、全力で振るのは禁止ですよ」

「分かってますって」

ユズハは蓮司をじっと見つめた。

「本当に?」

「……はい」

蒼真が横で笑った。

「信用されてないな」

「お前も似たようなもんだろ」

二人のやり取りを聞きながら、凛が前へ出た。

「次は私ですね」

ユズハは頷いた。

「凛さんは、チャクラの回復状況を確認します」

凛は椅子へ腰を下ろした。

「最近は疲れやすさもなくなってきました」

「普段の生活で、身体が重くなることは?」

「ほとんどありません」

ユズハは脈と呼吸を確認した。

「……いいですね。体調はかなり戻っています」

凛は安心したように息を吐いた。

「よかった」

「ただし、水遁の使用は少量のチャクラから始めてください」

「はい」

「水壁や水流陣のように、チャクラを多く使う術はまだ控えましょう」

凛は頷いた。

「分かりました」

三人の診察が終わると、最後にレイが呼ばれた。

レイは左肩を固定したまま、静かに椅子へ腰を下ろした。

ユズハは包帯を確認した。

「レイさん、今日は左肩の状態を詳しく診ます」

「……ああ」

「痛みはどうですか?」

「安静にしていれば、ほとんどない」

「腕を動かそうとした時は?」

「以前ほど痛まなくなった」

ユズハは頷いた。

「では、固定を外して確認しましょう」

レイの表情が変わった。

「……外すのか?」

「はい。回復状況を見て判断します」

ユズハは慎重に固定具を外した。

長い間動かしていなかった左腕が、ようやく自由になる。

しかし、レイはすぐには動かさなかった。

「……」

「ゆっくりで構いません。痛みが出たらすぐに止めてください」

レイは右手で左腕を支えながら、少しずつ動かした。

肩に僅かな違和感が走る。

それでも、以前のような鋭い痛みはなかった。

「……動く」

小さな声だった。

ユズハは肩の動きを確認した。

「いいですね。可動域はまだ狭いですが、回復しています」

レイは左手を見つめた。

「……固定は?」

「今日から外して生活しても大丈夫そうです」

レイの目が僅かに見開かれた。

「……本当か?」

「はい。ただし、急に腕を振ったり、重い物を持ったりしないでください」

「……分かった」

ユズハは続けた。

「二刀を使う訓練は、もう少し先です。まずは肩を動かす感覚を取り戻しましょう」

レイは静かに頷いた。

「……ああ」

蒼真が笑顔で声をかけた。

「よかったな、レイ!」

蓮司も頷いた。

「ようやく四人とも訓練に戻れそうだな!」

凛は微笑んだ。

「無理しない範囲でね」

レイは三人を見回した。

「……分かっている」

しかし、その口元には僅かな笑みが浮かんでいた。

診察を終えた四人は、医療所の外へ出た。

久しぶりに並んで歩く道だった。

蓮司は両腕を上げ、大きく伸びをした。

「いやあ、長かったな!」

凛が呆れたように言った。

「まだ完全に治ったわけじゃないでしょう?」

「分かってるって。でも、ようやく動けるんだぜ?」

蒼真も頷いた。

「俺も嬉しいよ」

レイは左肩をゆっくりと動かしていた。

蒼真が尋ねた。

「どうだ?」

「……まだ少し重い」

「痛むのか?」

「いや。長く動かしていなかったからだろう」

凛が言った。

「焦らず戻していけばいいわ」

レイは頷いた。

「……そうだな」

四人は訓練場の近くまで歩いた。

そこでは、下忍たちが木刀を使った稽古を行っている。

蒼真は足を止めた。

「……懐かしいな」

蓮司が笑った。

「何年も離れてたみたいな言い方だな」

「それくらい長く感じたんだよ」

凛は訓練場を見つめた。

「明日から、少しずつ戻れるのね」

レイが静かに答えた。

「……ああ」

その時、背後から声がした。

「全員揃っているようだな」

振り返ると、影宗が立っていた。

「影宗さん!」

蒼真が声を上げた。

影宗は四人の顔を見渡した。

「ユズハから報告を受けた。回復は順調らしいな」

蓮司が笑った。

「はい! ようやく訓練できそうです!」

「そうか」

影宗は頷いた。

「だが、焦るなよ」

「分かってます」

「特に蓮司」

「俺だけですか?」

「お前は勢いで動くところがある」

蒼真が笑った。

「確かに」

「お前もだろ!」

影宗は二人のやり取りを見て、小さく笑った。

そして、表情を引き締めた。

「明日から、四人の訓練復帰を認める」

四人の表情が変わった。

「ただし、最初は軽い動作確認からだ」

蒼真が頷いた。

「はい!」

「蓮司は基本の剣術。凛は少量のチャクラを使った水遁の確認。レイは肩の可動域を優先する」

レイが尋ねた。

「……二刀は?」

「まだだ」

影宗は即答した。

「まずは片腕を無理なく動かせるようになってからだ」

レイは少し残念そうにしたが、頷いた。

「……分かった」

影宗は続けた。

「そして蒼真」

「はい」

「お前は風間コウガの指導を受けろ」

「風遁の訓練ですか?」

「最初は構えと身体の動きだ。術を使うかどうかはコウガが判断する」

「分かりました」

影宗は四人を見つめた。

「お前たちは、これまで何度も危険な任務を乗り越えてきた」

四人は静かに聞いていた。

「だが、強さとは敵を倒す力だけではない」

蒼真は以前、影宗から聞いた言葉を思い出した。

「仲間を守り、生きて帰る力も必要だ」

影宗は続けた。

「今回の療養期間で、それを学んだはずだ」

蒼真は頷いた。

「……はい」

蓮司も真剣な表情になった。

「俺、今まで怪我を甘く見てたかもしれません」

凛が言った。

「私も、自分のチャクラの使い方を見直しました」

レイは左手を見つめた。

「……俺は、戦えない時間の怖さを知った」

影宗は頷いた。

「ならば、その経験を無駄にするな」

四人は顔を上げた。

「明日からの訓練は、以前の自分を取り戻すだけではない」

影宗は静かに告げた。

「以前よりも強い忍びになるための第一歩だ」

蒼真は拳を握った。

「……はい!」

夕方、四人は里の外れにある小高い丘へ向かっていた。

そこは、以前にも任務の前後に集まった場所だった。

丘の上からは、黒影衆の里が一望できる。

蓮司が地面に腰を下ろした。

「……やっぱり、ここは落ち着くな」

凛も隣に座った。

「そうね」

蒼真は夕日に染まる里を見つめた。

「俺たち、また四人で任務に行けるかな」

蓮司が即答した。

「当たり前だろ」

凛も頷いた。

「そのために、今まで休んできたんでしょう?」

レイは静かに言った。

「……まだ、俺は二刀を使えない」

蒼真が振り返った。

「分かってる」

「戦場に戻っても、以前と同じように動けるとは限らない」

蓮司が答えた。

「だったら、俺たちが支えればいい」

レイは蓮司を見た。

「……お前が?」

「何だよ、その反応」

凛が笑った。

「でも、蓮司の言う通りよ」

蒼真も頷いた。

「俺たちは四人で戦ってきたんだ。これからもそうだろ?」

レイはしばらく黙っていた。

やがて、小さく頷いた。

「……ああ」

蒼真は右手を差し出した。

「じゃあ、約束しようぜ」

蓮司が笑った。

「何を?」

「次の任務も、四人で生きて帰る」

凛は微笑んだ。

「いいわね」

蒼真の手の上に、凛が手を重ねた。

続いて蓮司も手を重ねる。

「もちろんだ!」

最後に、レイが右手を伸ばした。

「……当然だ」

四人の手が重なった。

蒼真は仲間たちを見回した。

「誰か一人だけ強くなるんじゃない」

蓮司が頷いた。

「四人全員で強くなるんだろ?」

「ああ」

凛は笑った。

「今度こそ、無茶をしないことも約束してね」

蓮司が苦笑した。

「それは蒼真に言ってくれ」

「お前もだろ!」

レイは小さく笑った。

「……どちらもだ」

四人の笑い声が、夕暮れの丘に広がった。

東国では、戦乱の気配が強まりつつある。

黒影衆にも、いつ新たな任務が下されるか分からない。

だが、四人はもう以前のように焦ってはいなかった。

今は一歩ずつ、確実に前へ進む。

そして、再び戦場へ立つ日が来た時には、必ず仲間と共に帰ってくる。

夕日を背に、蒼真は静かに誓った。

「……絶対に、みんなで帰ろうな」

三人は力強く頷いた。

長い療養の日々が終わり、新たな成長への道が始まろうとしていた。

第185話 完

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