プロローグ
都内某所、地元から遠く離れた場所で俺は淡々と日々の仕事をこなしていた。
60も過ぎ俺は何十年も働き続けた会社を定年で退職した、特別好きな仕事でも良い会社というわけでなかったからか、込み上げてくる感情なんてものは無かった。
毎日毎日仕事のことだけを考えて生きてきた俺は当然のことながら家族なんていない。
まあ1人での生活は嫌いじゃないし、どうせよっぽどの変人じゃない限りこんな男とは一緒に暮らすなんて無理だろう。孤独死なんかの話を聞いたときは少し不安だったが結局の所それは杞憂に終わった。なんてったって誰1人知らないがあんなに大勢の前で俺は………………………死んだのだから。
あれはなんてことない、もうすっかり慣れた仕事のない日のことだった。いつも通りの散歩道の途中の牛丼屋で昼食を済ませ店をですぐの横断歩道で信号が変わるのを待っていた。
(しかし、こうも値段が上がると時代の進みと俺自身の老いを感じるな)
そんなどうでもいいことを考えてる俺の横で
「おかーさん 後どれくらいで着くの?」
「もう少しまっすぐ行ったら見えてくるからね」
土曜日に親子でどこかに向かっていのだろう、なんとも平和な会話をを聞き流しながら信号を渡っていたら
「わぁっっっ‼︎」
(え!)
信号無視してきたトラックがそのまま子供に向かって行った。
まずいそう思うよりも先に何故だか体が動いていた。
ジジィになっても割と動けるじゃないか。そう思える俊敏さを自分自身で感じながら俺はまだ少し後ろにいた母親に向かって子供を突き飛ばした。
力加減とか考えてられないからうまく受けとめて欲しい
そう思ってたら意識が飛んだ、というかご存知の通り死んだ。即死だったのだろう痛みなんて感じなかった。




