107 唯、勉強する。
朝日が水面に反射して、キラキラと輝いてみえる海。
まるで宝石をちりばめたみたいで、とってもきれい。
波も穏やかだし、空には鳥…いや、モンスターがたくさん飛びまわってる。
―――うーん…何もないよね…。
町のなかならいざ知らず、フィールド上空をモンスターが飛ぶのはいつもの光景だったりする。
飛んでるのモンスターの種類も普通だし、特に問題が起きてるようには見えない。
少しひんやりとする朝の風を感じつつ、抱えてるフリルさまをよしよしする。
『ぴよよ!』―――ユイちゃん、ここから300メートルくらい沖に出たとこ…たぶんモンスター!
「鳥じゃなくて?」
『ぴよ』―――うん。水面に…あ、潜った!
もぐ…潜った!?そ、それは困る…。
モンスターがいるみたいなんだけど、私…泳げない。
そして私の視力ではどこにいるのか…ちっともわかんない。
さすがはフリルさま。
「おっけー!フリルちゃん、行ってみよう!」
魔法収納から例の座席を取り出して、即席ジェットコースターの準備をはじめた私。
泳ぎが大の苦手な私だけど、これならどこまでも行ける。
「ユイ、私はギルドと漁師の皆さんに連絡してきます!」
『ぷや!』
「うんわかった、とりあえず様子だけ見てくるね。」
座席のセット完了。
よっこらしょっと、そのまま座席に飛び乗った私。
「気をつけてくださいね。」
「うん。」
『ぷやや!』
プラちゃんの元気な声に見送られて、即席ジェットコースター出発進行。
風魔法という名のアクセルをベタ踏み。
今回は私ひとりなので、全速力でロケットスタートをきった。
―――お魚さん、待っててね!
ぐぎゅるるるぅぅぅ。
おなかが鳴ったけど…そういう意味じゃないからね。うん。
■
「フリルちゃん、この辺?」
空を駆ける私、空を飛ぶフリルさまに尋ねてみる。
『ぴよ』―――この辺りだけど…潜っちゃっててわかんない…。
「そっか。とりあえず海面に近づいてみるね。」
『ぴよ』―――うん。
ジェットコースターの高度を下げて、風魔法を弱める。
海面すれすれ数センチくらいのところで低空滑走。
―――波はあるけど…うーん…。
よく見えない。
索敵だから「聡き地図」の魔法を使いたいところなんだけど、悲しきかな水中には使えない。
「フリルちゃん、探知魔法の使い方、教えてくれない?」
『ぴよ?』―――おっちょこちょいなユイちゃんが?
「…。」
甘えん坊さんモードはどこへやら…すっかりいつもの調子に戻ってるフリルさま。
かわいらしいモフモフな見た目から放たれる、氷も凍っちゃうくらいの毒舌バラエティ。
『ぴよ』―――冗談だよ。うん、わかった。
「お願いしますです。」
『ぴぴよ』―――まずはね…。
こうして新しい魔法を使えるようになった私。
ちなみに探知魔法、例の基本書にも載ってるんだけど…私にはちょっと難易度が高すぎた。
実践あるのみということで、フリルさまに手とり足とり教えてもらう。
というわけでやってみよう。
「影の解析…。」
―――【影の解析】ディティクション
主に視界外の敵を探知する索敵魔法の一。草木の生い茂る森や遺跡内部といった、地形すら把握しづらい状況下で活躍する。探知した対象の情報は表示できないが、その形状を把握することはできる。非常に高度な魔法操作が必要となる魔法であるため、安全圏で使用することが望ましい。
一般的な索敵魔法と異なり、探知する対象を使用者サイドで設定する必要がある。コンソール上から魔法濃度を設定し、探知領域も個別に設定する。魔法濃度と対象の関係については、帯域の変換方程式の章を参照のこと。
―――
オレンジっぽい魔法陣が広がって、目の前に地図みたいなのが表示された。
海中の様子をあらわしているはずなんだけど、ちっともわからない。
上から見たり横から見たり…下から見たりもしてみたけど、やっぱりわかんない。
基本書を右手に四苦八苦…。
―――むむむぅ…。
右側にあるバーで縮尺…左側のボタンでピント合わせ…。
上に表示されているのが魔法濃度で、対象が有する魔法波長に一致する帯域を選択し、帯域の変換方程式を用いて探知領域を再設定…。
コホン…ギブアップです。
「フリルちゃん…。」
『ぴよよ』―――ユイちゃん、このまま潜ってみたら?
ごもっともな解決策なんだけど…。
「えーっと…私、泳げない…。」
『ぴよ』―――そっか…うーん…。
「泳げるようになる魔法なんてないよね?」
『ぴよ』―――さすがに…。
「だよね…。」
ダメもとで聞いてみたけど、やっぱり無理だった。
もう一度「影の解析」を頑張ってみる。
―――右が192で…こっちの魔法が…5…。
割り算に苦戦して、足し算に安堵の繰り返し。
フリルさまに手伝ってもらいつつ…というか、ほとんどやってもらいつつ…なんとか魔法の調整を進める私。
『ぴよよ…』―――ユイちゃん…がんばれ…。
誰か、計算機ください…。




