101 唯、季節に対応する。
まさかの「お魚とれない問題」を解決すべく、再びハナミズキ・タウンへの街道をてくてくと進む私たち…なんだけど…。
―――あれ…?
モンスターがうじゃうじゃいて、冒険者ですら滅多に通らないといわれてる街道…のはず。
経験値ガッポガッポ、大量アイテムで大富豪…なんてことを目論んでたんだけど、肝心のモンスターに会えなくなっちゃった。
いや、会えてはいるんだけど…目が合ったとたんに逃げられちゃう。
さっきも腕が痒かったから、ちょっとだけ右腕を動かしただけなんだけど…蜘蛛の子を散らすようにいなくなっちゃったモンスター。
「ガーちゃん…もしかしてだけど、私…また…。」
「…そう…かもしれません。」
『ぴよ…』―――すっごい怖がられてるよ…。あんなのニンゲンじゃないって…。
フリルさまに…剛速球ストレートでもって現実を告げられた結果、表情が引きつる私。
そんなわけ…と、淡い期待を抱きつつ、ちょっとずつ視線を動かす。
目が合うと逃げられちゃうので、視界の端でモンスターの様子を確認してみることにした。
―――おぅ…めちゃくちゃ警戒されてる…。
ツノウサギ…じゃなかった、 ユニヘア がいつでも逃げ出せる体勢を維持しつつ、木のかげに隠れてこちらの様子をうかがってる。
私がしたことといえば…大木を片手で振り回して大群をなぎ倒したり、上空から風魔法バシバシ連発して吹き飛ばしまくったぐらいなのに。
―――た…たしかに無茶苦茶した自覚はあるけど…。
メンタル的な影響はさておいても、現実的な問題が起きちゃう。
経験値はモンスターと戦って稼ぐのが基本、それがこの世界のルール。
そのモンスターが出てきてくれないとなると…。
「こちらから…攻めますか?」
「えっと…。」
あまりの事態を前に、ガーネット姫の思考が怖い方へと向かっちゃった。
『ぴよぴよ』―――モンスターに襲われないんなら…良いんじゃない?
「そう…ですね。」
「うんうん。」
全力で首を縦に振りまくって、フリルさまのぴよぴよを全肯定した私。
まぁ…ハゼンさん曰く、魔王軍の…何人だっけ…なんとか衆が、そこらじゅうで悪さしてるみたいだし。
―――魔王軍と戦えば…経験値なんてすぐたまるし。
あまりの事態を前に、私まで思考が怖い方へ進んじゃった…。
『ぴよよ』―――魔王軍見つけて「災厄の角笛」とか吹いてもらえば解決だよ。モンスターうじゃうじゃ出てくるよ!
「…。」
結論…えーっと、みんな怖いです。
■
モンスターを余計に怖がらせちゃったかもな会話からしばらく、ハナミズキ・タウンへの街道を進む私たち。
街道の途中にある休憩所…通称「街道のオアシス」でしばらく休んでたんだけど、時間も時間…いよいよもって覚悟を決めなきゃいけなくなった。
もちろん即席ジェットコースターでひとっとびプランも考えたんだけど、せっかくなら歩きましょうということで。
「暑いね…。」
「ですね…。」
一気に上昇した気温。
ミンミンゼミが鳴きだしそうな暑さに、すっかりへとへとの私たち。
足音もテクテクからトボトボに変わっちゃった。
この世界、場所によって季節感がころころ変わる。
タケノコの村では雪が降ってたけど、あれから数週間くらいしか経ってない。
魔法の力が影響してるらしいんだけど…なんだかうらやましいような、悲しいような。
―――暑いの苦手だと…耐えられないよね…。
四季を満喫しまくってた私基準でいくと、ずーっと季節が一緒というのは…結構つらいかもしれない。
ちなみに暑さに関しては…私はバグステータスで防げてるはずなんだけど、じりじりと照りつける日差し、もわっと吹き付けるゆったりとした風…その雰囲気にのまれちゃった。
『ぴよよ…』―――暑いのムリ…ユイちゃん、氷のなかに入ってるね…。
「うん。」
私のかげに入って日差しをしのいでたフリルさまだったけど、さすがに我慢の限界だったみたい。
キラキラと魔法で氷の球体をつくりだし、そのなかにすぽっと飛び込んだ。
―――いいなぁ…。
とっても涼しそうで、とってもうらやましくなる光景。
持って良いよとのお許しが出たので、雪玉みたいになってるフリルさまを抱っこする。
―――のはぁ…気持ちいい…。
「ほい、ガーちゃん。気持ちいいよ。」
「ありがとうございます。ふわぁぁ…。」
ガーネット姫もさすがに無理だったみたいで、装備をはずしてすっかり夏の装いに。
真っ白な半袖シャツに短めのデニム、胸のあたりまで日陰になりそうな…大きなおおきな麦わら帽子。
青い空に白い雲、サンサンと輝く太陽にいきいきと茂った緑…そこにぽやんとした柔らかな表情で佇むガーネット姫。
―――めっちゃ絵になるぅぅっ!
写真撮りたい。
バグのついでにスマホも届けてほしかったな…。
「ガーちゃんって、なんでも似合うよね。良いなぁ。」
「ユイのワンピースだって、とっても似合ってますよ。」
お世辞でもうれしかったりする今日このごろ。
にやけちゃって、にやけちゃって…体がくねくねしちゃう。
えへへ。
『ぴよ!』―――ユイちゃん!海だよー!
氷の部屋に入って、すっかりバカンス気分なフリルさま。
羽を上手に使って、腕枕みたいにしてゴロゴロしてる…って、海!?
眼前に広がったのはキラキラと輝く水面…どこまでも広がるコバルトブルー。




