第7話 役に立ちたいんです
少し遅めの投稿になってしまいました…お待たせしました!
どうぞ今回も面白く仕上がっていると思うのでよろしくお願いします!
こんにちは!エルです!
帝王熊の討伐から早1週間がたち、私たちはシルバーを通り越してゴールドランクにまでなってしまいました!昇格のことを聞いた時は驚きましたが、まだまだご主人様にとっては低いと思うくらいです!
さらに帝王熊を"ブロンズランク"が倒したことがあっという間に王都内に広まってしまい、私たちはベリル内ではかなり有名になってしまいました!
そのせいか国王陛下から直々に城に招待をしてくださり、名誉勲章まで与えられてしまいました。私は何もしてないのですが同じパーティということで私も勲章をもらってしまいました!えへへ…。
ですが…私は思うのです。今もご主人様が討伐クエストで戦っていらっしゃるのに、私は安全な場所から見てるだけなんて…。どうせならご主人様と一緒にクエストをこなしていきたいのです。
なので!今日は思い切ってご主人様に相談しようと思います!エルは張り切って鼻息をふん!と鳴らした。
討伐クエスト終了後…
「え?俺の役に立ちたい?」
「そうです。エルはご主人様のお手伝いがしたいのです!」
グレムは少し困った表情をする。
エルの気持ちはよく分かる、きっと俺が戦っているのに自分は何もしていないと思ってしまってるんだろう。
俺的にはそばに居てくれるだけで癒しになるし役には立つんだけど…それじゃあ許してくれなそうだな…よし、エルのために少し試してみるか。
「よし、じゃあエル!右手を出せ!」
エルは頭の上に?マークをつけながら右手を出す。
「こうですか?」
そのエルの右手をグレムは両手でがっしりと掴む。エルはあまりの驚きとその手の温もりに顔を赤くする。グレムは目をつぶって唱えた。
「<<適合>>」
エルの右手が光りだしそしてその後光が段々と消えていく…。完全に光が消えた後、グレムはエルの右手を離して言った。
「よし、じゃあエルは今日から、回復術士だ!」
エルはなんで?というように首をかしげながら言う。
「え?」
「回復術士、まさに味方の回復に徹する職業だ。エルは味方思いだからぴったりだろう。」
「あの…?なぜ回復術士なのでしょうか?」
「さっき使った<<適合>>っていう魔術、実はその人に最も適している魔法を教えてくれるっていう効果なんだ。」
エルは疑問に思いながらも言う。
「つまり私には最初から回復魔法を使える才能があった…ということですか?」
「そういうことだ、だからあとはきっかけさえあれば、その才能が開花して、魔法を使えるはずだ。」
私にも…魔法の才能があった…。それだけでもエルはとても嬉しく思っている。そこで、エルはグレムに聞いてみた。
「どうすれば出来るようになりますか?」
「まぁ、実践だな、実際にやってみるのが1番早い。」
そういってグレムは持っていた短剣で自分の右腕にスパッと切れ込みを入れる。
「きゃっ!ご主人様!一体何をしているんですか!」
当然エルは心配して慌てる。ふむ、マジで可愛い。
「治してみてくれ。」
「え?…でもまだ私…詠唱も何も知りませんよ!?」
「魔法っていうのはそいつがその魔法を使えるのであれば考えなくても詠唱ができるんだ。魔術しか使えない俺と違ってな。」
魔術しか使えない?一体ご主人様は何を言っているのだろうか。いや、そんなことより早く傷を治さなきゃ!そう思うと、自然と口から言葉が出た。
「<癒しの精よ!今我が声の元に集まり!彼の者の傷を癒したまえ!>、<<回復>>!!」
そう唱えるとグレムの腕の傷に緑色の光が集まり、傷が治っていく…が…完全には治らず、途中で止まってしまった。少しだけ切れた部分が残ってしまっている。
エルはグレムの残った傷を見てから俯いて言った。
「どうしてでしょうか…まだ回復術士として未熟だからなのでしょうか…。」
「いや?魔法に未熟なんてものはない。生まれ持った才能なんだ。やろうと思えば最初っからなんでも使えるぞ。」
グレムは続けて言う。
「多分エルの想いが足りてないんだろう。本当はまだ少し迷っているんじゃないか?『本当に私が回復させられるのだろうか』とか。」
エルはそう言われてまた俯く。
「よーしじゃあその問題を解決しよう。」
そういってグレムは黒いローブを脱ぎ、服の右の袖を肩までまくった。
エルは言う。
「一体何を……まさか!ご主人様!待って!」
グレムはその言葉を聞いたが否や自分の右腕を切り落とした。
ザクッという音がし、グレムの右腕が地面に落ちる。
「っっいってぇ…ほら、エル、回復させてくれ。」
「無理です!あんなに小さな傷も完全に治せなかった私に右腕1本なんて…、絶対に無理です!」
グレムは倒れそうになる。
「ご主人様!」
エルが心配して支える。
「大丈夫だ…ただ意識が朦朧としただけ…。」
「全然大丈夫じゃないですよ!死んでしまうかもしれないのに…何でこんなことを…。」
エルは泣きながら言う。
「エルを……仲間として…信じて…るから…な。」
意識が途切れそうな中グレムは返答する。
エルはその言葉を聞いて覚悟を決めた。そして、詠唱を涙目になりながら始める。
「<癒しの精よ…今我が心の元に集まり、彼の者の傷を癒したまえ!!>、<<完全回復>>!!!」
意識が朦朧としているグレムの右腕に緑色の光が先ほどよりも多く集まる。その間もエルは強く願っていた。
「(お願い…届いて!私の想い!ご主人様を失いたくないという願いのために!)」
緑色の光がより一層輝く、そして辺り一帯を緑色の光が包んで消えたと思うとグレムの右腕が治っていた。
「やったな…エル…。」
グレムの意識はまだはっきりとしてないが、安定してきている。
エルは泣きながらグレムに抱きついた。
「良かったあぁぁぁぁ!!!ご主人様ああああ!!!」
グレムはエルの頭を優しく撫でる。
そのまま数十分の間、2人はそうしていた。
ムスッとエルはこっちを見ないで怒って頬を膨らませている。
グレムは謝る。
「ごめんって、けどエルのためだったから。」
「私のためになってません!ご主人様が傷つくのは魔法が使えないより嫌です!」
エルは少し怒りながら言った。
「もう二度としないから…今回は許してくれ!……な?」
「本当ですか?」
まだ少し怒りながらエルは言った。
「あぁ、本当だ。」
「本当に本当ですか?」
「あぁ、本当だ!神様に誓って!」
その言葉を聞いた瞬間エルは笑顔になってグレムに抱きつきこう言った。
「なら許します♪」
許してもらえてよかった〜許されなかったらどうしようかとヒヤヒヤした〜よかった〜。
グレムは心の底からそう思った。エルは言う。
「けどこれからは怪我をしたら私にすぐ言ってくださいね!自分で治さないで!分かりましたか?」
自分で治しちゃダメなのかよ…と思いながらグレムは言う。
「分かりました。絶対エルに治してもらいます。」
その言葉を聞いて安心したようにエルは正面を向く。そして先程の疑問について質問する。
「ねぇ、ご主人様?」
「なんだ?」
「ご主人様は魔法のことをよく『魔術』って言ってますよね?なんでですか?」
「あ〜それか、それよく勘違いされるんだが実は"魔法"と"魔術"は別物だ。」
「そうなんですか!?何が違うんですか?全く分かりません…。」
グレムの方をチラッと確認しながらエルは言った。グレムは答える。
「"魔法"は生まれ持った才能として出てくる。それに対して"魔術"は努力して学んで身につけられるんだ。」
グレムは続ける。
「例えば炎の魔法を生まれ持った人がいたとする。その場合彼は生まれ持った炎の属性の魔法しか使えない。だが魔術だと誰でも魔術について勉強すればなんの属性でも使うことが出来るってことだ。まぁ他にもそれぞれにメリットとデメリットがあるけどな。」
エルは言う。
「じゃあ、さっきご主人様が言った『魔術しか使えない』っていうのは…。」
「そう。俺はなんの属性の魔法も生まれ持ってなかった、致命的だった。お仲間さんはポンポン魔法を使えるのに俺は使えやしない。だから俺はそいつらを見返してやろうと魔術について学んで学んで学びまくった。そして今のような俺に至ったのさ。」
エルはグレムの顔を見た、だけど彼は何故か悲しそうだった。
「そうやって魔術については誰にも負けない男になった。なったはいいが余りにも強すぎたんだ。俺は周りから恐れられた、近づくと殺されるとか悪口を言うと燃やされるとかやったこともないことを噂されてな。」
だから"仲間"についてそんなに必死に考えてしまうのですか…とエルは心の中で思ってこう言った。
「ご主人様…私は…そんなご主人様の心を満たせるような存在になれているのでしょうか…」
グレムはその言葉に反応してエルを抱き寄せた。エルは少しびっくりした様子を見せたあとボフッという音の後に顔を真っ赤にする。
グレムは泣きながら言う。エルが初めて見たご主人様の涙だった。
「あぁ、なれてる…なれてるさ…十分すぎるくらいだ。俺が必死に求めていた、理想の"仲間"に…。」
エルは思った…なんて…なんて温かいものなんだろう。こんなにも温もりを感じたのは初めてだ…。
グレムもエルも互いから離れようとしなかった。
空にはとうに月が昇っていた。
どうでしたでしょうか?
楽しんでいただけたのなら良かったです。
また、次回も是非よろしくお願いします!




