第6話 初めてのクエストに危険は付き物で
一応バトルシーンありです。
かっこよく表現出来ていたらいいなと思います。
それではお楽しみください。
「それだけですか!?」
エルは納得できないような顔をして訴える。それに対してグレムは言う。
「あぁ、それだけだ。俺はただみんなが視認できない速さで囲んできた冒険者6人の首裏を強く打っただけ。本当にただそれだけなんだ。」
「6人もいたんですよ!?本当にそんなことが可能なんですか!?」
エルは信じられない!という顔をしている。グレムは少し意地悪をしてやろうと思って言った。
「なんだ?俺の言葉が信用出来ないか?」
それを聞いてエルは頬を膨らませむっとする。彼女の立場からでは「信用出来ない」などいえないからだ。そして可愛い。
そして目的地、いわばクエスト地に着いた。
「ここがベリル森か…思ったより広いな。」
壮大な自然を前に少し感動するグレム。エルは言った。
「空気が美味しいですね!この森は。」
「そうか?あまり俺には分からないな。」
「本当に美味しいんですよ!いい森だと思います!」
エルは嬉しそうに言う。
ダークエルフだから自然のことについては敏感なのか?とグレムは思った。
「で、目的のイイロ草っていうのはどれなんだ?正直言うと俺は植物系は全然わからん。」
「そこら中に生えてますよ!ほら!これです!これ!」
エルはイイロ草であろう葉っぱをグレムに見せる。
「他の植物とどう区別したらいいんだ?」
「イイロ草は特徴があって、葉っぱの先がゼンマイみたく丸まってるんです。ほら。」
そういって先が丸まっていることをグレムに確認させる。
「なるほど…ちなみにイイロ草はどういう用途があるんだ?ギルドが依頼するくらいだから結構使われるものだと思うが…。」
「イイロ草には癒しの力があってよく回復用のポーションなどに使われます。ギルドでは色んなポーションを販売していたのでそれに必要になるのかなと思います。」
「そうなのか…よく周りを見ているな。」
グレムは笑顔でエルを褒める。エルは嬉しそうにしている、そしてグレムは言った。
「じゃあ集めますか!」
20分後…
「結構集まったな、エルの所へ戻るか…。」
グレムはそういってエルが採取している場所に戻る…その時目の前の光景に唖然とした。
エルは持って帰る用にイイロ草を包む布いっぱいにイイロ草を置いている、はみ出しかけるほどに。
「いくらなんでも…それは多すぎるんじゃないか…?」
「何を言ってるんですか!ポーションに使っていくのならまた少なくなる時がくるでしょう。だから多めに取っておいて損は無いと思います。鮮度にもこだわって集めましたし。」
「葉っぱを見るだけで鮮度が分かるのか?」
「はい!イイロ草はより、緑色が濃いと鮮度がいい証拠になります。」
「そうなのか…けどやっぱり多くないか?」
「必要です!」
まぁエルがこう言っているんだ、仕方ない…考えを通してあげよう。
そのとき、どこからともなく悲鳴が聞こえた。
「きゃあ!」
グレムは方向がわかるとすぐにイイロ草を布で包み、エルに言う。
「悲鳴が聞こえた方に行くぞ!エル!」
「はい!」
グレム様は人が困っていると助けてやらずにはいられないタイプなんですよね…そんなところもかっこいいです…。エルはそう思いながらグレムの背中を追いかける。
悲鳴が聞こえた場所に着くと、女の子3人のパーティがモンスターと対峙している。1人だけ足に怪我を負っていて動けなそうにしている。
グレムはそれが分かるとすぐに足に怪我を負っている女の子を抱き抱え、
「一旦引くぞ!」
とあとのそのパーティの二人に言った。
とりあえず岩の裏まで来れた…あいつには気づかれている…これからどうするか…。
考えながら、グレムは<<治療>>といって足に怪我を負っている少女の怪我を治す。
「あ…ありがとうございます。」
気にするなとグレムは手を振る。そしてグレムは言う。
「あれは…帝王熊だな。どこから来た?」
女性パーティの1人が言った。
「とりあえず自己紹介する、私はクレア。さっき足に怪我を負っていたのがユミ、そこのもう1人がコトミだ。あいつは私たちが森を散策しているときに急に出てきた…いるとは聞いていたがなんでこんな時に…最悪のタイミングで出くわしちまった!クソッ!」
クレアは少し怒りながら言った。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう。それよりまずはこれからどうするかだ。」
グレムの言葉に対して、ユミが言う。
「そんなの逃げるに決まってるでしょう!?相手はあの帝王熊よ!?プラチナランク以上じゃなきゃ勝てるはずがないわ!」
グレムは数秒考えたがやることを決めた、岩陰から出て帝王熊から真正面に15メートルくらい離れたところに立つ。
「何をする気!?勝てるはずがない!逃げるのよ!」
必死にユミが言うとグレムはこう返した。
「帝王熊はこちらが背中を見せると突撃してくる習性がある。逃げようとしても誰かが犠牲にならないと無理だ。それに…」
グレムは付け足すように言った。
「それに後ろに女の子が4人もいる状況で男が逃げられるわけないだろ。ということであいつは倒します。」
ユミはまた言う、そしてエルにも問いかける。
「無茶よ!それにあなた!あなたはご主人様があんな状況に立っているのに心配じゃないの!?」
エルは自信満々の顔で言った。
「大丈夫ですよ、ご主人様はとっても強いんです。」
「大丈夫って…。」
ユミはそう聞いて黙った。
突然グレムがエルに呼びかける。
「エル!物理か魔術で倒すとしたらどっちがいい!?」
「あまりご主人様が魔術を使って戦うところを見たことがないので魔術が見たいです!」
エルは大声でグレムに聞こえるように言った。
一体何を話しているのかこんな最悪な状況で…と女の子3人のパーティは思う。
「じゃあ…いくぞ!!」
そう言った瞬間、グレムの足元に黄色い魔法陣が光りながらほとばしる。グレムは右手を挙げてこういった。
「<我、雷を操るものなりて!今!雷神の力を授かり、目の前の敵を葬り去らん!>」
詠唱を唱えると急に黒い雲が空を覆い、今にも嵐が起こりそうになる。
そして、グレムは挙げた右手を思いっきり下ろしこう言った。
「くらえ!!<<落雷の怒号>>!!」
その瞬間、帝王熊の頭上に雷が落ちた。
ドオォォォンと落雷の音がし、「ウオオオオオオン」と帝王熊は断末魔を上げて黒焦げになり、倒れた。
空はあっという間に晴れていき、それに伴いグレムの足元にあった魔法陣も消えていく。
「いっ、一撃…。」
あまりの魔術にクレアは口が開いたまま塞がらず、ユミは夢だったのではないかと何度も目を擦る。そしてコトミは「グレム様…♡」と言って熱い視線をグレムに向ける。
エルは立ち上がり岩陰から出てグレムの方に走っていってこう言った。
「凄いです!凄いです!あんな凄い魔術が使えるなんて、エルは驚きです!さすがご主人様です!」
とぴょんぴょんとジャンプしながらグレムを褒め称える。
ウサギみたいで超可愛いんだが。そう思いながらグレムはエルに言う。
「どうだった?かっこよかったか?」
「はい!とってもかっこよかったです!」
エルは笑顔で言った。あぁ…とても癒される…。グレムは心の底からエルが仲間でよかったと思った。
帝王熊の死体を抱えて持って帰ってきたグレムたち一行はギルド外でもかなりの注目を浴びた。さすがにギルド内には入れられないので死体は外に置いておく。
先にイイロ草のクエストを済ましてしまおうと思い、イイロ草を包んだ布を広げると…ギルドマスターと鑑定者が言う。
「多いね…。」
「多いですね…。」
やっぱりこうなるかとグレムは思い、エルが言ったことについて話し、さらにエルをフォローするように言う。
「うちの子がいずれまた無くなるときがくるのなら多めに取っておいてもいいでしょう。と言ったんです…すみません。」
エルはそれを聞いて少し悲しそうにしている。
「けどうちの子によるとかなり鮮度も良いとか。」
グレムが言うと鑑定者はよーくグレムたちが持ってきたイイロ草を見て言った。
「確かに、こんなに鮮度が良いイイロ草があれば数ヶ月、いや、数十ヶ月は困らないでしょう。」
鑑定者はそういうと、
「クエストクリアです、おめでとうございます。」
といってグレムたちを褒め称えた。
グレムたちは良かった…とため息を着く。
そこに急いで走ってきたグレムたちのクエストの受け付けをしてくれた受付嬢が駆けつける。
「ここに…グレムという方は…」
「い、いますけど…。」
グレムはそう言いながら手を上げる。
そうするとその受付嬢は「はぁ」とため息を漏らし、「良かったあ…無事で」と言った。
グレムは気になり、
「何かあったんですか?」
と言った、受付嬢は強めの口調で返答する。
「『何かあったんですか?』じゃないですよ!!あなた達が行ったベリル森にはですね!『帝王熊』の目撃情報が出ていて…。」
それを聞いた途端グレムは苦笑いしながら言った。
「それなんですけど…」
「これは…。」
ギルドの外に出た受付嬢が驚いて言う、そしてグレムの方をまさかというように見る。
「『帝王熊』の死体…ですね…ある事情があって倒した時黒焦げにしてしまったんですが…。」
グレムは少し反省しながら言うと、
「信じられん…ブロンズがこんなこと…前代未聞だぞ?本当に君がやったのか?」
「一応その女の子3人のパーティかエルが証人になるかと…。」
女の子3人のパーティ全員が首を縦に2回振る。すると受付嬢が、
「ええ!!?だって『帝王熊』ですよ!?プラチナランクの人が束になってかかってやっと討伐できるくらいなのに…1人で倒したんですか!?信じられない…。」
「グレム君…と言ったね、君。」
ギルドマスターに呼ばれて答える。
「はい?」
「今回のことは…さっきも言ったが前代未聞だ…大事になるのは避けられん。しかも倒した男がブロンズから動かないというのも冒険者の反感を買うだろう。だから少しの間報酬とランクについては待って欲しい、分かってくれるかね?」
「はい、まぁそれはこんなこと普通有り得ませんから、別に気にしませんよ。」
全く緊張感のない言葉にギルドマスターは笑う。
「全く不思議な男だ、そんな力を持っていながら求めることをまるでしない。賢者かなにかかね君は。」
ギルドマスターは褒め称えるように言う。
「これでみんなの被害が無くなるくらいなら安いもんですよ。では、これで今日は帰ります。ほらエル、行くぞ。」
エルは元気な声で言う。
「はい!」
「謙遜か本音かはたまた嘘か…全く分からん。ほら、お前ら何を突っ立ってるんだ?早く『帝王熊』の解体を始めないか。うちのギルドの英雄様が待ってるんだぞ。」
ギルドマスターはそういって自分も帝王熊を運び出すのを手伝い始める。
ギルドのクエストボードにはこのような紙が貼られていた。
WANTED!! 『帝王熊』1頭の討伐 討伐難度星10
報酬 ベリル王国の名誉勲章また、報酬金1000万ギル
討伐依頼主 ベリル王国国王 シュバルツ=エイド=クレス
どうでしたでしょうか?
あっさりと終わってしまった感じですが結構な大事なんですよね(笑)
次回はエルの話になるかと思います。お楽しみに!




