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第0話 魔王、辞めます

はじめまして!

そして初めてのストーリーになります。


できるだけ楽しんでもらえたら嬉しいです!

ではどうぞよい異世界生活を!

「これより、魔王軍総会議を始める。」


魔王カイロス=グレムがそう言うと、席に着いていた魔王軍の四天王と呼ばれる者たち…リアス、ギュスターヴ、サイファ、リウム、及び軍の総指揮官が起立し一礼すると、また席に着いた。


そして、魔王である彼の秘書を務めているファイラスがお茶を全員に配り始めた。


彼女がそれを全て配り終え、自分の傍に戻ってくると彼は口を開いた。


「今回の議題はこれからの魔王軍の目標についてだ。誰か意見のある者はいるか。」


すると、サイファが手を挙げた。


「サイファ、言動を許可する。」


彼からの言葉を聞き、彼女は椅子から立つと意見を述べた。


()()()の軍は常に兵力を集め、更に日々、より強くなるように訓練を行っているようです。なので、こちらも軍の強化をするべきかと思われます。人間共の国々から離れているとはいえ、いつ攻め込まれてもおかしくはありません。」


グレムはそれを聞いた途端すぐに不満そうな顔を見せたが、彼女は続けた。


「人間共が数で対抗してくるのであれば、こちらもある程度、頭数が無いとおそらく厳しくなるでしょう。そのためには魔物の召喚が必要不可欠です。…なのでここから1番近くの町、ミルタを襲撃し、召喚に必要な生け贄を調達するのが1番かと、私は思います。」


軍の強化に魔物の数を増やすのは必須だ。だが魔物一体を生み出すには生け贄とする物…ここでは人一人分の命が必要になる、そのためにミルタの住民たちを生け贄にしようと言っているのだ…全く彼女らしい。


すると、ギュスターヴがいきなり椅子から立ち上がって言った。


「なら我が軍隊を今すぐにでも派遣しよう。数は少ないがその分、個々の力は人間共に比べれば遥かに強力だ。それに、相手は兵士でもなく唯の町に住む住民、襲撃となれば容易いことだ。」


自分の軍を自慢しながら余り深く考えもせずに即行動に移そうとする、こいつの悪い所だ。取り敢えず、ここで止めるか…


「異論のあるものはいないか。」


リアスは問題なさそうな顔をしている、リウムに至っては机に足をかけていて聞いているのかどうかも怪しい。だが、()()()()()()()異論がある者はいないようだ。


またこの流れだ、この流れでいつも同じことを言わされる…。だが、ここで俺が言わなければ、こいつらは止まらないだろう。


「…だが、俺の考えでは人間との和平を…」


俺がその言葉を言い切る前に、四天王とファイラスが声を揃えてこう言ってきた。


『却下です。』


……あぁ、そうか。でもそれなら、こっちにも考えがあるんだ。


グレムはそう思うと玉座を立ち、魔王城の入口にある扉へと歩き始めた。当然、それを見た皆が彼を止めようとする。


サイファが彼の服の袖を掴んで言った。


「何処へ行くのですか!?」


彼はすぐに彼女のその手を振り払うと、こう返した。


「…別に何処でもいいだろ。」


そしてそのまま扉の前まで歩き、その扉を開いてから立ち止まると、彼はその場にいる全員に向けてこう言い放った。


「俺は、魔王を辞める。」


全員があまりの驚きに声も出ず、互いに目をパチクリとさせていた。そんな時、ファイラスが彼に聞いた。


「どうしてですか!?」


「1150。」


彼がすぐさま返したその言葉に全員が疑問を抱いた。一体何の数字だと言うのか、と。


その間、グレムはそうしてこちらに目を向けてきた全員の視線に心底嫌気が差していた。ここにいる全員が…誰も、何も分かっていない。そう思うと、反吐が出る。


「1150…俺が『人間との和平の話を議題に出した時に却下された回数』だ。」


俺はもう限界だった。こうしてわざわざ言うのですら、嫌に感じていた。


「1500回まで待ってやろうかと思ったが…あまりにも同じ事を繰り返したものでな、諦めたんだ。お前らに和平を持ちかけようと、誰一人としてまともに聞いてはくれない。魔王直々の言葉だというのに…。」


すると俺の前だからか、先程の自信に満ち溢れていた態度が嘘だったかのように、酷く萎縮した声でサイファがこう呟いた。


「それは…あまりに現実味が…。」


…こいつは何を言っているんだ?


()()()()()()?お前たちは、俺が出した報告書に目を通したか?」


彼の言葉を聞いた途端、その場の全員が黙った。


…グレムが進めていた『ミルタ発展計画』というその報告書には、彼が人間との和平を築くための最初の一歩として、魔王軍であるゴブリン数百体を三ヶ月間その町に派遣させ、その発展を手伝った事が記されていた。


その町はその計画のお陰で来訪者が増え、人口的にも経済的にも豊かなものへとみるみる変わっていった。そのお礼として、町長が「魔王軍が人間との和平を築くための手伝いをする」と、約束をしてくれた事までもが記載されていた。


だが当然、誰もそんな事など知らない。過去にそれを聞いても目を通す者は一人もいなかった。そもそも人間との和平を考えようものなら嘲笑され、罵倒され、挙げ句の果てには無視される。それくらいに馬鹿馬鹿しい事だと彼女らは思っていたのだ。


そんな彼女らに向けて、グレムは怒鳴るように言った。


「そりゃあそうだよな!?お前たちは人間と和平を築くなんて、馬鹿馬鹿しい事だと言って考えもしないんだからな!」


今まで何回も聞かせてきたが、こいつらは耳に入れようとすらしなかった。


「…お前らにとっては何が馬鹿馬鹿しいんだ?戦争をすれば、勝っても負けても残る物は()()()だけだ。大切なものを失って、奪い合って…結果生まれるのは()()()()()だけだ!それでも戦争をしたいのか!?」


彼はそこでつい熱くなってしまったと思い、一度大きく深呼吸をして冷静さを取り戻すと、また話し出した。


「お前らは…親父の遺言を覚えているか?"みんなが笑って過ごせるような世界にしてくれ"だったよな…お前らはまさか、その()()()()()()()()の事を指しているとは思っていないだろうな?」


目の前にいる全員の殆どがその言葉に疑問を覚えるような表情を見せる。「そうではなかったのか」と驚くような表情を浮かべる者も中にはいた。…俺がこうして口に出さないと分からないぐらいなら、こいつらは親父の事を何も分かっていなかったんだな。


「親父は亡くなるまで一度も『魔王軍全員』の事を"みんな"と呼ばなかった…これで分かっただろう?親父は魔王軍だけでなく、人間までをも含んでこの言葉を遺したんだ。…そんな事にも気付く事の出来ない奴らだったお前たちの方が、つくづく馬鹿らしい。」


俺は今までこいつらと一体何をしてきたのだろうか。これでは唯のお飯事をしてたのと変わりない。…ああ…そういえば、もう1つ言う事があったな…。


「そうだ、言い忘れた。俺はこれから自由に生きていく事にする。こんな窮屈で薄暗い鳥籠()からは離れて、楽しく過ごすためにな。だから…」


彼がそう言葉を投げ掛けた時、その場にいる全員の背筋が凍りついた。突然空気が重くなり、途轍もない恐怖と殺気に満ちた霊気が辺りを覆う。


「俺の邪魔になる事をすればどうなるか…流石にそれが分からない程、お前らは馬鹿ではないだろうな?」


そう言うと、彼は扉から外へ出始めた。その時、ファイラスが彼の背後に来るように駆け寄ってくるとそこで止まり、目に涙を浮かべながらこう言った。


「魔王様!行かないで下さい!私は…私は!」


「ファイラス……。」


そんな彼女に彼は初め、憐れむような目を向けていた。だが、その目はすぐに()()ような物に変わった。


「お前の俺に対しての『忠誠』はそんなものだったのか?」


その言葉を最後にグレムは扉から出て城を去っていった。ファイラスは力を無くしたようにその場に座り込み、泣き叫んだ。





魔王城から出たグレムは広い草原の上に立つと、両腕を上げて大きく体を伸ばして言った。


「…自由…か。」


もう何も軍のことを考えなくていい、いちいち話を聞くストレスもない、仕事に追われる毎日ももう勘弁だ。


「さて、これからどうするか。」


彼は持ってきた地図を広げ、街を探し始める。その地図の左上には、『フェニキア大陸』と書かれていた。


「ここから一番近くて大きい街は、ここか。」


彼はその地図の上に描かれた『王都ベリル』を指差し、目的地に決めるとこう言った。


「まずは…仲間が欲しいな。」


つい先程の魔王城での出来事を思い出し、自分が思う『理想の仲間』を確かめるように呟く。


「忠誠なんてものじゃない。より信頼出来る関係を築けるような仲間が…。」


これから、自由になった俺の旅が始まるんだ。もうこんな顔をしてはいられない、と気合を入れると、グレムは一人、最初の目的地に向かって歩き始めた。

今回の話いかがでしたでしょうか?


また次もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 若干心が痛んだけど魔王の話も聞かないに上下関係忘れたり報告書にも目を通さない、然るべき罰かな。
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