27.りりの訪問
次の日。
学生マンション。
桃瀬こはるの部屋。
ピンポーン。
部屋の呼び鈴が鳴った。
「誰だろう?」
こはるは玄関へ向かう。
ドアを開けた。
「はーい――」
そこに立っていたのは。
小鳥遊りりだった。
こはるは一瞬固まる。
「……」
そして言った。
「敵が自宅まで攻めてきた!」
りりはすぐ笑った。
「敵だけど、今は敵じゃないわよ」
妙にフレンドリーである。
こはるは少し考えてから言った。
「……とりあえず上がる?」
りりは即答した。
「もちろん!」
遠慮ゼロだった。
りりはずかずかと部屋に入る。
「へぇ~」
「意外と普通の部屋」
こはるは肩をすくめる。
「昨日引っ越してきたばっかりだからね」
家具はまだ少ない。
テーブル。
椅子。
簡単な棚。
生活感はまだ薄い。
こはるはキッチンへ行く。
「お茶くらいしかないけど」
ペットボトルからコップにお茶を注ぐ。
りりはテーブルに座りながら言った。
「ありがとう」
そして。
妙に上機嫌だった。
「こはる」
「見たわよ」
こはるはコップを置きながら聞く。
「何を?」
りりは笑う。
「昨日の戦闘」
こはるは少し考えた。
「ああ~」
「ヌギーのやつ?」
りりはうなずいた。
「そう」
「戦闘記録回ってきたから見た」
そして。
思い出したように笑い出す。
「私さ」
「思わず吹き出したよ」
こはるは席に座る。
「そうなんだ~」
「で?」
「何がおもしろかったの?」
りりは身を乗り出す。
「最後よ!」
「なんで逃げたの!」
こはるは普通に答える。
「ああ~」
「なんか数多くてさ」
「めんどくさくなった」
りりは吹き出した。
「正直!」
こはるは続ける。
「どう見ても待ち伏せの罠じゃん」
「だから」
「美味しいところだけもらって帰ればいいかな~って」
りりはテーブルを叩いて笑う。
「そりゃそうだよね!」
「私も同じことする!」
プルンが横で言う。
「言い方は最低プルン」
こはるは気にしない。
「昨日は戦う気分じゃなかったし」
りりはまだ笑っている。
「いやさ」
「そのあとが最高で」
こはるが聞く。
「なに?」
りりは言った。
「残されたあいつ」
「呆然と立ってた」
こはるも少し笑った。
「そうなんだ」
「誰かいるな~とは思ったけど」
「まあいいやって」
「全力離脱」
プルンが言う。
「大胆プルン」
りりはお茶を飲みながら言った。
「でもさ」
「よく逃げたよね」
「相手ドレスティアでしょ?」
こはるはあっさり答えた。
「だってさ」
少し肩をすくめる。
「ドレスティアって」
「人を襲うって言っても」
「女の子の服を持ち去るだけじゃん」
りりは少し黙る。
こはるは続けた。
「それって」
「実質、無害と変わらないし?」
プルンが言う。
「犯罪プルン」
こはるは気にしない。
「だから」
「逃げてもいいかなって」
りりは少し考えてから笑った。
「……まあ」
「それは否定できない」
プルンが言う。
「悪の組織の威厳がないプルン」
りりは肩をすくめた。
「でも一応」
「悪の組織だからね?」
こはるは真顔。
「服泥棒組織」
りりは吹き出した。
「言い方!」
そしてふと聞いた。
「そういえば」
「なんで戦ってるの?」
こはるは普通に答える。
「ポイント」
りりは首を傾げた。
「ポイント?」
こはるは説明する。
「敵を倒すとポイントがもらえるの」
「で」
「貯めると特典に変えられる」
りりは少し考える。
「……ゲーム?」
こはるはうなずく。
「そんな感じ」
プルンが胸を張る。
「魔法少女システムプルン!」
りりは笑った。
「なるほどね」
「だからヌギー倒してたのか」
こはるは真顔で言う。
「効率いいから」
りりは興味深そうに聞く。
「で」
「特典って何?」
こはるは少し黙る。
「……」
りりがニヤニヤする。
「怪しい」
こはるは観念した。
「胸」
りり
「え?」
こはるは真顔。
「ポイントで胸大きくできる」
りりは吹き出した。
「なにそれ!!」
プルンが補足する。
「魔法少女特典プルン」
りりはまだ笑っている。
「それ目的で戦ってるの!?」
こはるは真剣。
「重要」
こはるはりりを見る。
「そういえば」
「りりって胸どれくらい?」
りりは普通に答えた。
「Bカップだけど?」
こはるは深いため息をつく。
「はぁ~……」
りりが言う。
「いいな~って顔」
こはるは真顔。
「いいな~」
りりは首を傾げる。
「そんなに大きくないよ?」
こはるは即答した。
「それ」
「ある人の言葉だから」
りり
「?」
こはるが続ける。
「お胸の無い人の言葉じゃないから!」
りりは大笑いした。
プルンが言う。
「深刻プルン」
りりが聞く。
「で」
「あと目標はどれくらいなの?」
こはるは少し考える。
「……」
そして言った。
「あと最低一回」
りりは首を傾げる。
「あと一回?」
こはるはうなずく。
「ポイントで強化できるんだけど」
「たぶんあと一回強化すれば」
「Aカップ」
りりは一瞬黙る。
そして吹き出した。
「そんなシステムなの!?」
プルンが胸を張る。
「魔法少女特典プルン!」
こはるは真顔で言う。
「だから」
「今ポイント貯めてる」
りりは笑った。
「魔法少女の目的それ?」
こはるはうなずく。
「重要」
少し沈黙。
そして。
りりが言った。
「応援する」
こはる
「え?」
りりは笑う。
「早くAカップなれるように」
こはるは呆れる。
「敵なのに?」
りりは肩をすくめた。
「だって面白いじゃん」
プルンが言う。
「敵が応援プルン」
りりは立ち上がる。
「まあ」
「戦うときはちゃんと戦うけどね」
こはるはため息をつく。
「なんか」
「変な関係ね」
りりは笑った。
「結構好きよ」
「こういうの」
そのあと。
二人はしばらく――
他愛のない雑談を続けた。
敵同士なのに。
戦っていない時間は。
まるで普通の友達のようだった。




