トニックウォーター
「ジン・トニックをお願いします」
ブロガー君の注文に、マスターがびくりとした。
「えー、ただ今トニックウォーターを切らしておりまして…… オリジナルのトニックウォーターでなら出来ますがいかがいたしましょう」
「えっ!? むしろそっちの方が飲んでみたいっすよ」
ブロガー君が目を輝かせる。
「じゃあ、私もそれをお願いします」
私も流れにのってみた。
マスターは、ウィルキンソンの炭酸と半月型(櫛形/ウェッジズ)に切った檸檬、それに白砂糖とアンゴスチュラ・ビターズを並べた。
「これを適量、混ぜます。これでオリジナルのトニックウォーターとなります」
「え? これって、ほぼサイダーとビターズですよね?」
顔をしかめるブロガー君。
マスターはオリジナルのトニックウォーターの上から静かにジンを注いでライムを搾ると軽くステアする。別のライム一切れをのせて完成だ。
「どうぞ。当店オリジナルのジン・トニックです」
味わってみる。
素朴な味わいのジントニックだ。逆に、これが本来のジントニックだと言われたらそうなのかと思ってしまいそうだ。
「実は昔、バーテンダーの修行中に、師匠からよく聞かされんですよ。『最近のバーテンダーはトニックウォーターすら自分で作れない』とね。そう言いながら作り方を教えてくれるわけでもない。そこで、自分なりに作り方を工夫してみたんですよ」
そう言うマスターは誇らしげなのだった。




