緊急会議2
少々忙しくなってしまったのと、リアルのゴタゴタでメンタルがやられて中々筆が進まず、更新が遅くなってしまってすみませんでした。
不定期更新になってしまうと思いますが、今後もよろしくお願いします
「……次は軍事ですな。ジャン、お願いします」
「はっ、常備兵は百十、そこにアレン様が提案された屯田兵を加えれば我が軍の総数は約千といったところですな」
ジャンが立ち上がって報告をした内容に父上と爺様が驚いたような顔をしている。まあ、それもそうだろう、うちの領地の人口は約一万ほど、つまり人口の一割に及ぶ規模ということになる。普通、緊急事態で農民兵を大量に徴兵しなければそんな人数動かせないので、驚くのも無理はないか。
それもこれも塩鉱山の好景気を利用して大都市の貧困層の開拓村への植民政策と屯田兵政策を同時並行で進めたからだ。
この屯田兵政策は農民兵の練度が上がる、屯田兵のいる村が魔獣や盗賊に対しての対抗手段を得ることが出来るなどの利点があるが、為政者として注意すべき欠点は農民兵が強くなるということ自体だ。反乱でも起こされたら目も当てられない。
だが、その欠点に関してこの世界では心配したところで今更だと俺は思っている。なぜなら、この世界には冒険者がいるからだ。高位冒険者ともなれば常備兵の兵士数十人分の働きをするだろうし、世界に数人しかいない最高位の白金ランクになれば、一騎当千の将だ。そんなのがいる時点で反乱の時の敵兵の強さなど気にするだけ無駄だ。
そして魔獣がいる以上、農村に戦力を保有するなと言うのは無理がある。豊臣秀吉の刀狩りなどもっての外だ。
何処の世界でもそうだが、反乱が起きないような健全な統治をし、他国の工作がないか目を光らせるのが一番無難で安全だ。
「……それで屯田兵はどの程度使える?」
「そうですな……畑仕事もあるので毎日訓練出来ないので練度としては、新兵と比べたらマシ、といったところです。一対一で通常の農民兵相手なら分があり、傭兵相手なら分が悪く、負けるでしょうな。集団行動はそれなりに出来るようにはなっております」
「なるほど、拠点防衛ならそれで十分だな」
2年前から始めて、新兵よりはマシというのはかなり良い方ではないだろうか?農作業の合間、というより共同で畑を管理させて交代制で訓練を受けさせていたのだから新兵の基準にも届いていないのも想定していたが、杞憂だったようだ。
「まあ、戦争がなければ杞憂となるのじゃが……実際どのくらいの確率で戦争になると思っておるんじゃ?」
爺様は基本的に隠居してるから情報には疎いだろし、その疑問はもっともだな。これから俺が出す情報で答えになるし、さっさと言ってしまうか。
「その件に関しては俺から報告があります」
「ん?何処かで情報を得たのか?」
「ええ、冒険者ギルドからの話ではどうやらマクベス子爵はかなりの数の傭兵を集めているようです」
「……杞憂ではなくなったようだな。全く、よりにもよってこのタイミング…いや、このタイミングだからこそか」
「こちらでも裏を取りますが、ほぼ間違いなく戦争になるでしょう」
「クライス頼んだぞ」
「はっ」
父上という歴戦の将が動けない時に仕掛けるのはマクベス子爵にしては良い判断だと思う……いや、黒幕の指示だろうな。父上が殿をしている中で重傷を負ったのは有名な話だ。黒幕は勿論マクベス子爵も知っていてもおかしくはない。
爺様も歴戦の将ではあるが、隠居している老人なので大したことはないと思われているんじゃないだろうか?爺様が気が付いたらブチ切れそうだな。
「そうなるとここに陣地を築いて防衛するのが良さそうだ」
父上が机の上に領地周辺の地図の一点を指差した。その場所はアルトロス男爵領とマクベス子爵領の領境にある(というより領境に使われている)レライラ川と言う川の手前、アルトロス男爵領側の場所だ。そこには街道が通っており、西には山脈があり東には森が広がっている。
どちらもよく魔獣が出没する場所であり、大軍の利点を活かせる地形ではない上に街道さえ塞いでしまえば軍の通れる道はない。
「魔獣の縄張りの近くに大軍が留まっていれば魔獣が自然と集まり、疑似的な挟撃が出来るはずだ。奴らは大都市周辺の魔獣とは違い、軍の脅威を知らない…戦いが長引き血が流れるほど集まってくる。そうすればマクベスの軍も退かざるを得ないだろう……」
そういう父上の顔は苦虫を嚙み潰したかのよう歪んでいた。父上の性格は実直で豪胆、小細工や謀略を嫌う傾向がある。
その父上にとっては領地と領民、そして家を守るためとは言えども人類共通の敵と言っても過言ではない魔獣を利用するのは忌避すべきことなのだろう。
正直、俺もあまりそういったことは好きではない。だが、他に選択肢がないのも事実だ、やらない手はない。
「ほぉ、なるほど。じゃが気が乗らぬようじゃし、儂から一つ代わりの案を出してやろう」
「親父、代案なんて本当にあるのか?耄碌し始めたのなら行ってくれよ、期待した分だけ落胆する羽目になるのは俺たちなんだからな」
「マルス、お主はアレンのようにとは言わんからもう少し礼儀正しくしたらどうじゃ、特に言葉遣いを直せ」
「ここではそんな堅苦しくしなくて良いだろ、気心の知れた相手しかいないんだから」
「はぁ、全くこやつは……」
苦言に全く堪えた様子もない父上に溜息を吐きながら、爺様はレライラ川よりマクベス子爵両側の森を指した。
「ここは強力な魔獣の縄張りだと思われ、他の魔獣はいないのじゃ。しかも縄張りの主も森の浅い場所には出てこない……つまりはじゃ、ここに伏兵を配置し、敵兵の大半が川を渡り本陣が手薄になったところに奇襲をかけ、総大将を捕らえるなり討ち取るなりする。相手もまさか自分の領地で守勢側から奇襲をうけるとは思うまい……どうじゃ?我が策は」
「……ちっ、流石だぜ親父…耄碌はしてなかったか」
流石爺様だ……経験や知恵は俺は勿論のこと、父上も及ばない。父上も舌打ちはしたものの、爺様の案を褒めている。表面上は仲が良くなくても心の中では認めているし尊敬もしているのだろう、喧嘩するほど仲が良いということだ。
「今舌打ちしたじゃろ、素直に儂の偉大さを認めぬか」
「そう言われると認めたくなくなるな…」
「何じゃと!?」
「やんのか、老い耄れ!?……あっ、ちょっと待て、俺は怪我してんだぞ!」
「問答無用!先の戦で不覚を取ったお主が悪いわ!」
怪我人の父上に衰えを感じさせぬ俊敏な動きで爺様が襲い掛かる。……仲が良い、筈だ…多分、きっと、おそらく。
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