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「あの方は、とても優れた方だな」
意気込んで面談に出掛けた後、なかなか戻って来ないのでどうしたのかと思っていたら、戻った途端にそんなことを言い出したので騎士一同、戸惑った。
「どうした、バルトルト。面談なんてしゃらくさい、的に言っていたではないか」
ファルビンは思いっきり眉根に皺を寄せる。デニスはそれみたことか、とはしゃいだような表情だ。
「いや、やはり皇太子の家庭教師をやっていただけあるな。自分では謙遜しているが、あれは大した女性だ」
この言葉にはどよめきが生まれた。
というのも、バルトルトは女性蔑視なところがあって、女のくせに、女になんて……というのが口癖なのである。今の時代、そんな考えが一般的であるのであるが。
そんなバルトルトの口から、女性を尊敬したとでも思えるような発言が出ることは、今までなかったことだ。
「どうしたバルトルト、色仕掛けでもされたか?」
ハルトムートがからかうように言うが、バルトルトは応じるつもりはないようだった。
「今まで、俺は行くべき方向を間違っていたのかもしれない……」
「なにを言い出すんだ、バルバルト? どう言いくるめられた?」
エルマーはバルバルトの肩を揺するが、それもバルバルトは相手にしない。
「ヴァレリー様は、本気で俺たちのことを心配してくださっているんだ。それで俺たちひとりひとりに話を聞いてくださっている。本当は俺たちみたいな落ちこぼれの騎士の話なんて興味がないはずなのに」
「おーい、バルバルト? 催眠術でもかけられたか?」
エルマーは今度はバルバルトの目前で手を振って見せる。するとそれをデニスが止める。
「やめろって。本当にヴァレリー教官は素晴らしい人なんだってば!」
「そうなんだ。俺の話になんて、適当に相槌をうっていればいいのに、まるで実の母のように心配してくださった。……エルマー」
バルバルトはエルマーをびしっと指差した。
「疑うならば次はお前が行くがいい! きっと考えが変わるはずだ!」
「……いやいや、俺はお前達ほど単純じゃないし」
「いいから、行ってきたらいいよ! 俺たちがなにを言っているか分かるから」
デニスにもそう言われ、渋々、といったようにエルマーは立ち上がり、面談へと向かった。
そして面談から戻った後には『……俺はお前達のように単純ではないが、もしかしたらあの人なら信じてもいいかもしれない』と言うに至った。




