182:真珠のドレス
小説の最後に皆さんにアンケートを取りたいので最後まで読んでもらえると嬉しいので初投稿です。
続いて向かったのはオーストリアの服飾店だ。
オーストリアからは首都ウィーンなどからいくつものお店が出展をしている。
アクセサリーにドレス……果ては巨大なカツラまで展示されている。
その中でもとびっきり目立つのが船を髪の毛の上に乗せるものがあるんだよ。
何を言っているのか分からないとは思うが、文字通りの意味だ。
「噂には聞いていたが……実際に見てみると凄い髪型だねこれは……」
「えっと……本当にこれがオーストリアで流行しているのですか?」
「どうもそうみたい……去年のコンクールで入賞しましたってここに書いてあるよ」
この時代の主力戦艦である帆船フリゲート艦のミニチュアを波に見立てた髪の毛の上に乗せるんだ。
これらは「ベル・プル」……美しい雌鳥という意味合いで呼ばれていて、史実だとアメリカ独立戦争時にフランス海軍将校の奥様方がやり始めて流行したと言われているんだが……。
どうやら今現在流行しているのは別の理由らしい。
というのも、好景気によって貿易関係が活発化して各地域の商会連合は加盟店を増やし、人々は好景気の波に乗って諸外国にも好景気の趣旨を宣伝したようだ。
現在同盟を結んでいるオーストリアからは、出稼ぎ労働者の人達がやってきて働いている場所もあるぐらいだし、何よりもフランス・オーストリア双方で地中海での海洋貿易が活発化しているという。
そうした貿易で富を得ることが出来た大商人の奥様を中心に、海洋貿易の発展を願い商船の模型を波のように整えた髪の上に乗せる奇抜なヘアスタイルがオーストリアで流行しているという。
これらの奇抜すぎるヘアスタイルは「勝利船」という意味合いで沿岸部を中心に人気だという。
出展している店のオーナーはアントワネットにそう語った。
「元はコンクールで披露されて賞を取ったヘアスタイルだったそうですが……最近では上流階級向けのパーティーに行くと、このような髪型が受けるといって皆が真似をしているのですよ……」
「そ、そんなに……という事は……ウィーンの宮殿でも流行しているのかしら?」
「いえ、流石にテレジア女大公陛下はこうした奇抜な髪型を宮殿内で身につけることを禁じましたので……流石に宮殿でこの髪型をする人はいませんよ」
「そうよね……お母様がこの髪型で挨拶されたりでもしたら、きっと馬鹿にしているのかと思って怒るでしょうね……」
「むしろこれで大公主催のパーティーに出ようとするのは勇気がありすぎると思うぞ」
アントワネットは冷静に言っているが、史実ではウッキウキな気分で「ベル・プル」の髪型を披露し、披露宴や祝賀会でもやったそうだが、その事をテレジア女大公陛下が知るや否や、真っ先にテレジア女大公陛下はアントワネットに「こんな馬鹿げた装飾を施すような事はしてはいけません」と釘を刺した手紙を送っている。
うーん、今のアントワネットでこの奇抜すぎるヘアスタイルを披露されたら……俺なら多分笑ってしまうだろう。
大道芸人じゃないんだし、やはり元々可愛いんだから彼女に見合うシンプルさと、優雅さを兼ね備えたドレスを身につけてくれたほうが、俺個人としては一番萌えると思うね。ウン。
で、この船の模型を髪の毛の上に乗せるヘアスタイルがコンクールに出されると大うけしたらしく、賞を取ってしまった為に流行したというのが事の顛末だそうだ。
これが流行するってそれだけ儲けたってことなのかな?
どちらにしてもオーストリアも好景気らしく、経済的な豊かさと地中海の海洋貿易によって成功した事をアピールするためだという。
「オーストリアでは流行しているみたいだけど、こうした髪型をするのはそれだけ貴族だけでなく裕福な市民も多く真似しているのだろう?」
「ええ、陛下のおっしゃる通りです。最近では陛下の改革をオーストリアでも取り入れておりますから、それだけ大勢の人が改革による経済効果の恩恵を受けているのですよ」
「フランスだけではなく同盟国にも改革のメリットが活かせたようで何よりだね……」
経済が豊になった事で、それに見合うだけのファッションや装飾品が売れているのも納得がいく。
しかしこれ以外にも奇抜すぎる髪型もあるみたいだが、これを初めて考案してカツラにしようと思った人はどんな心境で作ったのか……?
すっごい派手だし目立つし、何よりも髪の毛の上に船の模型みたいなものまで乗せてしまうのは流石にセンスがぶっ飛んでいるとしか思えない。
こんなの普通のヘアスタイルじゃないわ!船の模型を髪の毛の上にポン付けしただけよ!
……心の中でそんな声が聞こえてきてしまうので、この奇抜すぎるヘアスタイルを避けた上でオーストリアのドレスを見ることにしたのだ。
「陛下、王妃様、こちらのドレスはいかがでしょうか?」
「ほぉ……これは中々いい感じの服だねぇ……大人しい感じの色合いがいいね。アントワネットはどう思う?」
「ええ、白色で……それでいて真珠のような模様を纏っているのがいいですねぇ……」
「はっ、こちらは地中海の真珠をイメージして作られたドレスでございます」
アントワネットはドレスを見てウットリとしている。
それだけこのドレスの質は高いと思っているし、何よりも本当にきめ細かな装飾に至っても糸がミシンのようにきちんと縫われているから凄まじい職人技と実感している。
オーストリアのドレスはフランス製のドレスに比べると、大人しい感じのものが多い。
今、目の前で展示されているドレスも白色ベースだが、上品で気品さを感じるようなデザインだ。
白と銀色の中間色といったほうがいいのかもしれない。
真珠を模した模様も施されているので、デザインの面でもそこまで奇抜ではない。
うーん、これならアントワネットに似合うんじゃないだろうか?
これなら一着あってもいいと思う。
「このドレスの生地はどこのものを使用しているんだい?」
「グラーツで作られたものを使っております。グラーツのドレス職人が1年以上掛けて仕上げたものでございます」
「1年も!それはスゴイな……この服は一着いくらだ?」
「はい、一着1000リーブルになります」
一着1000リーブル……。
先程の乗馬服よりも遥かに高い!
アントワネットが愛用している香水とか化粧品一式揃えるよりも高いねぇ……。
まぁ、それだけ職人技を駆使して産み出したドレスだと思えば安いのかもしれない。
職人が一年以上の時間リソースをこのドレスに集約させて作らせたと思えば、その分の手間賃やら費用などを含めれば1000リーブルは妥当な値段になるな。
これで高すぎるから安くしてくれなんて言えばケチ過ぎるからなぁ……。
笑われてしまうので、そう思っても心の中でしまっておくのがベストなものだ。
よく読んでいたネット小説のチート系主人公とかは、高級なドレスが高いと愚痴った上で、コピー能力を使って密かにドレスを勝手に複製してヒロインの女の子にプレゼントしていたけど、あれはれっきとした犯罪だと思うのよね。
どういう理論で複製しているのかは謎だが……物質転換でもしているのだろうか?
宇宙の法則乱れているし、ゲームでチートを使用してもいいのはオフライン状態に限る。
オンラインゲームでチートを悪用して不正行為を働いて他のプレイヤーに迷惑かけている奴らは害悪でしかないからね。
完全に話がフォアボール並に逸れてしまったが、このドレスを購入するかどうかアントワネットに尋ねる。
もし彼女が欲しいと言えば、買ってあげようと思う。
普段アントワネットにはお世話になりっぱなしだからね。
こうした機会でドレスの一着、二着を買う分であれば財政的にも問題はない。
「アントワネット……このドレス買ってみるかい?」
「そうですねぇ……肌触りもいいですし……それでいて、この模様はフランス製のドレスにはあまりないので珍しいですからねぇ……お願いしてもらってもよろしいでしょうか?」
「勿論!いいとも!」
「……ありがとうございます!それと、厚かましい要望なのですが、ランバル公妃やルイーズ・マリー夫人の分もこちらで購入したいのですが、よろしいでしょうか?」
「二人の分だね、いいよいいよ!遠慮せずに買いなさい!」
どうやらアントワネットは自分の分だけでなくランバル公妃やルイーズ・マリー夫人の分もプレゼントとして購入したいと要望を出したので、俺は承諾する。
三着分の金額は……2800リーブルとなったが、それでも史実のように衣装をドカ買いしないだけいいと思う。
このぐらいの出費なら問題ない。
企画した俺が言うのもなんだが、見本市も中々面白いもので溢れている。
衣装が大好きなアントワネットにとってみればここはまさに宝の山だろうね。
しかし、やはりブルボン宮殿では少々広さが狭いように感じる……。
次回はもっと大きな会場を借りようか……。
反省点を見出しつつも、この見本市で得られた事を今後の組織運営の経験として役立てることが出来るように会場で様々な衣装を見渡すのであった。
今後のアントワネットの髪型なんですけど、こういう髪型にしてほしいという希望があればコメントで残してください。
多分参考にします。