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四条杏里という一人の女は、見た目は上の中…一般的に美人だと言われる容姿をしていたが、彼女には、最悪の噂がある。
「尻軽女」「男を見ればすぐに股を開く」
杏里はこれを否定しないし、またこの噂は紛れもない真実であった。
「ちょっと、四条さん!この書類、また間違ってるわ!」
「あれぇ~~?おかしいなぁ。確認したのにぃ。ごめんなさい、やり直しまぁす。」
「…いい加減にしてちょうだい、わざとやってるんでしょ!あなた、社会人としての自覚が足りないんじゃない?」
「気を付けますぅ。」
「はぁ、まったく。早くやり直しなさいよ。」
杏里の仕事はパソコンを使って書類を作成したり、会社の給料を計算したりする、所謂事務職だ。
上司に怒られた杏里が口をへの字にして落ち込んでいると、
「また怒られたのか?」
同期であり、仲の良い男性が慰めるように杏里の頭に手を置く。
「そうなの。杏里ったらドジだからぁ…。」
「ドンマイ!でも、杏里はそこが可愛いんだからさ。課長もひどいよなあ。あんなに言うことないだろうに。杏里の可愛さに嫉妬してるんじゃないか?」
「えぇ~~杏里可愛くないよ?」
「可愛いだろ。まあ俺は夜の杏里の方がもっと可愛いと思うけどな。」
「もぉ、こんなところでやめてよっ!」
杏里が男の胸を恥ずかしげに叩く。男はしばらく叩かれていたが、やがて満足したように杏里の元を離れた。
照れたように顔を赤くし男を見送る杏里を、周りに居た女性は皆冷めた目で見つめていた。
その日の仕事も終わり、杏里が帰ろうとすると、先程とは別の男性が話しかけてくる。
「杏里ちゃん、お疲れ様!今日これから暇?」
「おつかれさまでぇす。暇ですよぉ。」
「お!じゃあせっかくの金曜日だしさ、飯でもどう?」
承諾すると、男はしまりのない顔をして杏里を車へと乗せる。
食事も済ませ男の家へと向かった。
朝になってから自室へと送り届けて貰い、一人になった杏里は大きなため息をついた。
「…疲れた。でもこれで大丈夫。そうだよね、お父さん?」
話しかけた先は、杏里と似た一人の男性の写真。どことなく軽薄そうな雰囲気が感じとれる。隣には同じ指輪をした妻であろう女性が並んでいた。
(んー、眠い。少し寝ようかな。今日は休みだし。)
着替えてベットに入る。徐々にぼうっとしていく頭に抗うことなく、眠りについた。




