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科学ダイアリー  作者: 四葉の科学者
第1章 存続危機編
3/3

第2話 科学部の行方

「科学部らしいこと、か」                             


田中部長は考え込んだ。

今まで見たことのない、真面目な顔で悩んでいる。


「俺に案があります。」


山崎は本をそっと机に置き、一つの段ボールを持ってきた。

その段ボールを組み立て、側面に穴を開ける。

壇上先輩は何かに気づいたように言った。                     


「空気砲で何をするつもりだ?」


山崎は無視を決め込み黙々と作業を続ける。

近くにあった線香に火をつけ、穴の空いたダンボーつの中に入れ、しばらく放置した。

5、6分ほど経ち、山崎は段ボールを持ち上げ、また授業準備をしている吉田先生に向かって撃った。


綺麗な煙の輪っかが勢いよく飛び出した。

それは空気抵抗を受けながらも形を保ち、化学実験室内を横断し、一直線に吉田先生の頭部へと向かっていく。

輪っかは吉田先生の頭をすり抜け、さらに奥の壁に当たり、ようやくその形を崩して散っていった。


「……おお」


吉田先生が、準備の手を止め、空中に散る煙を眺めた。

今までに見たことのないキラキラした目で天井を見上げている。


「成功ですね!」                                 


山崎は満足げに呟いた。


「すげー! 輪っかになった!」


湊が目を輝かせ、陽太も「おお、やるじゃん!」と感心した声を上げた。


「なるほど……!」                                 


田中部長が、山崎の作った空気砲を興味津々で覗き込む。              


「これを応用すれば、もっとすごいことができるぞ!」


部長の目が、また例の輝きを帯び始めた。

俺は、山崎の作ったシンプルな空気砲が、とんでもない方向に進化しそうな予感に、軽く目眩を覚えた。


「これをサイエンスショーとかでやったら良くないですかか?」                     


大橋が尋ねた。


「そうだな...」                                   


壇上先輩が顎に手を当てて言った。                        


「シンプルだが、確かにインパクトはある。科学に興味がない生徒に興味を持たせるには、ちょうどいいかもしれない」


「よし、じゃあ次は、『超巨大! 煙の輪っか大作戦!』だ!」            


田中部長が、早速ホワイトボードに書きなぐった。

その時だった。


「ごほん!」


実験室の隅から、低い咳払いが聞こえた。

吉田先生だ。

彼はゆっくりと立ち上がり、壁にかかった大きな時計に目をやった。既に短針は6を指し、長針は真上を向いている。


「そろそろ、部活の時間は終わりです。」


吉田先生の言葉に、実験室の活気に満ちた空気が、スッと冷静になった。

白石はすでにつらつらと数式を書き終えていた黒板消しを手に取り、山﨑は空気砲を片付け始めている。

藤井兄弟も、名残惜しそうに実験台から離れた。


「えー、もう終わりですか!?」                         

 

大橋が不満そうに声を上げた。


「明日も来るんだろ、アホ。」                            


山崎がぶっきらぼうに返す。


「興味を持つのはいいことですが、時間はしっかり守ってください。」                   


村上先生がいつの間にか、実験室の入口に立っていた。

彼の鋭い視線が、田中部長に向けられる。                                     

「予算削減を避けるためにも、計画的な活動は必須です。無駄な実験は控えるように。」


村上先生の言葉に、田中部長は肩をすくめる。                    


「うむむ……」


「でも、田中部長!」                               


俺は焦って言った。                               


「今日の空気砲、すごかったですよね! これなら、きっとみんな驚きます!」


「ああ、そうだな、佐藤。」                             


部長は俺の言葉に頷いた。彼の目は、まだ「超巨大煙の輪っか」の構想で輝いている。 


「よし! 明日は、この空気砲をさらに進化させるぞ! 山田、予算と材料の確保を頼む!」


「できるわけないだろ、この赤字で!」                      


山田先輩の悲鳴怒号が響いたが、部長はもう聞いていない。


「壇上先輩、また明日も来てくれますか?」                     


俺は壇上先輩に声をかけた。

「ああ、まあ、いいだろ」                             


壇上先輩は、少しだけ顔を綻ばせた。                        


「お前らと一緒に楽しむのも、たまには悪くない」


実験室の片付けを終え、俺たちは帰路についた。


キャラクター

佐藤さとう 悠真ゆうま:高校1年生、普通の部員、主人公

田中たなか 浩介こうすけ:高校2年生、現部長

山田やまだ 健太けんた:高校2年生、副部長

山崎やまさき りゅう:中学3年生、中学部長

大橋おおはし まさる:中学3年生、中学副部長

白石しらいし けい:中学3年生、天才肌の暴走科学部員

吉田よしだ さとる:物理担当、顧問(主顧問)

村上むらかみ さとし:数学担当、顧問(副顧問)

壇上だんじょう 啓介けいすけ:高校3年生、元部長

藤井ふじい 陽太ようた:高校1年生、非部員

藤井ふじい みなと:中学1年生、非部員

黒崎くろさき れん:中学3年生、問題児

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