第0話 部活動
ここは、日本でトップを争うほど偏差値が高い学園、東高日学園。
そんな学園に今年入学した俺、佐藤悠真は今、大変頭を抱えている。
「部長。このままだと本当に廃部になりますよ。」
薬品と古い埃が混じったような不思議な匂いが漂う化学実験室で、ゴゴゴ……と不気味なモーター音を響かせる奇妙な装置を眺めながら、うんざりした声で言った。
科学部に入部してから三ヶ月。
俺が期待していたような「白衣を着てフラスコを振る」という、想像していた科学部の姿はどこにもなかった。
そこにあったのは、古びた実験器具と、個性的すぎて「変人」の域に達している先輩や同級生。
「ん? ああ、その話か!」
俺の言葉に、田中浩介部長は「おお、よくぞ聞いてくれた!」とばかりに目を輝かせた。
彼は天才的なひらめきと、それに見合わない絶望的な不器用さを併せ持つ、科学部の現トップだ。
身長は悠真より頭一つ分高いが、普段の言動があまりにも子供っぽいため、部長の同級生の山田健太副部長が保護者のように常に彼の世話を焼いている。
部長が手に持っているのはどう見ても古びた掃除機のホースと、変な箱がくっついた謎の発明品。
それが時折、「ウィーン ガガッ」と壊れそうな音を立てている。
「これはな、佐藤!BIOトープ用の新しいポンプだ!これで今年度こそBIOトープコンクール予選突破して、科学部の存在価値をアピールするんだ!どうだ、素晴らしいだろう?」
「そんなことしてる暇があったら新入部員を増やす方法考えませんか?」
俺は疲れたようにため息を吐いた。
ポンプからは、焦げ臭いような、カビ臭いような、なんとも言えない異臭が漂っている。
科学実験室の隅では、中学生が別のことをしている。
中学校3年生の白石慧が、黒板によくわからない数式を延々と書き付けながらぶつぶつと独り言を呟いていた。
傍には、同じく中3の黒崎蓮が体育座りで漫画を読みながら、時折白石に冷めた視線を送っている。
さらにその隣では、中学部長の山崎琉が、分厚い理科の大辞典を読みながら眉間にシワを寄せ、中学副部長の大橋勝は、スマホゲームから目を離さずに、「部長、ポンプが必要なら買えば良くないですか?」と的外れな質問を投げかけている。
「ポンプを買える程うちの部活に部費はないぞ。」
山田副部長が、手元の書類から顔を上げずに呟いた。
彼の前には科学部予算書が広げられている。
俺は、このカオスな状況で、一体どうすれば良いのか途方に暮れた。
しかし、ふと視線を向けた窓から差し込む夕日が、実験器具のガラスにきらめくのを見て、かすかに楽しそうと思った。
キャラクター
佐藤 悠真:高校1年生、普通の部員、主人公
田中 浩介:高校2年生、高校部長
山田 健太:高校2年生、高校副部長
山崎 琉:中学3年生、中学部長
大橋 勝:中学3年生、中学副部長
白石 慧:中学3年生、天才肌の暴走科学部員
黒崎 蓮:中学3年生、問題児




