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狂愛ゾンビランド  作者: 溝野魅苑


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2/2

2.木下に食われて死のう。

※この話は、バッドエンド、ホラー、胸糞です。

朝ご飯を食べながら、どっかの国の大きな研究所から、何かの薬が漏れたというニュースを眺めていた数日後には、世界の八割の人がゾンビになってしまった。

極普通の人生を経て、極普通のサラリーマンになった、漫画や映画でいうところのモブである俺は案外あっさりとゾンビになってしまった。


ついこないだまで俺が毎朝パンを買っていた島に一軒しかないコンビニのおばちゃん、いつも乗るバスの運転手さん、俺が勤めてる島の特産品である干物会社のみんな、とにかく俺の住むこの島もゾンビだらけだ。みんな映画のゾンビのように青黒い腐った死肉の肌色になり、はみ出た腸や取れかけた四肢をぶらぶらさせてヴーアーと唸りながらウロウロしている。


なぜゾンビになったのに俺はそうなっていないのか?


それは、恋をしているからだ。


小学校から高校まで、特に芽は出なかったけど野球に取り組んでいた。別に野球なんか好きじゃなかった。


俺が好きだったのはチームを引っ張るエース、木下貢だった。


そう、俺はモブの癖にゲイだ。い

や、今は多様性の時代だ。モブだからと言ってゲイじゃダメなんてことはない。でも現実は手厳しい。小さな島で特に目立つこともない男がゲイだなんて受け入れられることはない。だからずっと気持ちは隠したまま、単なる野球チームのチームメイトとして12年間を過ごしてきた。


俺がモブなら木下は主人公だった。島で一番大きな網元の息子で、勉強もスポーツもできる、背も高く顔立ちも整っている。当然女の子達はみんな彼に恋をしていた。俺は彼女達と違い、万に一つも報われる可能性はないが、同性故に共に野球をする幼馴染として親しくするという特権を得ていた。

更に俺にはラッキーなことに、ここは小さな島で、高校も公立高校が一つあるだけ。特に強い希望がない奴らは、みんな同じ高校に通うことになる。お陰で高校の三年間も木下と同じ学校の同じ野球部になれた。

しかし、その先の進路となると、それぞれ複雑になってきてそうはいかない。俺は地元で就職を選んだが、進学組の木下は本土の大学に進むこととなり島を出て行った。


その後、木下は島に帰ってきたと風の便りで聞いたが、10年経った今でも一度も会っていない。


いつものように会社に行く途中、立ち寄ったコンビニでゾンビに襲われ、這々の体でリーチインクーラーに逃げ込んだが時既に遅く、遠のいた意識から目が覚めた時にはゾンビになっていた。とにかく人間を食べたいと言う気持ちがものすごくて、抗うと身体中の細胞が腐っていく痛みで気が狂いそうになる。それでも人間を食べることは生理的に無理で、俺は気を紛らわすために別のことを考えようと思った。


でも、何を考えたらいいんだ?


人間の三大欲求の一つとまで言われる食欲をどうやって抑えるか?三大欲求の別の一つをぶつければいい。そう考えて木下の事を考えた。幼馴染だから木下の裸も知っている。パッチリとした大きな目の中性的な顔立ちだけど野球をやってるだけのことはあり、肩幅が広くがっしりとしている。そして、けつがでかい。でかいと言っても女の子のそう言う感じではなく、けつにもしっかり筋肉がついていると言う感じ。俺は木下のけつを想像した。そのけつにつくチンチンが勃起するとどれくらいになるのかも。しかし一向にムラムラしない。ああ、そうか。性欲は生に直結しているから、もう死んでいる俺は抱くことができなくなったのかもしれない。

結局、俺は人を食ってヴーアーしたゾンビにもなれず、人間に戻ることもできず、ただ細胞の腐敗を感じているだけのモブだった。


本当に何者でもない存在で、このまま腐り果てて死ぬのか。


「そうだ。木下に会いに行こう。」


どうせ死ぬなら木下をこのゾンビだらけの島から逃がして死のう。もしもう木下がゾンビになってたら木下に食われて死のう。

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