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38 ファミレスで再会の勉強会

ファミレスの自動ドアを抜けると、奥の席に座っている二人の女子が目に入った。窓際の一番奥に座っているのが花園さんだ。その隣には、黒縁メガネに三つ編み姿の真面目そうな少女が、笑顔でこちらに手を振っている。


「お、誰だ?」


榊が小さく首を傾げる。


「星乃さんだよ」


僕がそう答えると、榊は驚いた顔で何度も彼女の姿を見返した。


「マジか、印象違いすぎて全然わからなかったわ……」


確かに、普段の星乃さんは華やかなモデルのオーラを振りまいているが、今日の地味な変装姿は、知らない人が見れば星乃さんだとは気づかないだろう。


角のテーブルで他の客からの視線が目立たない、勉強会にはちょうどいい席だった。


「じゃあ、まずは軽く自己紹介からしようか」


席に座ると、僕たちはまず自己紹介を始める。


最初に榊が少し照れながら口を開く。


「えーっと、榊 智也です。バスケ部所属で、悠真とは小学校からの幼馴染です。花園さんとは先週ちょっとだけ顔合わせたかな。あの時は助けてくれてありがとう」


花園さんは一瞬きょとんとしたが、すぐに「あぁ、あの時の……」と小さく微笑んだ。


続けて僕も簡単な自己紹介を済ませる。


「加賀崎 悠真です。今日は勉強会を企画させていただきました。よろしく」


花園さんが、控えめな笑顔で続く。


「花園桜です。みゆちゃんと同じクラスで親友です。今日は誘ってくれてありがとうございます」


最後に星乃さんが、眼鏡を軽く押し上げながら明るい口調で話す。


「星乃みゆです。あまり男の子と一緒にいるのがSNSとかに広まっちゃうと事務所に怒られちゃうから今日はいつもと違う格好をしているけど気にしないでね☆」


榊が思わず口を開きかける。


「しかしさすがモデル、地味な変装しててもかわーー」


咄嗟に僕は榊の脇腹を肘打ちした。


「ぐえっ……」


ジト目で睨みつけると、榊はハッとして目線だけで「すまん、気をつける」と伝えてきた。幸い花園さんは気づいていないようだ。


星乃さんは目を見開いて驚いた様子で頬を赤くしている。あの星乃さんでも、イケメンに褒められると照れるのだろうか? なんて考えていると、星乃さんが気を取り直してテーブルの上を示した。


「あ、ドリンクバーとシェアできそうな軽食を注文しといたよ。足りなければ好きなの頼んでね」


「ありがと。ドリンクバーは何がいい? 僕がとってくるよ」


僕がみんなに尋ねると、星乃さんが軽く手を挙げて僕に向き直る。


「加賀崎くん、私も手伝うよ」


「ありがとう」


花園さんがそんな星乃さんを優しく見守るように微笑んでいる。その視線には、何か含むところがありそうだった。


「じゃあ俺も手伝おうか?」


榊が気を利かせて声をかけると、星乃さんは首を横に振った。


「ううん、二人いれば大丈夫だよ」


そう言って立ち上がる星乃さんと共に、僕はドリンクバーへと向かう。いきなり榊と花園さんを二人きりにして大丈夫だろうか。


ドリンクバーの前に着くと、星乃さんが少し肩をすくめて僕を見上げた。


「さっきのって、もしかして〜☆ 嫉妬かな?」


ニヤリと意地悪そうな笑顔。どうやら、僕が榊を肘打ちしたところをしっかり見られていたらしい。


「へ? あ、いや……ほら、星乃さんの迷惑になるから、口説いたりナンパみたいなことするなよって言っておいただけだよ」


苦しい言い訳をすると、星乃さんは眼鏡の奥の瞳をキラキラさせて言った。


「へぇ☆ じゃあ、以前加賀崎くんがこの格好を見て私に言ったことは、口説きだったんだね?」


「え?」


瞬間、以前の自分の発言が頭をよぎる。


『地味な格好していても星乃さんは可愛いんだから』


「あ、いや、それは別に口説いたわけではなく……」


慌てて言葉を探していると、星乃さんは頬を染めて照れたような笑顔を浮かべている。


妙な空気に包まれて互いに言葉が詰まった。


「えっと……ドリンク入れて戻ろうか」


「そうだね……」


ふたり揃ってグラスを手に席へ戻ると、榊と花園さんはそれなりにいい雰囲気で話していた。


少しホッとしながらも、まだ少し熱い頬を感じつつ、僕は勉強会を始める準備をした。

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