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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
3章:囚われの民と雷鳴の姫君 〜目覚める龍の紋章〜

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第79話:生産都市の開墾

「これで、軍事都市の立ち上げが、本当に始まったんだね」


隣に立つアリシアが、俺の手にそっと自分の手を重ねてきた。その温かい体温が、俺の消耗した魔力を癒していくのを感じる。俺は彼女の髪を優しく撫で、大きく頷いた。


広大な荒野を完璧な建設予定地へと変貌させた——俺が持つ龍覚者の力の規格外ぶりを、ドラグニア抵抗軍の最高指導部たちに現実として突きつけたばかりだ。


セレスティーナ総長は、その驚愕を乗り越え、軍事最高責任者としての重責を謹んで拝受してくれた。彼女の即座の采配により、すでに兵の移動と初期防衛線の構築が始まっている。


しかし、立ち止まっている暇はない。三都市同時建設という壮大な目標を実現させるには、休息など許されないのだ。


俺たちは、軍事都市の建設予定地に残した転移門から、再び首都エルムヘイムの執務室へと転移した。アリシアとカイル、そしてティアーナが俺の周りを囲む。


「レンさん、お疲れ様です。魔力の消耗は大丈夫ですか?」


ティアーナが微細な魔力の流れを確認している。彼女の青い瞳は、既に次なる課題へと向かっていた。


「ああ、問題ない。膨大すぎる魔力量のおかげでな。それにしても、ティアーナ。君とゴードンさんの作った転移門は、本当にすばらしいな。数千の兵員を瞬時に移送できる。これこそが、この国造りの心臓だよ」


「ふふ、ありがとうございます。レンさんの転移魔法のデータを参考に、星脈鋼という特殊な金属を使った成果ですわ。ですが、立ち止まっている暇はありません。三都市同時進行を実現させるには、立ち止まる暇はありませんわ」


ティアーナの言葉通りだ。今、エルム公国に必要とされているのは、軍事力だけではない。数千の新たな民を抱えるこの国を、持続的に発展させるための生産力こそが急務だった。


「そうだな、ティアーナ。次は、生産都市の建設だ。だが、君にはもう少しエルムヘイムに残ってもらい、ゴードンさんと共に鉱山都市の建設に備えてほしい」


「承知いたしました。鉱山都市は、武具製造のための星脈鋼加工技術の確立、そして公国の技術的優位性を確立するための重要な拠点です。私とゴードンさんで素案を作成しておきます。」


ティアーナが力強く頷く。彼女の役割は明確だ。技術中枢として、次の都市の準備に入ってもらわなければならない。


「じゃあレン、生産都市には俺が同行するぜ。軍事都市の警備はイリスに任せてきたからな」


カイルが盾を構え、やる気に満ちた表情で言う。


「ああ、頼む。さて、カイル」


俺は執務室に広げた地図を指差した。緑豊かな広域。そこが、今回の生産都市の予定地だ。


「この生産都市は、軍事都市や、次に作る鉱山都市とは、その性質が大きく異なる。武具製造といった第二次産業は、鉱山都市と連携させるとして、この都市は食料生産と林業による資材供給という一次産業の基盤確立に特化させる」


「農業と林業がメインか。確かに、人口が増えた今、食料の安定供給は最優先事項だ」


カイルが真面目な顔で頷く。


そして、俺は隣に立つアリシアへと視線を向けた。


「アリシア。この生産都市の最高責任者を、君に任せたい」


「え……私、が?」


アリシアは目を丸くし、驚きに固まった。


「ああ。この都市は、単なる建設拠点じゃない。この公国の生命線となる場所だ。食料の安定供給、そして、何よりも衛生管理と住民の健康が最も重要となる。温室栽培で成果を上げ、清流珠の開発で衛生環境の改善に貢献し、そして何より誰よりも皆の健康を気遣う君以上の適任者はいない」


アリシアは、回復魔法と薬草の知識で村人の健康を支え、公国の生命線を守るという揺るぎない覚悟を持っている。彼女の献身的な優しさと、公衆衛生に対する懸念を持つ理知的な側面こそが、この都市の核となるべきだと思ったのだ。


「私に……そんな大役が務まるかな……」


アリシアが不安そうな顔で呟く。


「務まるさ。温室栽培のノウハウも、薬草師としての知識も、テラスさんの地力活性化の魔法と組み合わせれば、この広大な土地を最高の穀倉地帯に変えられる」


「テラスさんの地力活性化の魔法、あれはすごいもんな」


カイルが感心したように言う。


「それに、サポート体制も整える。農業開発の指導はテラスさんに、そして初期建設段階の防衛と警備は、セレスティーナ総長に相談して、彼女の配下の副官と兵士に任せることにした。君は、自分の得意分野に集中してくれればいい」


俺の言葉に、アリシアの目に、不安に代わって、決意の光が宿った。


「……うん! わかったわ、レン! 私、全力で頑張る! みんなが安心して暮らせるように、この都市を公国の豊かな心臓にしてみせる!」


彼女の笑顔は、いつも俺の心を温かく照らしてくれる。これで、生産都市の最高責任者が決まった。


執務室を出ようとした、その時だった。


「レン! 私も行く!」


小さな影が、俺の足元に駆け寄ってきた。フィーナだ。


彼女は、大きな青い瞳で俺を見上げ、その小さな体から、強い意志を感じさせた。


「フィーナか。今回は、資材を確保するための、結構ハードな作業になるぞ。危ないから、エルムヘイムでアリシアと留守番していてほしいんだが」


「いや! 私、レンと一緒に行くの! レンが、たくさんの人を助けたいって言うなら、私も手伝う!」


彼女の言葉には、迷いが一切ない。


「よし、分かった。フィーナも行くぞ。ただし、絶対に俺から離れるな」


「やったー!」


フィーナは歓声を上げ、小さな手を俺のローブにしっかりと絡ませた。



◇◇◇



「皆、しっかりと掴まってくれ。行くぞ、転移!」


俺は、手に持った転移門の一つを、フィーナ、アリシア、カイルと共に起動させた。強烈な空間の歪みと、一瞬の浮遊感。


光が収まり、俺たちが足を踏みしめたのは、湿った土の感触がする広大な土地だった。


「……ここが、生産都市の予定地か」


俺は周囲を見渡す。そこは、事前の情報通り、鬱蒼とした原生林に覆われてはいるが、地面には分厚い腐葉土が積み重なり、いかにも肥沃な土地であることを示している。そして、少し離れた場所からは、豊かな水源となる川のせせらぎが聞こえてきた。


「すごい、レン! 土の匂いが濃いね! これなら、作物がよく育つわ!」


アリシアが、土を一掴みして、目を輝かせた。


「ああ。まさに農業拠点に最適の土地だ。だが、この森を開墾するには……」


俺がそう呟いた、その時だった。


「グルルルル……!」


森の奥深くから、警戒音のような、低い唸り声が聞こえてきた。原生林の奥には、当然ながら凶暴な魔物が潜んでいる。建設が始まる前に、まず彼らのテリトリーからこの場所を確保しなければならない。


カイルがすぐに盾を構え、警戒態勢に入る。


「レン、来るぞ! 数は多くないが、強力な魔物の気配だ!」


俺も魔力感知を広げる。数体の肉食獣のような強力な魔物たちが、俺たちの存在に気づき、静かに包囲網を狭めようとしているのが分かった。


「ちっ、最初からこれか。アリシア、カイルは前線、俺が火魔法で……」


俺が魔法を発動させようとした、その矢先。


「……ん?」


俺は、自分の魔力感知に映る魔物たちの動きが、一斉に止まったことに気づいた。そして、魔物たちが感じていた警戒心や敵意が、突如として恐怖と退避の感情へと変貌していくのを捉えた。


その変化は、俺たちの足元で起こっていた。


「どうしたの、レン? フィーナ、私、何かした?」


フィーナが、不思議そうな顔で、俺とアリシアの顔を見上げる。彼女の小さな体からは、何の攻撃的な魔法の気配も感じられない。


だが、俺には分かった。


フィーナの周囲、特に大地を通じて、純粋で圧倒的な、竜のオーラが、波紋のように広がっていったのだ。


そのオーラは、意図的なものではない。竜の存在そのものが発する威圧感だ。魔物たちは、その圧倒的な「格」の差、そして本能的な恐怖に抗うことができず、一斉に逃走を開始したのだ。


「すげぇ……あっという間に、気配が遠ざかっていったぞ! おいレン、今の魔法か?」


カイルが、盾を下ろして驚きの声を上げる。


俺はフィーナを抱き上げ、頬を緩ませた。


「いや、フィーナの力だよ。どうやら、君は立っているだけで、外敵を寄せ付けない守りの結界を張れるらしいな」


「えへへ、レンのお役に立てた?」


フィーナは誇らしげに胸を張る。


「ああ。最高の働きだ、フィーナ。これで、初期の防衛隊が来るまで、作業員の安全は確保された。本当に助かったよ」


俺は、フィーナの頭を優しく撫でた。幼き竜の子の、意図せざる活躍のおかげで、公国の最も危険な初期段階の課題が、あっけなく解決してしまった。



◇◇◇



魔物の気配が消えた原生林の中、俺たちは建設予定地の中央へと移動した。



俺はアリシアと向かい合った。


「アリシア、改めて頼む。この生産都市の最高責任者として、君の持つ知識を全てこの地に注ぎ込んでほしい」


俺は、アリシアの手を両手で強く握りしめた。


「うん、レン。任せて。この肥沃な土地と、この川の水があれば、きっとできる。皆の命を支える、豊かな都市にしてみせるわ」


彼女の緑の瞳には、強い意志と、公衆衛生と福祉を担う者としての、責任感が宿っている。


「サポート体制を確認する。テラスさんは、ある程度この場所が整った後、転移門で到着する。君と協力して、地力活性化の魔法をこの広大な土地に施し、農業用地の生産効率を極限まで高めてほしい」


「テラスさんになら、安心して任せられる。彼の魔法は、大地に優しさを与えるものだもの」


「次に防衛だ。セレスティーナからの派遣部隊は、副官バルトロメオを筆頭に、精鋭兵200名だ。セレスティーナも彼らに協力するように頼んである。彼らには、テラスさんたちの農業作業中の護衛、拠点の設営、そして、周辺の治安維持を最優先で担当させる。彼らは、戦闘のプロではあるが、農業や林業の知識はない。現場の指揮は、あくまで君が執ってくれ」


「騎士団の副官を、私が指揮するなんて……緊張するけど、分かったわ。バルトロメオ殿には、皆の安全を確保してほしいって、しっかり伝える」


アリシアの顔には、迷いはない。彼女は、回復役として、そして俺の補佐役として、多くの指導者たちと関わってきた経験が、ここで生きている。


「それに、林業を担当する者たちもすぐに必要となる。ヘクターさんたち、熟練の木こりたちにも協力を仰ぐ必要があるな。建設資材の確保と、森の適切な管理。ここも、君の統括の下に置く」


一次産業を軌道に乗せる。それが、この公国の長期的な安定と、今後の軍事的な動きを支える基盤となる。



◇◇◇



責任者と役割分担が決まった。だが、最も重要な、広大な土地の開墾と、建設に必要な大量の資材(木材)の確保という課題が、まだ残っている。


「さて……いくら皆の協力があるとはいえ、この広さを人の手で開墾していたら、それこそ一年はかかるだろうな」


俺は、鬱蒼とした原生林を見上げて呟いた。この規模の原生林の伐採・整地を、常識的な手段で同時進行のスケジュールに組み込むのは不可能だ。


カイルが、ニヤリと笑う。


「ふん、レンがそんな常識的なことを言うはずねえだろ。さっさとやっちまえよ」


「カイルも一緒にやってくれよ」


俺は笑い返し、原生林の広大な範囲を、意識の中でマッピングし、必要な伐採と整地の区画を精密に線引きする。


(一気にやるぞ)


軍事都市の時と同様、俺は大地に両手をかざした。体内の魔力回路を駆け巡り、今回は土魔法だけでなく、風属性の術式へと、複雑に組み替えていく。


必要なのは、強烈なイメージと、それを実現するだけの魔力量と精密な魔力操作だけだ。

俺のイメージは一つ。


「不必要な樹木を根元から切り離し、材木として規格に合わせて積み上げる。そして、切り株と大地を均一に圧縮し、建物の基礎を置くのに十分な硬度を持たせる」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォ……!!


大地が再び、地響きと共に唸りを上げた。


俺の掌から溢れ出した魔力の奔流が、一瞬にして原生林の広大な範囲を覆い尽くす。


まるで巨大な見えない刃が、指定された区画の樹木全てを、一斉に根元から切り離していく。木々の悲鳴のような、甲高い音が響き渡る中、樹冠が揺れ、巨大な樹木が次々と、正確に計算された位置へと倒れていく。そして、倒れた樹木は、俺の風と土の複合魔法によって、幹の太さや種類別に選別され、あたかも巨大な工場で積み上げられたかのように、整然とした資材の山へと変貌していく。


カイルも一部、俺が逃した木材を運んでくれている。足場がまだグラついているのに器用なことである。


同時に、その切り株と土壌が、強烈な魔力で圧縮され、硬く、滑らかな開墾済みの土地へと整地されていく。同時に周囲に防壁を作り魔法で硬化させておいた。


凄まじい風圧と粉塵が舞い上がり、フィーナを抱いたアリシアが思わず目を細める。


数カ月かかるはずだった開墾、伐採、そして資材の選別という工程が、数時間で完了したのだ。


風と粉塵が収まった時、そこに広がっていたのは、緑豊かな原生林と、真新しい、広大な資材(木材)の山と、完璧に整地された土地基盤が共存する、光景だった。


俺は、一連の魔法を終え、大きく息を吐いた。


「おい、レン。すこし木材の移動を逃してたから運んどいたぞ」


カイルもこの状況に慣れたものである。


「これで、初期の建設に必要な木材資材は確保できた。あとは、テラスさんと合流し、農業用地の地力活性化に取り掛かるだけだ」



◇◇◇



俺は、整地されたばかりの土地の中心に首都エルムヘイムと直結する転移門を設置した。


これで、生産された資材や食料、そして住民の移動の物流が確保される。


そして、間もなくテラスさんと、セレスティーナ総長から派遣されたバルトロメオ副官と兵士たちが、転移門をくぐってこの地に降り立った。


「レン公王、こちらがバルトロメオです」


副官は、セレスティーナ総長に負けず劣らずの、非常に真面目な顔つきをした壮年の騎士だった。俺は彼に、アリシアがこの都市の最高責任者であること、そして彼らの役割が初期の防衛と警備であることを改めて伝えた。


「承知いたしました。アリシア様の指示に従い、建設期間中の安全を確保いたします。総長より、この都市の重要性は理解しております」


騎士らしい、揺るぎない決意が感じられる。これで、初期の防衛体制は万全だ。

そして、俺はテラスさんと向かい合った。


「テラスさん。この広大な土地を、公国の生命線となる穀倉地帯に変える。あなたの地力活性化の魔法と、寒さに強い麦の種 が、その鍵となります」


「レン公王、お任せください。この土の匂い、素晴らしいですぞ。私の魔法で、この大地をさらに柔らかな恵みの揺り籠に変えてみせましょう。アリシア様、ご指導のほど、よろしくお願いいたします」


テラスさんは、心から喜んでいるように見えた。故郷の種と、誇り高い魔法が、新たな国造りの礎となる。その事実に、彼の顔には希望が満ち溢れていた。


俺は、最高責任者として指示を出し始めたアリシアの傍らに寄り添った。


「まずは、農業区画を確定し、テラスさんの魔法で地力を高めていく。その間に、バルトロメオ副官の兵士たちに資材の周囲に防御柵を張ってもらう。アリシア、何か懸念点はあるか?」


アリシアは、テラスさんと地図を広げながら、俺に視線を向けた。


「あのね、レン。この都市の名前、アグリ・ヴィータにしない? ここは、私たちの命を育む、温かい場所であってほしいから」


彼女の提案は、この都市の役割と、彼女自身の優しさ、そして公国の未来への願いが込められた、素晴らしいものだった。


「ああ、いい名前だ。アリシアが最高責任者となるこの都市に、ふさわしい」


俺は、整地されたばかりの広大な土地を見渡す。そこには、アリシアの陽だまりのような優しさと、テラスさんの大地の魔法が融合し、新たな命を吹き込まれようとしていた。


軍事都市の建設は始まった。そして、この生命の源となる生産都市の建設も、今、軌道に乗った。


俺は、新たな決意を胸に、アリシアと共に、肥沃な大地の上を、公王として力強く歩き出すのだった。


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