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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
2章:星脈の鍛冶師と亡国の姫君 〜始原の森に集う新たな絆〜

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第46話:五人の絆

ティアーナが倒れてから、数刻が過ぎた。


俺の家の、一番日当たりの良い部屋。そこに静かに横たわる彼女の周りには、重く、そして出口の見えない絶望が漂っていた。


アリシアがつきっきりで看病を続けているが、ティアーナの顔色は蒼白なままで、その耳に浮かび上がった黒い蔓のような紋様は、僅かだが確実にその範囲を広げているように見えた。


俺は静かに立ち上がり、部屋にいる全員に向かって、固い決意を告げた。


「ティアーナは、俺が運びます」


その言葉に、全員の視線が俺に集中する。


「正気か、レン殿! 衰弱したティアーナ様を連れて、あの危険な森の奥へ向かうなど、無謀にもほどがある!」


リオンが、厳しく俺を諌めた。


「ええ、無謀でしょう。だから、ティアーナを歩かせるわけじゃない」


俺は、仲間たちの顔を順番に見回し、静かに、しかしはっきりと続けた。


「俺たちが先発隊として、先に『星涙の泉』へ向かいます。道中の危険を排除し、泉の安全を確保する。その後、俺の転移魔法で、ティアーナをこの部屋から直接、泉のほとりへと転移させるんです」


「確かに、レンの転移魔法なら……!」


「それしか、方法はないと思う」


俺は言った。


「俺の判断ミスが招いた事態だ。この責任は、俺が取る。カイル、アリシア、力を貸してくれないか?」


「当たり前だろ!」


カイルが、間髪入れずに叫んだ。


「そしてお前のせいじゃねえ! 俺たち全員の問題だ! ティアーナは、俺たちの仲間なんだからな!」


「うん……!」


アリシアも、涙を拭って力強く頷く。


「ティアーナさんを、絶対に助けよう! 私も、最後まで一緒に戦う!」


三人の間に、揺るぎない覚悟が満ちる。だが、その時だった。

部屋の入口に静かに立っていた影が、一歩前に進み出た。


「レン盟主。その唯一の希望である作戦、わたくしたちにも同行させていただけますか?」


凛とした声。そこに立っていたのは、オリヴィアだった。彼女の隣には、忠実な騎士イリスが、同じように真剣な眼差しでこちらを見据えている。


「オリヴィアさん……?」


アリシアが驚きの声を上げる。


「なぜ、あなたたちが……。」


俺が問いかけると、オリヴィアは静かに首を振った。


彼女は、もはや客人ではない、同盟者としての強い意志を込めて、理由を述べ始めた。


「ティアーナ殿は、我々が帝国と戦う上で、代わりのいない重要な存在です。彼女が持つ魔道具の知識と技術は、今後の我々の戦力を大きく左右するでしょう。彼女を失うことは、同盟にとって計り知れない戦略的損失です」


その言葉には、為政者としての冷静な計算があった。だが、彼女の瞳の奥には、それだけではない感情が揺らめいている。


そして、彼女は少しだけ表情を和らげ、眠るティアーナに優しい視線を送った。


「……それに、ティアーナ殿は、この村で初めてできた、わたくしの友人でもあります。友の危機に、黙って見ていることなどできません。これが最も大きな理由です。」


オリヴィアの言葉を引き継ぐように、イリスも一歩前に出て、完璧な騎士の礼で頭を下げた。


「レン盟主。姫様のおっしゃる通りです。そして、僭越ながら、戦力的な観点からも申し上げたい。この任務の危険度は、これまでのゴブリンや魔物との戦いとは比較にならないでしょう。皆様でも乗り越えられない試練が待ち受けているやもしれません」


彼女は顔を上げ、その鋭い瞳で俺を見据えた。


「王家に仕え、対人戦闘、対魔物戦闘、そして集団戦の訓練を積んできた騎士の剣技が、必ずや皆様の助けとなるはずです。どうか、我々の力を、仲間として頼ってください」


二人の真摯な申し出。それは、単なる同情や善意からくるものではなかった。同盟者としての責任、指導者としての戦術眼、そして友人としての熱い想い。その全てが込められた、覚悟の言葉だった。


俺は、カイルとアリシアの顔を見た。二人もまた、オリヴィアとイリスの覚悟を感じ取り、力強く頷いている。


俺は、二人に向き直り、深く頭を下げた。


「……ありがとう。あなたたちの覚悟、確かに受け取りました。ぜひ、力を貸してほしい」


こうして、エルム村の未来と、ティアーナの命運を懸けた、新たな先遣隊が結成された。

彼らの新たな戦いが、今、始まろうとしていた。



◇◇◇



出発の朝。エルム村の門の前は、静かな、しかし熱い祈りに満ちていた。


俺たち五人は、万全の準備を整え、仲間たちの前に立っていた。ゴードンが、夜通しでカイルの盾を補強し、イリスの剣を研ぎ澄ましてくれた。アリシアは考えうる限りの回復薬や解毒薬を調合した。俺のストレージは、それらの装備と物資で満たされている。


「レン殿、カイル、アリシア……そして、オリヴィア様、イリス殿。ティアーナ様のこと、頼んだぞ……!」


老エルフのリオンが、震える声で俺たちの手を握る。彼の後ろでは、他のエルフたちが、故郷に伝わる古の祈りを捧げていた。


「おう、任せとけ!」


カイルが、力強く胸を叩く。


「レン、これを」


「気をつけてな、レン! アリシアも、カイルも!」


「無茶だけはするんじゃないよ!」


ボルグやミーナさん、村人たちの温かい声援が、俺たちの背中を押す。


俺は、眠り続けるティアーナの部屋の窓を、もう一度だけ振り返った。


(待ってろ、ティアーナ。必ず、助けに行くからな)


心の中で強く誓い、俺は仲間たちに向き直った。


「よし、行こう!」


俺の号令一下、五人の先遣隊は、仲間たちの祈りを背に受け、転移魔法でシルヴァンの郷まで飛び、未知なる森の奥深くへと、その第一歩を踏み出した。



◇◇◇



シルヴァンの郷を越え、さらに奥へ。


森は、その様相を劇的に変えていた。木々は天を突くほどに巨大になり、地面はシダや苔に覆われ、空気は濃密なマナで満ちている。それは、神話の時代から人の手が加わっていない、原生林の姿だった。


「……すごい。こんな森、見たことない……」


アリシアが、畏敬の念を込めて呟く。


「ああ。だが、マナが濃い分、ここに住む魔物も桁違いに強いはずだ。全員、警戒を怠るな」


俺は魔力感知の範囲を最大まで広げ、慎重に進む。


そして、最初の試練はすぐに訪れた。


開けた谷間に差し掛かった時、地面を揺るがすような咆哮と共に、一体の巨大な魔物が姿を現したのだ。


それは、熊のような屈強な体に、鹿のような巨大な角、そして爬虫類のような硬い鱗を併せ持つ獣だった。体長は五メートルを超え、その目には原始的な凶暴性が宿っている。


「これは、エンシェント・グリズリー……! 古代種の魔獣……! まさか、こんな場所にまだ生き残りが……!」


オリヴィアが、王家の書物で得た知識からか、その名を叫び、戦慄する。


「来るぞ! カイル、イリス、前衛を頼む!」


俺の指示に、二人が即座に反応する。


「うおおおおっ!」


カイルが盾を構え、魔獣の突進を正面から受け止める! 轟音と共に地面が抉れるが、彼は歯を食いしばり、その巨体を押しとどめる!


「はあっ!」


その隙に、イリスが魔獣の側面へと回り込み、流れるような剣技で鱗の隙間を狙って斬りつける! キィン!と甲高い音を立てて火花が散るが、確実にダメージを与えている。彼女の剣捌きは、力で押すカイルとは対照的に、速さと技術で敵を翻弄する、洗練されたものだった。


「アリシア、回復と援護!」


「うん! ライトアロー!」


アリシアが光の矢を放ち、魔獣の目を狙撃して牽制する。


「オリヴィア、弱点はあるか!?なにか知っているようだったが!?」


俺は叫びながら、魔法の準備を整える。


「首筋の鱗が逆立っている部分! 古い書物いわく、おそらく、そこが急所です!」


前衛の二人が必死に魔獣を抑え込んでいるが、エンシェント・グリズリーの力は想像を絶していた。カイルの盾が軋み、イリスの剣が鱗に阻まれる。じりじりと、しかし確実に前線が押し込まれ始めていた。


「くそっ、こいつ、タフすぎるぜ!」


「わたくしに任せて!」


その時、オリヴィアの凛とした声が響いた。彼女は一歩前に出ると、その両手を天に掲げた。彼女の体から、金色の魔力が奔流となって溢れ出し、空に暗雲を呼び寄せる。


「王家に伝わる裁きの雷よ、我が声に応え、地を穢す不浄を滅せよ!」


詠唱と共に、雲間から一条の巨大な稲妻が迸る!


「サンダーランス!!」


ゴウッという轟音と共に、雷の槍がエンシェント・グリズリーの巨体を直撃した!


「グギャアアアアアアアアッ!!」


魔獣は、これまでにない苦痛の絶叫を上げた。雷撃を受けた体は激しく痙攣し、硬い鱗の一部が黒く焼け焦げ、砕け散っている。その動きが、完全に麻痺した!


「すごい……! これが、オリヴィアさんの魔法……!」


アリシアが息を呑む。


「今だ! 全員、総攻撃!」


俺の号令が飛ぶ!


「うおおおっ!」


「はあっ!」


カイルとイリスが、麻痺した魔獣に渾身の一撃を叩き込む!


「喰らえ! フレイム・ジャベリン!」


俺の放った炎の槍が、オリヴィアの雷撃で脆くなった鱗を貫き、エンシェント・グリズリーの急所を正確に捉えた!


「グオオオオオオオオオオッ!!」


最後の断末魔の叫びを上げ、古代の魔獣はゆっくりと大地に沈んでいった。


「はぁー。やったか……」


カイルが荒い息を吐く。


「見事な連携でした、カイル殿。あなたの防御力がなければ、持ちこたえられませんでした」


イリスも、額に汗を浮かべながら、カイルの強さを素直に称賛した。


「へへ……イリスさんこそ、すげえ剣だったぜ。あんな動き、見たことねえ」


二人の間には、戦士としての確かな信頼が芽生え始めていた。


「皆、お疲れ様。オリヴィア、見事な魔法だった。助かったよ」


俺が言うと、オリヴィアは少し息を切らしながらも、誇らしげに微笑んだ。


「当然です。わたくしも、同盟の一員ですから。ティアーナさんを救うためなら、この程度の力、幾らも惜しみませんわ」


強敵を打ち破ったことで、俺たち五人の間には、一つのチームとしての固い絆が確かに生まれていた。


だが聞く限り、『星涙の泉』への道は、まだ遠い。そして、その先には、これ以上の試練が待ち受けているに違いない。


俺は、倒した魔獣をストレージに収め、再び歩き始めた。


夜、焚き火を囲みながら、俺たちは今日の戦いを振り返り、明日の行程について話し合う。


アリシアが淹れてくれた温かい薬草茶が、疲れた体に染み渡る。カイルとイリスは、互いの武器や戦術について熱心に語り合っている。オリヴィアは、静かに地図を眺め、何かを思案している。


俺は、そんな仲間たちの姿を見ながら、改めて決意を固めた。


(必ず、ティアーナを助け出す。そして、この仲間たちと共に、エルム村へ帰るんだ)


空には、満天の星が輝いていた。その中の一つが、ひときわ強く輝き、まるで俺たちを導いているかのように見えた。


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