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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
5章:救世の龍覚者と導きの龍 〜始原の森へ続く英雄譚〜

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第152話:黄金の雫とドワーフの嘆き

復興作業は、驚くほど順調に進んでいた。


瓦礫の撤去は粗方片付き、新しい道路の舗装も始まっている。現場には悲壮感など微塵もなく、むしろ新しい街を作る活気と、心地よい疲労感が満ちていた。


そんなある日の、昼休憩のこと。


瓦礫撤去を担当するドワーフの班長、バリンが、配給されたジョッキを片手に、天を仰いで嘆いていた。


「あー……足りねえ」


彼の手にあるのは、キンキンに冷えたエール(麦酒)だ。アリシアの農業都市から直送された麦を使った、公国自慢の品である。


「どうした、バリン。エールならおかわり自由だぞ?」


俺が声をかけると、バリンは贅沢な悩み顔で振り返った。


「いや、味は最高なんですよ、公王様。ただなぁ……」


彼はジョッキを揺らし、琥珀色の液体を見つめる。


「こいつは『水』みたいにスルスル入っちまうんです。喉の渇きは癒せても、魂の乾きまでは癒せねえというか……」


「魂の乾き?」


「へい。俺たちドワーフの古い伝承に、『火酒カシュ』ってのがありましてね」


バリンが遠い目をする。


「なんでも、一口飲めば火を吹くほど熱く、一樽分のエールの魂が詰まった『幻の酒』だとか。……あーあ、一度でいいから飲んでみてぇもんです。腹がタプタプになるエールじゃなくて、こう、ガツン! と脳天に響くヤツを!」


「わかる!」


「俺もじいちゃんから聞いたことあるぜ!」


周囲のドワーフたちが、一斉に同意する。どうやら彼らは、「強い酒」を飲んだことがあるわけではなく、種族としての本能的な渇望と、御伽噺としての憧れを持っているようだ。  


頑丈すぎる肝臓を持つ彼らにとって、エールで泥酔するのは物理的に困難(その前に腹がパンクする)なのだろう。


「なるほどな。伝説の火酒、か」


俺は苦笑する。


伝承の内容を聞く限り、それは間違いなく「蒸留酒」のことだ。かつて古代文明には存在した技術なのかもしれない。


「よし。……いっちょ、その『幻』を再現してみるか」


彼らの働きには報いてやりたい。俺は袖をまくり上げ、立ち上がった。



◇◇◇



「おーい、お前ら! ちょっと面白いものを見せてやる」


俺が声をかけると、ドワーフたちが興味津々で集まってくる。


「公王様、何始めるんです?」


「お前らが夢見ている『ガツンとくるヤツ』を作ってやるよ。……じゃあバリン! ちょっと手を貸してくれ」


瓦礫の中から集めてきた銅パイプや寸胴鍋、密閉できそうな金属容器を並べる。


「なんだい、公王様?」


「この蓋に穴を開けて、パイプを繋いでくれ。隙間がないように密閉して、パイプは冷却水を通すために螺旋状に曲げてほしい」


俺が地面に簡単な図を描いて説明すると、バリンはニカっと笑った。


「へっ、訳もねえ! 任せてくだせぇ!」


カンカンカンッ!


小気味よいハンマーの音が響く。俺には錬金術のような便利な魔法は使えないが、この国には世界一の職人たちがいる。魔法のような速さと正確さで金属が加工され、あっという間に俺の注文通りの装置が組み上がった。


密閉された鍋から螺旋状のパイプが伸びる、即席の「蒸留器ランビキ」の完成だ。


「こいつに、余っているエールを入れる」


俺はバリンたちから樽を受け取り、なみなみと注ぎ込んだ。そして、魔石コンロで加熱を始める。


「いいか、よく聞けよ。この樽一本分のエールを使って、『火酒』を作る。ただし、量は十分の一以下に減っちまう。……それでもいいか?」


「十分の一!? そりゃあ勿体ねえ!」


ドワーフの一人が声を上げるが、バリンは俺の意図を察したのか、ゴクリと喉を鳴らした。


「……へっ、面白ぇ。量より質ってやつですか。伝説が拝めるなら、安いもんだ!」


「交渉成立だな」


鍋が温まると、やがてパイプの先から、ポタ……ポタ……と、無色透明な液体が滴り落ちてきた。


漂ってくるのは、エールとは比較にならないほど鋭烈な、アルコールの芳香。


「うおっ……すげえ匂いだ」


「鼻の奥がツンとするぜ。こいつはただの水じゃねえぞ」


「さあ、毒見役はお前だ、バリン」


俺は抽出された液体が溜まったカップを渡した。


量は少ない。一口分しかない。


バリンは恐る恐るカップを口に運び、クッと煽った。


瞬間。


バリンが顔を真っ赤にした。目から涙が出ている。


「お、おいバリン! 大丈夫か!?」


仲間たちが心配する中、バリンは自分の喉を押さえ、わなわなと震えながら叫んだ。


「――ぐ、おおおおおおッ!! 喉が! 喉が焼けるッ!!」


「ええっ!?」


「だ、だが……!!」


バリンはカッと目を見開き、満面の笑みを浮かべた。


「身体の芯から、熱が爆発しやがった! 間違いねえ、こいつは伝承にあった……『火酒』だ!!」


「なんだと!?」


ドワーフたちが我先にとカップに群がる。次々と上がる「カハッ!」「効くぅー!」という悲鳴と歓喜の声。


俺が作ったのは、度数40度越えの蒸留酒。量は減ったが、その分「酔い」と「旨味」が凝縮されている。


御伽噺だと諦めていた「伝説の酒」が、今、彼らの喉を焼いているのだ。


「すげぇ! ほんの一口で目が覚めたぞ!」


「腹がカッカしてきやがる! これなら午後も百人力だ!」


ドワーフたちは狂喜乱舞し、即席の宴会が始まりそうな勢いだ。



◇◇◇



「何事だ、この騒ぎは」


 そこへ、工房からゴードンがやってきた。彼もまた、ドワーフ族の長老的存在だ。


「お、親方! 公王様がとんでもねぇ酒を作りやがったんです! あの『火酒』ですよ!」


部下からカップを渡されたゴードンは、香りを嗅ぎ、一口含んで唸った。


「……ほう。蒸留、と言ったか。確かに純度は高いが、ちと荒々しすぎるな」


さすがはゴードン。味にはうるさい。作りたての蒸留酒は、アルコールの角が立っていて飲みづらいのだ。


「ああ。ここから寝かせればまろやかになるんだが、今は即席だからな」


「寝かせる、か……」


ゴードンは髭を撫で、ニヤリと笑った。


「レン。俺が作った『千年樹の樽』が余ってるんだが、そいつにこいつを詰めて、しばらく置いてみたらどうなる?」


「! ……それは、面白そうだな」


俺の知識と、ゴードンの職人技術。  二つのピースが、カチリとハマった音がした。


樽の香りが移り、琥珀色に熟成された蒸留酒。  それは間違いなく、この世界の酒文化をひっくり返す「名酒」になるだろう。


「よし、決まりだ! エールの一部を蒸留して『火酒』にする! 今はこいつでパーッとやって、残りは樽詰めにして、復興完了の祝い酒に育てようじゃないか!」


「「おおおおおッ!!」」


ドワーフたちの雄叫びが、空に響き渡った。


こうして、後に大陸全土で愛されることになる伝説の名酒――『龍の息吹ドラゴン・ブレス』の原点が、この瓦礫の中で誕生したのだった。

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