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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第135話:アイギス・フォート防衛戦(後編) - 双つの剣

ドゴォォォォォォォンッ!!


鼓膜を破るような轟音と共に、石畳が爆ぜた。


「がはっ……!?」


リゼットの苦悶の声が、土煙の中に消える。


“獣王”グラッフが振り下ろした戦斧の一撃。


それは、とっさに防御態勢をとったリゼットの大斧ごと、彼女を地面深くに叩き伏せるほどのデタラメな威力だった。


足元の石畳がクレーターのように陥没する。


リゼットは衝撃で内臓を揺さぶられ、口から鮮血を吐き出した。


陥没した穴の中で、指一本動かせない。


「リゼット!」


カイルが叫び、駆け寄ろうとする。


だが、彼の行く手を、肉の壁が阻んだ。


「グルァァァッ!!」


グラッフの親衛隊である、全身を鎧で固めた重装オークたちだ。


それらが数体、あるじの狩りを邪魔させまいと、カイルの周りを取り囲んでいたのだ。


「どけぇぇッ! 邪魔だァッ!!」


カイルは風を纏ったシールドバッシュで、正面のオークを吹き飛ばす。


だが、分厚い肉の壁をこじ開けるには、わずかな時間が必要だった。


その、ほんの数秒のタイムラグが、致命的だった。


グラッフは残虐な笑みを浮かべ、陥没した地面で動けないリゼットを見下ろしていた。


「ふん、口ほどにもない。まずは貴様からだ! 挽肉になれ!」


グラッフが、血に濡れた巨大な戦斧を、再び頭上へと振り上げる。


「させませんッ!!」


裂帛の気合と共に、イリスが叫んだ。


彼女は親衛隊の隙間を縫うように身軽に疾走し、カイルより一瞬早く、グラッフの懐へと滑り込んだ。


(間に合って……!)


彼女はリゼットを庇うように、グラッフの前に立ちはだかる。


手には、愛用の白銀の騎士剣。


対するは、城壁をも砕く破壊の戦斧。


「死ねぇぇぇッ!!」


暴風のような圧と共に、戦斧が振り下ろされる。


イリスは剣を掲げ、全身全霊の魔力障壁を展開して受け止めた。


ガギィィィィンッ!!


火花が散り、耳をつんざく金属音が響く。


「くぅっ……!!」


イリスの膝が、ミシミシと音を立てて折れ曲がる。


重い。


まるで山そのものが落ちてきたかのような、圧倒的な質量。


剣の刀身がきしみ、魔力障壁が悲鳴を上げてひび割れていく。


(重い……! 骨が砕ける……!)


グラッフの膂力は、彼女の想像を遥かに超えていた。


押し潰される。


このままでは、私も、リゼットも……!


(でも、退くわけにはいかない! 私が耐えなければ、リゼットが死ぬ!)


イリスは歯を食いしばり、目を見開いた。


死の恐怖が、冷たい刃となって心臓に突きつけられる。


だが、彼女は一歩も引かなかった。


友人として、騎士として、ここで引くことはできない。


ピキッ。


愛剣に亀裂が走り、限界を告げる音がした。


「終わりだァァァッ!!」


グラッフが勝利を確信し、さらに力を込める。


その時だった。


ドガァァァァンッ!!


横から、緑色の疾風がグラッフの戦斧に激突した。


「俺の仲間に……手ぇ出してんじゃねえぇぇッ!!」


カイルだ。


彼は親衛隊を強引に突破し、限界を超えた風の魔法剣を盾に纏わせ、全身全霊のタックル(シールドバッシュ)で、グラッフの戦斧を横から強引に弾き返したのだ。


ギィィィンッ!!


金属が擦れ合う不快な音と共に、戦斧の軌道が逸れ、地面を大きく抉った。


「ぬっ!?」


グラッフが体勢を崩す。


強引な突撃の反動で、カイルの盾を持つ腕が痺れ、苦痛に顔が歪むが、彼は痛みを無視してイリスの隣に並び立った。


「カイル殿……!」


イリスが呆然と見上げる。


カイルは荒い息を吐きながら、乱暴に汗を拭った。


「イリス! 立て! 今は俺が支える!」


彼の瞳は燃えるように熱く、真っ直ぐに前を見据えていた。


「……二人でこいつをぶっ飛ばすぞ!」


その言葉と、隣に立つ頼もしい存在感に、イリスの迷いは消え失せた。


「……はいっ!」


彼女は力強く立ち上がり、剣を構え直す。


二人は肩を並べ、眼前の“獣王”を睨み据えた。


「参りましょう、カイル殿! 私たちの力、お見せしましょう!」


「おうよ!」


二人の体から、魔力が溢れ出す。


互いを意識する恥じらいや遠慮といった迷いは消え、同じ敵に向かって力を合わせる意志が完全に共鳴する。


「小賢しいわッ! 纏めてひねり潰してくれる!」


グラッフが咆哮し、戦斧を旋回させて突進してくる。


「来るぞ!」


カイルが前に出る。


「オラァッ!」


グラッフの横薙ぎの一撃を、カイルが盾で受け流す。


衝撃を風の膜で逸らし、カイルは踏ん張る。


その隙を突き、イリスが駆ける。


「はぁっ!」


彼女の騎士剣が、闇の残像を描いてグラッフの脇腹を狙う。


「甘い!」


グラッフは巨体に見合わぬ反応速度で戦斧の柄を返し、イリスの攻撃を防ぐ。


だが、そこには既にカイルが肉薄していた。


「こっちだ!」


カイルの剣が、風の刃となってグラッフの顔面を襲う。


「ぬんッ!」


グラッフは腕でそれをガードするが、風の刃は剛毛を切り裂き、浅い傷を負わせる。


「チッ……ちょこまかと!」


グラッフが剛腕を振るい、カイルとイリスを同時に吹き飛ばそうとする。


二人はアイコンタクト一つで左右に散開し、攻撃を回避する。


そして、着地と同時に再び突っ込む。


カイルが敵の注意を引きつけ、正面から攻撃を受け止める絶対的な「盾」となり。

イリスがその死角から、鋭い刺突を繰り出す必殺の「矛」となる。


ガギンッ! キィンッ! ドガッ!


激しい金属音と魔力の光が交錯する。


攻防は数合、数十合と続いた。


「……いける!」


イリスが確信する。


グラッフの動きは見切れている。二人の連携は完璧だ。このまま畳み掛ければ……!


だが。


「……ククク。面白い」


グラッフの喉の奥から、不気味な笑い声が漏れた。


「人間風情が、この俺をここまで楽しませるとはな……。褒めてやろう」


グラッフの全身の筋肉が、異様な音を立てて膨張し始めた。


ビキビキビキッ……!


「なっ……!?」


カイルが目を見開く。


グラッフの体毛が逆立ち、その瞳が血の色よりも濃い、どす黒い真紅へと染まっていく。


彼の首にかけられていた、巨大な魔石のネックレスが砕け散った。


それは、彼の力を「抑えていた」枷だったのだ。


「だが、遊びは終わりだ。……見せてやろう。『獣王』の真の力を!!」


ドオオオオオオオォォォンッ!!


グラッフを中心に、赤黒い魔力の爆風が巻き起こる。


それは、単なる魔力強化などではなかった。


生物としての枠組みを超えた、強制進化。


「グオオオオオオオオオッ!!」


咆哮一閃。


ただの叫び声が衝撃波となり、カイルとイリスを吹き飛ばした。


「ぐわぁっ!?」


「くぅっ!」


二人は地面を転がり、何とか受け身を取って立ち上がる。


だが、目の前の光景に息を呑んだ。


そこにいたのは、一回り以上巨大化した、異形の怪物だった。


筋肉は鋼鉄のように硬化し、戦斧には禍々しい真紅のオーラが纏わりついている。


「ここからは……狩りの時間だ」


グラッフが動いた。


速い。あの巨体でありながら、まるで風のように肉薄してくる。


「カイル殿、来ますッ!!」


イリスの叫び声。


だが、カイルの目は敵の動きを捉えていた。


これまでの死闘で研ぎ澄まされた感覚が、グラッフの動きをギリギリで追っている。


「おらぁぁぁッ!」


カイルは全力で盾を構え、グラッフの突撃に合わせた。


ズガァァァァァンッ!!


「ぐぉおおおっ……!?」


これまであらゆる攻撃を防いできた風の盾が、悲鳴のような金属音を上げる。


その衝撃でカイルの体が砲弾のように弾き飛ばされた。


城壁に激突し、瓦礫が舞う。


「カイル殿!」


イリスが駆け寄ろうとするが、その目前にグラッフが立ちはだかる。


「よそ見か? 女」


「しまっ……!」


剛腕が振るわれる。


イリスは剣で受け止めるが、その衝撃は先ほどまでの比ではなかった。


「ぐぅっ……!」


剣が手から弾き飛ばされ、イリスは地面に叩きつけられる。


「終わりだ」


グラッフが戦斧を振り上げる。


カイルは瓦礫の中で動けない。イリスも武器を失った。


絶体絶命。


圧倒的な力の差。絶望が心を塗りつぶそうとする。


だが。


「……まだだ!」


カイルが、血を吐きながら立ち上がった。その手には、盾がまだ握られている。


「カイル殿……逃げてください……!」


「逃げる? 誰がだ?」


カイルはニヤリと笑った。口元は血だらけだが、その目は死んでいない。


「俺は……『盾』だ。お前を守るって、決めたんだよ!」


カイルの全身から、再び緑色の魔力が噴き出す。


それは、限界を超えて生命力を燃やす、決死の輝き。


「イリス! 剣を拾え! 俺がコイツを止める! その一瞬に、全部賭けろ!」


「……ッ!」


イリスの胸に、熱いものがこみ上げる。


恐怖など、もうない。


あるのは、この男と共に、勝利を掴むという覚悟だけ。


「……はいっ!!」


イリスが叫び、弾き飛ばされた剣へと走る。


「小賢しいわぁぁぁッ!!」


グラッフがカイルへ向けて戦斧を振り下ろす。


「うおおおおおおおおっ!!」


カイルは避けない。


全ての魔力をひしゃげた盾の一点に集中させ、真正面から突っ込んだ。


ドゴォォォォォォォンッ!!


凄まじい衝撃が走る。


カイルの腕から、骨がきしむ嫌な音が響く。


だが、彼は止まらなかった。


盾ごと、グラッフの懐に強引にねじ込み、その動きを止めたのだ。


「今だぁぁぁッ! イリスゥゥゥッ!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


イリスが跳んだ。


カイルが作った、最初で最後の一瞬の隙。


彼女の白銀の剣に、自身の全魔力と、カイルから流れ込んでくる風の魔力が収束する。


(合わせます……カイル殿に!)


(頼んだぜ……イリス!)


二人の呼吸が、完全に重なった。


闇と風が混じり合い、黒き嵐となる。


「【双牙・旋風ツイン・サイクロン】!!」


イリスの剣が、グラッフの首筋、魔力の防護が最も薄い一点を貫いた。


ズシュッ!!


「な……馬鹿……な……」


グラッフの動きが止まる。


赤黒いオーラが霧散し、その瞳から光が消えていく。


「この……俺が……人間……ごとき……に……」


ドサァッ……。


地響きと共に、巨星が堕ちた。


静寂が戻る。


「はぁ……はぁ……」


カイルはその場に大の字に倒れ込み、イリスはその場に膝をついた。


ボロボロの二人。だが、その顔には勝利の笑みが浮かんでいた。


「……やったな、イリス」


「はい……カイル殿……」


二人は互いの手をしっかりと握りしめ、そして意識を手放した。


最強の敵を打ち破ったのは、二人の絆が生んだ奇跡の一撃だった。

「面白かった」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後はどうなるの?」


と思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をよろしくお願いいたします。


面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで勿論、大丈夫です!

皆さんの応援が、本当に作品を書く、モチベーションに繋がります。


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

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