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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第128話:山脈を穿つもの

首都エルムヘイム、公王執務室。


窓の外では、東の空が白み始めていた。


長く、静かな夜が明けようとしている。


昨夜、仲間たちと短いながらも温かい時間を過ごした俺は、十分な休息を取り、冴え渡る頭で朝を迎えていた。


朝焼けが街を黄金色に染めていく。


かつては俺と少数の側近だけで作戦を練っていたこの執務室も、国が大きくなるにつれて役割を変えている。


今は、俺が最終決断を下すための、静謐な思考の場だ。


だが、孤独ではない。


執務室の重厚な扉を隔てた、すぐ隣の部屋。


かつては大会議室だったその場所は、『総合情報管制室』へと改装されていた。


そこには、ティアーナが選抜した若手魔導士たちによる『情報解析班』が詰めている。


彼らは今この瞬間も、交代制で監視を行い、国境線に打ち込まれた『広域監視結界杭ボーダー・センサー』から送られてくる膨大な波形データを解析し続けているはずだ。


(……静かだな)


俺は玉座に深く腰掛け、壁の向こうの気配を感じていた。


聞こえてくるのは、微かな魔導機器の駆動音と、彼らが忙しなく行き来する足音の振動だけ。


張り詰めた空気。


だが、それは恐怖によるものではない。


自分たちの仕事が、この国の安眠を守っているという、プロフェッショナルな緊張感だ。


俺が直接、神経をすり減らして【マッピング】を展開し続けなくても、彼らが、そしてシステムが国を守っている。


その事実が、指揮官としての俺に、冷静な余裕を与えていた。


だが。


その静寂は、朝霧と共に唐突に破られた。


ジリリリリリリリリッ――!!


隣室から、鼓膜をつんざくような警報音が鳴り響く。


同時に、執務室のデスクに置かれた『直通通信魔石』が激しく明滅した。


「公王陛下! 報告します!!」


通信魔石から、解析班長の切迫した声が飛び込んでくる。


「北東の山脈地下セクターにて、大規模な異常震動を感知! 波形パターン、自然地震と一致しません!」


俺は弾かれたように立ち上がり、通信魔石を掴んだ。


「状況はどうなっている!」


「こ、これは……人工的な掘削音です! 何者かが、地中を掘り進んでこちら側へ接近しています!」


(……来たか)


俺は、眉一つ動かさず、しかし鋭い眼光で窓の外の北東の方角を見据えた。


朝焼けに染まり始めた空の下。


育てた『組織』が、敵の奇襲を完全に捉えてくれた。


「地下からのトンネル開通か。 ……やはり、そう来たか」


俺は静かに呟き、マントを翻して扉へと向かった。


「映像を出せ! 『遠見の水晶』、リンク!」


俺が叫ぶと同時に、執務室の中空に巨大なホログラム映像が投影された。


隣の管制室が、現地の映像を転送してきたのだ。


映し出されたのは、朝霧に煙る北東の山脈。


その岩肌が、内側から不自然に隆起していく。


ズズズズズズ……ッ!!


映像越しでも伝わるほどの、凄まじい地響き。


そして。


ドゴォォォォォンッ!!


山肌が爆ぜた。


舞い上がる土煙と雪煙が、朝日に照らされて黄金色に輝く。


だが、そこから現れたのは希望の光ではない。


その煙幕を切り裂いて現れたのは、回転する巨大な『鋼鉄の螺旋』だった。


「な……っ!?」


報告を聞いて駆けつけてきたアルバート卿が、入り口で息を呑む。


それは、先端に凶悪なドリルを備えた、帝国の超大型魔導兵器――『魔導掘削戦艦』だった。


黒い魔力を噴出しながら、公国を隔てていた天然の要害である岩盤を、まるで豆腐のように食い破っていた。


(……皮肉なもんだな)


俺は、その光景を冷徹に見つめていた。


かつて俺も、この閉ざされた山脈に、魔法でトンネルを穿った。


外の世界へ出るために。


仲間と生きる道を切り拓くために。


(俺たちが生きるために行った『開拓』を……奴らは『侵略』のために使いやがるのか)


同じ手段。


だが、そこに込められた意志は真逆だ。


「なんと……! 山を越えるのではなく、掘り抜いてくるとは……!」


アルバート卿が、戦慄した声を上げる。


「あのような質量の鉄塊で攻め込まれては、都市の防壁など紙細工も同然ですぞ! 公王陛下、すぐに迎撃を!」


「待て、アルバート卿」


俺は、モニターの一点を凝視したまま制止した。


「……様子がおかしい」


公国の領土に顔を出したその巨大なドリルは、不気味な排気音と共に、唐突にその動きを止めたのだ。


プシューーーッ……。


黒い煙を吐き出し、ドリルの回転が停止する。


まるで、役目を終えて息絶えた獣のように。


「止まった……? 故障か?」


「いや、違う」


俺は、敵の狙いを悟り、拳を握りしめた。


「あれはただの『削孔機ドリル』だ。 山を貫くためだけの、使い捨ての道具に過ぎない」


「つ、使い捨て……ですと!? あれほどの巨大兵器を!?」


「ああ。……見ろ」


俺が指差した先。


沈黙した掘削戦艦のハッチが、音を立てて開放された。


だが、真の脅威は、その戦艦から出てくる兵士たちではなかった。


戦艦の後ろ。


今しがた穿たれたばかりの、巨大なトンネルの闇の奥。


そこから、地響きのような音が聞こえてきた。


ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……!!


それは、数千、数万の軍靴が地面を叩く音。


「嘘……でしょう……?」


通信越しに、解析班の誰かが呟いた声が漏れた。


トンネルの闇から、無限に湧き出すかのように、帝国軍の主力部隊が姿を現したのだ。


重装歩兵、魔導兵器、魔獣。


まるでせきを切った濁流のように、兵士の列が公国の大地へと流れ込んでくる。


朝日に照らされた雪原が、瞬く間に黒い波で埋め尽くされていく。


(機械に頼るんじゃない。……最後は『数』で押し潰す気か)


なんという物量。


なんという執念。


巨大なドリル戦艦すら「道を作るための道具」として乗り捨てる、帝国の底なしの国力。


地上に溢れ出した帝国軍は、指揮官の号令と共に、迷うことなく三つの集団に分かれ始めた。


その動きには、一糸の乱れもない。


俺はモニター上の動きを目で追い、脳内の地図と照らし合わせる。


その進路は、公国が誇る三つの主要都市へと、定規で引いたように正確に向けられていた。


「……予測通りだ」


俺は、焦燥を押し殺し、冷静に告げた。


「奴らは我々の主要三都市を同時に叩くつもりだ」


第一陣は、東の技術都市『グラニット・ベース』へ。


第二陣は、南の生産都市『アグリ・ヴィータ』へ。


第三陣は、西の軍事都市『アイギス・フォート』へ。


「分散攻撃による、各個撃破……。 こちらの戦力を分断し、孤立させた都市を数で圧殺する気ですね」


アルバート卿が、脂汗を流しながら呻く。


想定内のシナリオだ。


「総員、配置につけ!」


俺の声が、通信魔石を通じて全軍に響き渡る。


「敵の狙いは分散攻撃だ。 だが、それは……こちらの戦力が十分に整っている場所へ、わざわざ飛び込んでくるということでもある!」


俺は、仲間たちの顔を思い浮かべた。


各都市には、俺が信頼する最強の指揮官たちが待機している。


彼らは、援軍を待つだけの弱者じゃない。


「ティアーナは『グラニット・ベース』へ」


俺は、的確に指示を飛ばす。


「技術解析班と共に、敵兵器のデータを収集しつつ防衛を。 奴らの技術を逆手に取ってやれ」


「アリシアとオリヴィアは『アグリ・ヴィータ』へ」


「決して民に指一本触れさせるな。 食料庫と、人々の笑顔を死守するんだ」


「セレスティーナ総長は『アイギス・フォート』へ」


「敵の主力を引きつけ、公国軍の意地を見せてやってください」


遠話の魔石を通じて、各都市へ即座に命令が伝達される。


隣の管制室も、慌ただしく動き出したようだ。


だが、俺の心は静かだった。


モニターの中では、穿たれたトンネルから今なお帝国兵が湧き出し、朝日に輝く雪原を黒く塗り潰す行軍が続いている。


その黒い波は、平和だった公国の景色を飲み込もうとしていた。


(……土足で踏み込まれただけじゃない)


あの穴を塞がない限り、この国に安眠は訪れない。


やるしかないんだ。


俺は、自信満々の笑みを浮かべることはできなかった。


代わりに、悲壮な決意を秘めた真剣な眼差しで、モニターを見据えた。


公王としての重圧。


数万の民の命を背負う責任。


それら全てを飲み込み、俺は静かに、しかし力強く宣言した。


「……総員、迎撃開始」


俺は、祈るように、そして誓うように言葉を紡いだ。


「一人も死なせるな。 必ず、守り抜くぞ」


ここに、朝焼けの空の下、エルム公国とヴェルガント帝国の総力戦の火蓋が切って落とされた。

「面白かった」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後はどうなるの?」


と思ったら、


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面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで勿論、大丈夫です!

皆さんの応援が、本当に作品を書く、モチベーションに繋がります。


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