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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第118話:暴かれた聖域、迎撃の布石

首都エルムヘイム、公王執務室。


いつもの穏やかな空気は消え失せ、部屋全体が鉛のように重苦しい沈黙に支配されていた。


円卓を囲むのは、この公国の中枢を担うメンバーたち。


俺、セレスティーナ総長、ジュリアス殿、オリヴィア、ティアーナ、カイル、アリシア、イリス。


全員の視線が、テーブル中央に広げられた地図に注がれている。


だが、誰も口を開こうとはしない。


あまりにも残酷な現実が、そこに横たわっていたからだ。


「……報告します」


沈黙を破ったのは、セレスティーナ総長だった。


彼女は鋼鉄の意思で表情を引き締めているが、その瞳の奥には隠しきれない痛恨の色が滲んでいた。


「認めねばなりません。カジミール卿の離反により、我々がこれまで保ってきた『隠匿』は……完全に崩れ去りました」


その言葉が、部屋の温度を数度下げたように感じられた。


「エルム公国の正確な座標、保有戦力、主要な施設の配置……そして何より、レン公王が『龍覚者』であるという最重要機密。これら全てが、帝国に露見したのです」


セレスティーナの声は震えていなかった。


だが、それが逆に事態の深刻さを物語っていた。


カジミール卿。


かつてオリヴィアの側近であり、この執務室にも自由に出入りしていた男。


彼は知っている。


この国のどこに何があり、誰がどんな能力を持っているのかを。


「……っ」


オリヴィアが、唇を強く噛みしめた。


扇子を持つ手が白くなるほど震えている。


「わたくしの……不徳の致すところです。あの男を……あのような毒蛇を、懐に入れていたなどと……!」


「オリヴィア、自分を責めるな」


俺は静かに、だが力強く彼女に声をかけた。


「奴は父王の代から仕えていた。誰にも見抜けなかったんだ。……悔やんでいる時間はない。今は、これからどう動くかだ」


俺は地図を見下ろした。


始原の森の奥深く。険しい山脈に囲まれたこの場所は、これまで天然の要塞だった。


帝国も、まさかこんな未開の地に国があるとは思っていなかっただろう。


だが、座標がバレた今、山脈はただの障害物に過ぎない。


始原の森を知る魔術師ゼノンの知識、そして帝国の魔導技術があれば、ワイバーンの巣食うあの山脈さえも突破してくる恐れがある。


「……ギデオンを討ち取った以上、帝国はメンツにかけても報復に来るだろうな」


俺は言った。


「四将軍の一角を殺されたんだ。黙っているはずがない。……もはや、この始原の森は安全地帯じゃない」


その事実を、全員が飲み込んだ。


守られるべき聖域は、暴かれたのだ。


「では、奴らはどう攻めてくるか……ですな」


ジュリアス殿が、長い髭を撫でながら進み出た。


老魔術師の鋭い眼光が、地図上の三つの拠点を射抜く。


軍事都市『アイギス・フォート』。


鉱山都市『グラニット・ベース』。


生産都市『アグリ・ヴィータ』。


公国を支える三本の柱だ。


「カジミール奴は、我々の強みを知り尽くしておる。ゆえに、奴らが最も警戒するのは……ティアーナ殿が開発した『転移門』による『戦力の即時展開』じゃ」


ジュリアス殿が、杖で首都を叩く。


「通常ならば、敵がどこかの都市を攻めれば、我々は転移門を使って即座に首都から全軍を送り込み、数的有利を作って撃退できる。……帝国軍が一点突破を試みれば、我々は鉄壁の防御でそれを粉砕できる可能性が上がる」


「ええ。そのための転移門ネットワークですもの」


ティアーナが頷く。


だが、ジュリアス殿の表情は険しいままだ。


「左様。奴が帝国軍に入れ知恵をするなら、その『強み』を封じに来るはず。……すなわち」


ジュリアス殿が、地図上に三つの赤い駒を同時に置いた。


「『三都市同時侵攻』じゃ」


「同時……侵攻……?」


カイルが眉をひそめる。


「三都市を同時に攻めれば、我々はどこか一箇所に戦力を集中させることができなくなる。転移門で援軍を送ろうにも、全ての都市が戦場となれば、送るべき兵力が足りん」


ジュリアス殿の声が、冷徹な事実を告げる。


「我々を各都市に釘付けにし、転移門による『戦力の集中』という最大のメリットを封殺する。そして、孤立して手薄になった各都市を、圧倒的な物量ですり潰す……それが奴らの狙いじゃろう」


部屋に、絶望的な空気が漂った。


(……転移門による『一点集中』……そのカードを切らせてもらえないなんて)


ティアーナが、青ざめた顔で唇に手を当てる。


転移門があるからこそ、我々は少ない戦力で広大な領土を守れていた。


だが、全拠点が同時に攻められれば、その機動力は意味をなさなくなる。


一番痛いところを突かれる。


カジミールという内通者がもたらした情報の価値は、計り知れないほど致命的だった。


「……打つ手なしかよ」


カイルが悔しげに拳を握る。


「首都に籠城するか? いや、それじゃあ他の三都市が見捨てられることに……」


「見捨てるわけにはいきません!」


アリシアが叫ぶ。


「あそこには、たくさんの人が暮らしているんです! 故郷を追われ、ようやく見つけた安住の地なのに……また追われるようなことなんて、絶対にさせない!」


だが、どうやって?


戦力差は歴然としている。


帝国は大陸の覇者。動員できる兵力は桁違いだ。


分散させられれば各個撃破され、集中すれば他を失う。


完全に、詰んでいるように見えた。


沈黙が支配する会議室。


敵のシナリオ通りに動けば、負ける。


「分散すれば、負ける」。


……本当に、そうか?


俺の中で、一つの疑問が浮かび、そして強烈な閃きへと変わった。


敵の作戦には、一つの「前提」がある。


それは、「分散したエルム公国の戦力は、帝国軍の物量に耐えきれない」という前提だ。


「……いや、違うな」


俺は、力強く立ち上がった。


椅子の音が、静寂を切り裂く。


全員の視線が俺に集まる。


「レン?」


「相手が我々の戦力を分散させたいなら……あえてその戦略に乗ってやる」


俺は、地図上の首都に置かれていた駒を掴み取ると、それを三都市へと散らした。


「敵が来るのを待つんじゃない。我々が『先手』を打って戦力を分散配置し、各都市を『要塞化』して敵を迎え撃つんだ!」


「なっ……!?」


セレスティーナ総長が目を見開く。


「分散配置!? それこそ敵の思う壺では!? 援軍なしで孤立すれば、数の暴力に押し切られます!」


「いいや。カジミールが知っているのは『過去の』我々だ」


俺は言い放った。


「奴は、俺たちが『首都からの援軍ありき』で防衛プランを組んでいると思っているはずだ。だからこそ、分散させれば勝てると思っている」


俺は、仲間たちの顔を一人ひとり見渡した。


「だが、違う。……お前たちは、援軍がなければ戦えないほど、ヤワな連中だったか?」


「……っ!」


カイルが、ハッとして顔を上げた。


イリスが、剣の柄を強く握りしめる。


「俺たちは、黒鉄鉱山でギデオンを倒した。……少数精鋭で、あの鉄壁を打ち破ったんだ。」


俺は断言した。


「各都市に最強の指揮官を配置する。援軍を待つための部隊じゃない。単独で敵を殲滅できる『独立要塞』として機能させるんだ。……奴らが分散して攻めてくるなら、分散した先で返り討ちにしてやる」


「それにだ」


俺は、地図を指差しながら不敵に笑った。


「もし奴らが、俺たちの分散配置がばれて、一点突破に切り替えてきたらどうすると思う?」


「え……?」


「話は簡単だ。……その時は、転移門を使って俺たち全員がそこへ集まればいい」


全員が、ハッとして息を呑む。


「敵が分散してくれば、各個撃破。敵が集中してくれば、転移門で全軍集結。……どちらに転んでも、俺たちに隙はない」


これが、俺の描いた逆転のシナリオだ。


分散配置は「賭け」ではない。あらゆる状況に対応するための、最強の布陣なのだ。


「……はっ!」


カイルが、吹き出したように笑った。


ニヤリと、三日月のように口元を吊り上げる。


「なるほどな……! どっちに来ても迎撃可能ってわけか! へっ……! 受け身で震えて待つより、そっちの方が性に合ってるぜ!」


「ええ、そうですわね」


ティアーナも、瞳に光を取り戻す。


「私たちの技術と魔法……見くびられては困りますわ。カジミール卿には、古いデータで計算したことを後悔させてやりましょう」


絶望は消えた。


代わりに部屋に満ちたのは、燃えるような闘志と、やるべきことを見据えた覚悟だった。


「配置を決定する!」


俺の声が響く。


迷いはなかった。この配置こそが、仲間への絶対的な信頼の証だ。


「軍事都市『アイギス・フォート』」


俺は、三人の戦士の名を呼んだ。


「セレスティーナ総長! カイル! イリス!」


「「「はっ!!」」」


三人が同時に進み出る。


「お前たちは最強の矛であり盾だ。敵の主力は必ず軍事都市を狙う。……正面から叩き潰してくれ」


「御意! ドラグニアの誇りにかけて!」


「鉱山都市『グラニット・ベース』はティアーナ! ゴードンさん!」


「はい!」


ティアーナが力強く頷く。


「あそこは技術の心臓部だ。魔導兵器による搦め手が来る可能性もある。……新技術を開発し敵を翻弄できる体制構築を頼む」


「お任せください。私の魔道具で、帝国の鼻を明かしてみせますわ!」


「そして、生産都市『アグリ・ヴィータ』はアリシアとオリヴィア」


「はい、レン!」


「承知いたしました!」


「あそこは食料庫であり、多くの民が暮らす場所だ。敵は多くいる民を利用……人質を取るような卑劣な手を使ってくるかもしれない。……民を守り抜けるのは、お前たちしかいない」


「……任せて。私の光で、絶対に誰も死なせない」


アリシアの瞳に、慈愛と決意の炎が宿る。


全員の配置が決まった。


公国の全戦力を、三つの都市に分散させる。


それは、首都を空にするというリスクを背負うことでもあった。


「そして、俺は……」


俺は、地図の真ん中、首都エルムヘイムに自分の駒を置いた。


「首都に残り、全戦域を常時監視・統括する」


俺は、こめかみを指差した。


「マッピングと遠話の魔石をリンクさせ、全ての戦場の情報をリアルタイムで処理する。……俺が、公国の『目』となり『脳』となる」


前線には出ることはできない。


だが、それは安全地帯に隠れるということではない。


三つの戦場を同時に見渡し、必要な瞬間に、必要な場所へ、的確な魔法支援と指示を飛ばす。


ジュリアス殿に叩き込まれた役割。


それを、公国全土という規模で実行するのだ。


「……これが、エルム公国の総力戦だ!」


俺の宣言に、全員が深く頷いた。


もはや、恐怖はない。


帝国軍の侵攻は不可避だ。ならば、受けて立つ。


守るための戦いではない。


勝つための戦いが、今、幕を開けようとしていた。

お読みいただいてありがとうございます!


思ったより面白いじゃん!(*'▽')(*'▽')


というお方は、ブクマしていただいたり、★ポチポチしていただいたりすると、筆者が本当に作品を書く、モチベーションに繋がります。

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