24話 圧倒
勇者はこちらへと走りよる
しかし、先程の男とは違って隙を見せないという意思を感じる動きだ
赤鉈森での事件以来やつは戦闘していないはずだが一切のブランクはなさそうなのは称賛に値すべきだ
だが、ただそれだけである
『とりあえずは突っ込む!』
単細胞勇者だな
自分の射程内に入ってきたので勇者の足元に手を突き出せば、勇者はくるりと身を翻し宙を舞う
なんとも安直な行動だ
俺は勢いそのままに体をひねり、丁度俺の上方を飛んでいた勇者の足を爪で突き刺す
これで行動範囲は絞られた
と思ったのも束の間、勇者は全く動じることなく俺の背中にはりつこうとする
なる程、元からこれが狙いだったわけか。肉を切らせて骨を断つ寸法だな?
だが残念
俺は体術に関してもエキスパートだ
爪に刺さった足を起点にして勇者を背負い投げのように地面に叩きつける
今度は予想外だったようで一切対応が取れずに成すすべなく洞窟の床を凹ませる
すぐにトドメを刺すのは一瞬で可能だが…できるだけ情報を集めてから殺したい
拘束してしまえば自殺をされかねないから今精神魔術で心を読み取るのが吉だな
それに先程のように表面しか読み取れなければ万が一もあり得る
だからより深いところまで探せるように魔力を染み込ませる
読み取る情報だが…できるならば仮面やあのチンピラ男についても読み取りたいが、まずは能力が先決だな
最低限その情報だけは持ち帰れと言われていたから
………ふん…なるほど。数多の事象を植物で再現する方針で魔術を使っているのか
だがそれには多量の魔力が必須…それで種族が……、だから今はとても弱いと…
すっと勇者が立ち上がる
一旦お預け、戦いを始めなければな
勇者は棍棒を地面に突き立て再び上方を飛び越えようとする
『もう一度突っ込む!まずは裏を取らなければ始まらない!』
俺の死角からなら攻撃が当たるとでも考えたんだろうか
堅実な考えではあるが、無意味だ
虚をつかれたフリをして一旦やつを見送る
勇者の見えない位置で純魔術を形にして爪に纏わせて
そして着地音が聞こえた場所に向かって振り返りつつ思い切り飛ばした
あの勇者ならば木っ端微塵に弾け飛ぶ威力だったが…
どうやら騙されたようだ
勇者は半身を失ってはいるが直撃していない
棍棒は手に持っているから体の一部を先に地面に落としたんだろう
今回は精神魔術は前より深く繋がっていた
ならばこの案は飛び越えた直後に思いついたという訳か
なるほど…馬鹿にしていたが案外侮れないな
頭のできが悪いのに違いはないが思考速度は十分すぎるほどだ
これなら本来の力なら俺とも十分に渡り会えただろうに…
局面が悪すぎたな
恨むなら俺に命令を出したお偉いさんを恨めよ
勇者は体の再生を始める
よし、折角だし情報収集だ
次はここ最近の記憶を辿っていく
…………………素晴らしいじゃないか
有益な情報がたくさんだ
まずは仮面について分かったのが大きい
能力までは判明しなかっなのは残念だが、呪われているというのが分かっただけでも十分だ
キメリーが作った可能性もあるわけだから念のため殺す前に剥がしておこう
そして、王国の動向もなんとなくはつかめたな
なかなかにくだらないことをしようとしているらしい
…あとあのチンピラはただの一般人だったのか
あとで完全にトドメを刺しておこう
よし、十分だ
勇者がまた立ち上がり、棍棒を構える
体の修復でもう殆どの魔力を使い切ったらしい
魔力での強化も切れて体も脆くなっているようだ
想像以上に粘ったが勇者ももう終わりだな
設定矛盾、不自然な描写、狙ってる部分も少しだけはありますが基本的には普通に間違ってることが多いので気づいたら是非教えて下さい




