6話 赤蟻
『樹鉄の処女』を解除して、元の場所に戻って戦闘の痕跡を消していく。奴の気配はもうどこにもない。
赤蟻達に危険な潜入者だとバレたら面倒だからな。隠蔽はちゃんとやらないと。面倒だがな。
さて、色々あったが既に日が落ちかけている。
ここで野営をし………………ません!
魔物たちは夜行性のものが多いが、実は俺たちの中にも夜行性がいる。
森山、海堂、香山だ。委員長は昼も夜も関係ない。
なので俺たちは夜にターゲットであるてんとう虫に攻撃を仕掛ける。
え?俺?俺は昼型ですよ?誰も慰めてくれないのが割と悲しい。
そんなわけで作戦会議が始まった。ヤツを殺すための。
*
よるになりました!
何度も夜はキツイと訴えたのに無情にも一番働く役になりました!
そこまで重要な役でもないから見ようによっては妥当な判断。俺から見ると非情な判断。
ぐちぐち文句を言っててもしょうがない。天道虫の確認しとくか。
記憶の中から情報を引きずり出す。
種族名コキュイネー・エリダさんは、益虫と呼ばれるてんとう虫の姿を取りつつも、その実破壊関係のエキスパートで、危険度はA。環境破壊大好きさんです。
見た目もてんとう虫てんとう虫言ってるが、脚は蜘蛛のようなのが8本生えており、顔はゾウムシと似てる。
天道虫状の外骨格の硬さは半端じゃない。ダイアモンドの研ぎ石でも傷つけるのに苦労するレベル。
そして体高50メートル体長200メートル。バケモンだ。
その鼻っぽいのから繰り出される粉塵は呼吸する全ての生物の肺を裂き、黒い斑点からは強酸が吹き出す。得意魔法は爆発魔法。やっぱり環境破壊大好きさんだ。
普通ならほっとくが、万が一この森が破壊されると赤蟻が溢れ出てくる。そうなった時には人類滅亡もありうるため、今回の遠征での討伐目標に選ばれたんだ。
今は天道虫にデカイのを仕掛けるための準備中。
委員長の魔法と同時に弱点の脚の節を切りつけるとのこと。手伝えることがなくて暇だ。
※
「まずいッ」
誰かが叫ぶ。
一拍遅れてダダダダダダダダダダダ………という音が聞こえてくる。
一体何なんだよ!?
心の中で悪態を吐きつつ音の正体を探る。監視花設置!
「赤蟻よ…赤蟻が攻めてきたわ!」
「数はどのくらいだ!?」
「待て、今監視花で探してる!」
おそらくあっちの方だ。
…………見えちゃったよ…
「どのくらいだってんだ!」
「目が………白かった…」
答えになってない答え。
しかしみんなは意味を察したのか顔色が青くなっている。
はっきりと絶望が顔に現れている。
「ブホォオオオオオオオオォオオオォォォォォ!!!!!」
さらにコキュイネーが特徴的な鳴き声をあげる。
それは臨戦態勢の合図。しかも極度の興奮状態に入ったのか全身の穴からジュワジュワと酸が溢れている。
そして赤蟻達の目が白色。
それの意味するところは赤蟻達が『総力戦』を仕掛けてくるということだ。
最悪だ。このタイミングで赤蟻が来るなんて。
「俺が赤蟻を塞きとめる!」
防壁作りは得意だからな。
「僕も行くよ!」
海堂も役に立つな。
ぜひその鎌で奴隷どもをなぎ倒して頂きたい。
「わかったわ。私とシュンタ君でコキュイネーは相手するわ!モエさんは…」
「俺が守る!」
「わかったわ!」
寄生虫ども、覚悟しとけ!
*
他者の体を乗っ取り、あるいは共生して生きている寄生生物。
無害なものもいるが、もちろん危険なものもいる。地球でもそうなのだ。ファンタジーなこの世界ではより危険なものがいる。
その一例が赤蟻こと、パラサイトセンティピートである。
あらゆる生物を武力で屈服させ、寄生し、生態を変えて己の生態系に組み込み、そして餌や兵士として扱う。何故か[紅き構えの鉈森]から出ないが、もしここから出ていたならばすでにこの世界は滅びていたかもしれない。
蟻の頭部に百足の体を持った全身真っ赤な彼らが今総力戦の構えをとっている。
その危険度は二次被害を考慮すればAランクを超える。
おまけにこの戦いは絶対にこの場で勝たなければならない。
もし赤蟻が勝てば圧倒的な戦力を持つコキュイネーを支配される。
もしコキュイネーが勝てば結果的に森を荒らしまわることになり、赤蟻どもが森に住めなくなり外に出てくる。
俺たちのもともとの遠征はそれを防ぐためのミッションだったのだ。防がなくてはならない。
メキメキメキメキ!!!
木を変形させ壁を作る。先程とは違い、ただ守ることだけに特化した壁。
負ける訳にはいかない。絶対、守りきってみせる!
「海堂!行くぞおおおお!!!!!!」
「おーーーー!」
「声が小さぁい!!!」
「え?」
「いいいいいいいくぞおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!!!!」
「え?お、おおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
赤蟻との距離、およそ100メートル
そうです。センチピードです。死に設定になる気しかしない。




