第39話「夜の失踪」
夜。
北の街は静まり返っていた。
レオたちは、失踪事件が起きている東地区に身を潜めていた。
「本当に今夜も起きるかな」
カイが小声で尋ねる。
「分からない。でも、昨日まで毎晩起きてたなら可能性は高い」
レオは周囲を見回す。
ミナは少し離れた場所で魔力を探っている。
「……何か感じます」
「魔物?」
「いいえ。でも……死者の気配があります」
ガイアが目を閉じる。
『私にも感じる』
レオの表情が険しくなる。
「近い」
その瞬間。
カラン……。
路地の奥から、小さな金属音が聞こえた。
「……来た」
レオたちは音のした方向へ進む。
暗い路地。
そこに、一人の男が立っていた。
「……」
男は何かを探すように辺りを見回している。
カイが小声で言う。
「こいつが犯人か?」
「まだ分からない」
レオが答える。
男が路地の奥へ進む。
その先には、眠っている住民の家が並んでいた。
すると――
男の足元に黒い魔法陣が浮かび上がった。
「魔法陣……!」
ミナが息を呑む。
魔法陣から黒い霧が溢れ出す。
その霧が、一軒の家へ入り込んでいく。
「止める!」
レオが走り出す。
「《死縛》!」
黒い鎖が男へ伸びる。
しかし男は振り返り、腕を振った。
バンッ!
鎖が弾き飛ばされる。
「何だと!?」
男はレオを見る。
「……ネクロマンサー」
「お前が人を消してるのか!」
男は答えない。
代わりに魔法陣から黒い影が現れた。
「魔物……!」
カイが剣を抜く。
「俺がやる!」
カイが飛び出す。
影の爪を剣で受け止める。
ガキンッ!
「くっ……重い!」
ガイアも加勢する。
『下がれ!』
拳を叩き込む。
影が吹き飛ぶ。
ミナが杖を構える。
「《風刃》!」
風の刃が影を切り裂く。
だが、影はすぐに立ち上がった。
「また……!」
レオが額を見る。
そこには黒い紋章があった。
「紋章を壊せ!」
カイが踏み込む。
「分かった!」
剣が紋章を狙う。
しかし――
男がカイの前に立ちはだかった。
「邪魔はさせない」
「くそっ!」
レオが男へ鎖を放つ。
「《死縛》!」
今度は男の腕に鎖が絡みついた。
「なっ……!」
「捕まえた!」
レオが力を込める。
「何者だ!」
男は笑った。
「俺が何者か知る必要はない」
「なら、どうして人を攫う!」
男は答えなかった。
その瞬間、黒い魔法陣が強く輝く。
「まずい!」
ミナが叫ぶ。
魔法陣から大量の黒い霧が噴き出した。
男の姿が霧に包まれる。
「待て!」
レオが手を伸ばす。
しかし――
霧が消えた時、男の姿も消えていた。
「逃げられた……」
カイが悔しそうに剣を下ろす。
ガイアが周囲を見る。
『だが、あの魔物は残っている』
「そうだ!」
レオたちは魔物へ向き直る。
守護者が大剣を構える。
一撃。
魔物の黒い紋章が砕けた。
魔物はその場に崩れ落ちる。
レオは地面に残った魔法陣を見る。
「人を消してたんじゃない……」
ミナが続ける。
「別の場所へ移動させていた?」
「たぶん」
レオは拳を握る。
「だったら、消えた人たちはまだ生きてるかもしれない」
カイが頷く。
「探そう」
その時、レオの足元に小さな紙片が落ちていることに気づいた。
拾い上げる。
そこには一つの場所が書かれていた。
『旧地下墓地』
レオは紙を握る。
「ここに、何かある」
ガイアが静かに言う。
『ならば、次に向かう場所は決まったな』
レオは頷いた。
「旧地下墓地へ行こう」
――第39話・完――




