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第零話しんじスリープ

眠い

それは四月のことだった。

春。

出会いと別れの季節だとか。

新しい始まりの季節だとか。

そんなことを言う人間は大体朝が強い。

少なくとも俺はそう思う。

なぜなら今の俺は布団の中で死んでいるからだ。

「まだ寝てたの慎治」

死体を発見した第一発見者の声がした。

いや。

第一発見者ではない。

犯人だ。

間違いなく。

俺の安眠を殺した犯人である。

「起きろ」

「休日だぞ」

「だから起きろ」

意味が分からない。

休日だから寝るのであって休日だから起きるわけではない。

その理論なら俺は毎日寝ている。

「ほら」

何かが飛んできた。

反射的に受け取る。

コンビニ袋だった。

中には栄養剤。

ミントアイス。

サンドイッチ。

どうやら今回も毒殺する気はないらしい。

「ありがとう」

「感謝が軽い」

「じゃあ返す」

「返すな」

千洋子は勝手に俺のベッドへ腰掛けた。

こいつは遠慮という言葉を知らない。

正確には知っているのだろうが、たぶん嫌いなのだろう。

でなければ休日の朝から他人の家へ侵入してこない。

「それで」

千が言う。

「義手の調子どう?」

俺は少しだけ黙る。

左腕を見る。

長袖の下。

誰にも見えない場所。

そこには普通の腕がある。

少なくとも見た目は。

「問題ない」

「本当に?」

「本当に」

嘘だった。

たまに夢を見る。

腕を失う夢だ。

血。

痛み。

KET。

赤い目。

胸を踏み潰される感覚。

目を閉じれば今でも思い出せる。

「蓮斗さんがそろそろ確認しろって」

「面倒だな」

「私はもっと面倒」

「なんで」

「連れていくの私だから」

それもそうかもしれない。

俺は冷蔵庫へミントアイスを入れる。

あの事件から一ヶ月。

普通の日常へ戻った。

そう思っていた。

少なくとも。

その時までは。

「そういえば」

千がスマホを見ながら言った。

「また神隠し事件だって」

俺は振り返る。

「神隠し?」

「最近流行ってるやつ」

画面にはニュース記事。

女子高生失踪。

行方不明。

手掛かりなし。

俺はその時、

ただの失踪事件だと思っていた。

だから気付かなかった。

それが俺達が巻き込まれる事件になることを。



高評価下さいお願いします本当に、コメントくれたら励みになります

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