デカイ月だと叫ぶ君に
若干BL気味なので苦手な方はお気をつけください。
秋も終盤。
肌寒くなったこの時期は、日が落ちるのが早くてすぐに暗くなってしまう。
空を見上げれば星が輝いている。
「あー、さみぃー!俺、いつマフラーしてくるか迷ってんだよね。タイミング難しくね?みんな寒くねーのかなー」
「さーね」
「んだよー。その反応、冷てーなー」
薄暗かった景色がは真っ暗になると、君の顔が見えなくなって声だけ聞こえる。
けど、触れてもいないし見えないから本当に君がいるのか不安になる。
時々電柱の上の蛍光灯に照らされて君の顔が見えるけれど、それはやっぱり一瞬で。
「お前は寒くねーの?」
「んー、まだマフラーって気分ではない」
「…マジですか」
「マジです。寒がりだよね、昔っから」
「昔っからって…お前、中学からの俺しか知らねーじゃねーか!」
はー、君は平気でそんなことを言う。
その言葉でこっちがどんなにダメージを受けているかも知らずに。
無知は罪だ。
多分、無邪気と鈍感も同罪で。
君にとって俺は友達の一人。
じゃあ、俺にとって君は…?
「あ、なぁなぁ見ろよ!」
「なに?」
「デカイ月だぞ!すっげー!」
ピョンピョンはしゃぐ君が蛍光灯の明かりに照らされて見える。
子供のような純真無垢な笑顔を、一瞬にしてこの冷たい風のように変えてしまう言葉を俺は今もっているんだ。
言えないまま心にしまっている言葉。
それは大きな時限爆弾で、俺の中にあっても、君に投げつけても爆発してしまう運命。
なら一層、投げつけてしまおうか?
そう俺は何回思って、何回君の笑顔に阻止されたんだろう。
「なぁ、聞いてる?」
「ん?
「綺麗だよな!月って」
「でも知ってた?月って太陽がないと輝けないらしいよ」
「へー、なんか人間みたいだな」
「なんで?」
「だって人は必ず誰かに助けてもらったり、支えられたりするもんだろ?」
「まあね」
「俺が失敗したらお前が助けてくれる、みたく」
「俺が失敗したら君は俺を助けてくれるの?」
「あったりまえじゃん!俺はお前が大好きだもん」
大好き。
君と俺の愛の重さが違うことなんて知っている。
その愛の言葉の重みが違うのだってちゃんと知ってる。
知っていたのに…
デカイ月だと叫ぶ君に、
温かいキスを一つだけ落とした。
「なっ!ななななな…!」
「あー、ほんとに大きい月だね」
「…お、おう」