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【15】大地の神



すべての元凶とも言える光の元女神とレナードが退場し、皇国城は再び平穏を取り戻していた。


「力をお貸しいただき、感謝いたします。デラフィト・ファヌアルスさま」

膝を折るリクリと共にそれに続いて膝を折る皇国のものたち。


『いい。お前たちもあれの始末に巻き込んで済まなかったな』

「いえ、私も勇者ですから。国の危機となれば矢面に立つのは当然のこと」

自分の手を汚さずに他人にやらせる麗人やレナードとは雲泥の差だな。


『ならば今後も、皇国を守るべく邁進せよ』

「承知いたしました」


『レティシアとも仲良くやるがいい』

「それは……っ。もちろんでございます」

リクリは少し照れくさそうに笑んだ。


「あと……その、デラフィト・ファヌアルスさまに……」

『……それより先は、ティルに問うがいい』

リクリが何を問おうとしているのかは、分かる。だからこそアルベロは再び俺の身体の主導権を手放し、俺は元の姿に戻った。


「俺はヒトの……いや、人間の魂のティルダと神の魂……アルベロと分かれている。だから俺の肉体に関わることなら、俺が聞こう」

「はい、承知しました。その……エルフ族の長より……その血を継ぐティルダさまとお母君への面会要請が出ております」


なるほど。今まで助けの手も差し伸べなかったのに。むしろ……。


「アルベロと共に神眼を見た。祖父の手から母を奪い取りグロリアスへの生け贄にしたことくらい分かっている」

「そんな……っ」

リクリは知らなかったようだな。顔を背けたこの場にいるエルフ族は……知っていたようだが。

そして俺を奪われ国を奪われた母をあの元王に売り渡したのだ。祖父母もまた失意の底でその命を散らした。


「祖父母の墓前に花を手向けることはあれど、エルフ族に便宜をはかる気などさらさらない。その上……自らの罪を隠し、またリクリのひとのよさを利用するのなら容赦はしない」

エルフ族たちを睨み付ければ、エルフ族たちは懺悔するように地に額を付けて詫びてきた。


「ティルダさま、申し訳……」

「謝るな、リクリ。お前はお前の信じるように生きるがいい。もしそれを利用しようとするものがいるのなら、アベルの分身も、それからレティシアも許さないだろう」

「……っ、ありがとうございます……っ」

リクリはひとがよすぎるのが難点だが、勇者にふさわしい資質を持つ。そしてお目付け役とレティシアと言う妻がついているのなら、これからも大丈夫だろう。


「さて、俺たちは帰ろうか。あと……寄りたい場所も出来た」

「どこまでもお供いたします」

妙ににまにましているアベルは……冥界でもうひとつの本体が相当お楽しみ中なのだろうな。


「私ももちろんついていく」

「うん、シャーナも一緒に来て欲しい」

俺やアルベロがまた暴走しそうになったとしても、シャーナと言う存在が俺たちを止めてくれるから。


俺が再びシャーナを抱っこし、アベルと共に飛翔すれば。


フェヌアの地の外れにひっそりと埋葬された祖父母に花を手向けた。


「次は母さんも連れてきたいな」

【【それならシルヴァンが抱っこして連れてきてくれるだろ】】

まぁ、魔竜だもんね。飛べないわけがないのだ。魔王が魔王国を出るのは……少しくらいなら大丈夫。魔王の役目は、それぞれの魔族種の長……王を取りまとめることにある。地底種の王も次はまともな王が任命される。ここは俺たちが面接することになったから、大丈夫だ。王たちがしっかりと治めているのだから、墓参りくらいはゆっくりとする時間がとれるだろう。


そして再び飛翔した俺たちは……みんなの待つ魔王城へと帰路に着いた。



――――その後の話を少し、しようか。


光の女神が失墜し、創世神は新たに女神を産み出した。今度の女神は愛の女神だが、海の女神に指南されながら、せっせとお役目をこなすまっとうな女神となったらしい。まぁ相変わらず、魔族の主神は俺たちだから、魔族へのギフト担当はアルベロたちだけど。


そしてグロリアス王国はその後衰退の道を歩んでいると言う。


土地は枯れ、餓死者が頻出し、疫病が蔓延した。中でも目立った噂が呪われた公爵夫人。どんな医者に見せても治らず、医者までいなくなる始末。最期は暴動を起こした民衆に、公爵や使用人もろとも晒し首にされたらしい。だいぶ贅沢していたからなぁ、あの家。相当庶民の怨みを買っていたのだろう。あと、王族や各地の貴族たちもやられて、あそこは無法地帯。各国国境を封鎖してしまったので、彼らは閉じ込められて衰退を待つのみ。


それから、閉じ込められる前に各地に移民が溢れてたようだが、皇国は受け入れを拒否したそうだ。それも当然か。皇国を横取りしようとした国だもの。さらには神話の真実も広く知られているから、古代から自己中心的な考えを振りかざすあの国については警戒したのだろう。


また、エルフの国や獣人の国では奴隷として飼われるのだとか。優れたギフトを持っていても、元々の力は他種族の方が強いから。不満を言ったって変わらない。エルフや獣人も生きていくので手一杯。奴隷として飼われるほうが、まだましな処遇なのだと言う。


それから皇国がエルフ族の所業を詫びるため、人類の大地にも古代神話の真実を広めているから、大地の神を魔神と蔑まず、痩せた土地の豊穣を祈るようになったから、少しは大地の神の機嫌も、ましになるだろう……?


【さて、どうだか】

アルベロったら。

でも、それも大地に生き行くこの世界の住民次第……だからね。



【完】



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