3章ー7:キツく当たった理由
「リオル、そして姫様。此度の手合わせで日々の稽古と各々の鍛練が十分活かされていると実感できたと思いましょう。これに驕ることなく、更に精進することを期待しております」
ボロスの前に並び、僕とティアスは彼から〆の言葉を述べられていた。
胸のドキドキは収まったけど、まだ少し興奮が止んでない。
こんなにアドレナリン出たの久しぶりだ。
「では今日はこれまで。リオルは次の稽古までに型を整えておくようにっ!」
「はいっ!!」
こうして僕とティアスの、初めての合同練習は幕を閉じたのだった。
「はぁ~!やっと終わったわい~」
一息ついた僕とティアスは、井戸で水を汲んで、それを身体にかける。
「やはりこの時期の稽古は汗をかくのぅ~。なぁリオル」
ティアスはさっぱりしながら身体についた土を荒い流す。
ってかなんか、身体から湯気みたいの出てるんだけど何なんソレ?
熱したフライパンを流しの水に付けたようになってるやん・・・。
おそらく100℃近くなってるティアスの体温引きつつ、僕は無言で行水をする。
「なんじゃ~お前?いたいけな女子を手酷く扱ったことをよっぽど反省しておるのかぁ~?今度はそんな辛気臭い顔すらできぬほどに叩きのめしてやるから覚悟しろっ!!」
いつもの男勝りな態度で僕に接してくるティアス。
だけど僕は無言を貫いた。
ちょっと気になることがあったからだ。
「姫様・・・」
「何じゃ?詫びの一つでもしようってのいうのか?かかっ」
「いやそうじゃなくて、その・・・なんか稽古中、怒ってませんでした?」
手合わせしていた時に思ったんだ。
なんだかティアスの、僕に対する当たりがキツいって・・・。
試合の頃はそんなの気にする余裕はなかったけど、冷静になった今ではそう思う節がちょくちょくあるのを思い出した。
コイツとは四年の付き合いだ。
心を正確に見透かすことはできないが、ざっくりとした感情の機微は分かる自信がある。
「・・・・・・リオルよ」
観念したかのような表情をして、ティアスはタオルを器用に首まで持っていって言い放った。
「お前・・・レムアと未だ進展ナシではないか」
「・・・・・・はぁ!!?」
なっ、なんでここでレムアの名前が出てくんのさ!!?
困惑する僕にティアスは、井戸の淵に『ドン!!』と叩いて力説しだした。
「レムアに色気付いたお前をあの子と同じ屋根の下で暮らすようにしてはや四年!!長いこと連れ添い合ってきたのに告白はもちろん、接吻も抱き合いもナシ!!未だに『主人と侍女』の間柄とはどういうことかっ!!?煮え切らぬ態度を取るお前に、わらわはほとほと飽き飽きしておるのだぞっ!!!」
ティアスが試合中にどことなくイライラしてたのってそれが理由!?
っつうかコイツ今、初めて会った時に僕とレムアがイイ感じになるように絵図を描いたことゲロったぞ!?
やっぱそういう魂胆だったのか、この恋愛脳!!
と、ビックリするのは置いといて・・・。
確かにこの四年間、僕とレムアの関係にはな~んも進歩がない。
告ったりしてないし、キスもしたことも、二人でどっかに行ったこともない。
帰ってきて、「ただいま」と「おかえり」を言い合って、ご飯を一緒に食べて、六畳一間?で一緒に寝て、朝ごはんを食べて、「行ってきます」と「行ってらっしゃい」を言い合う・・・ただそれだけ。
しかも最近は忙しくなってきたから、出先で泊まることもまあまあある。
これじゃまるで、倦怠期の夫婦だ。
結婚したことないけど。
・・・・・・レムアのことは、今も好きだ。
彼女の声、微笑み、態度・・・どれもが優しさに溢れてて安心する。
何かの拍子に指と指が重なりあったり、おでことおでこがコツンとなると、顔がものすごく熱くなる・・・。
付き合えるんなら、もちろん付き合いたい。
傍でずっと見守ってたい。
だけど・・・。
「レムアには、僕よりいい男がいますからねぇ~・・・!」
自信無さげにはにかみながら言うと、ティアスはしかめっ面を見せてそっぽを向いた。
「ったく!どうして二人してそこは譲らぬ・・・!?」
え、何だって?
「今なんか言いました?」
「なんにも言うとらんっ!!」
ティアスはイライラしながら行ってしまった。
しっかしとんだとばっちりを食らってしまったなぁ~・・・。
おまけに最後に陰口まで言われちゃったし・・・。
そういうの地味にくるから止めてほしいわぁ~・・・。
「・・・・・・まぁ、なんて言ってるか分からなかっただけマシか」
そう独り言を呟いて、僕は屋敷に帰ることにした。
別に仕事は明日以降でも間に合うし。
「なんだろ~なぁ~?今日の晩ごはん」




