3章ー5:発火する闘争本能
ティアスの予想外過ぎるどえらい攻撃を二回も受けて、僕は地面にうずくまって立てなくなった。
めっちゃ腹痛い・・・!!
なんかせり上がってきて変な汗も出てる・・・。
気持ち悪さを覚えつつもどうにか立つことができた僕。
そんな僕を、ティアスは何やら冷めた顔で見ている。
「いつまで待たせる?立ったのなら早く打ってこい」
「あああ・・・!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ティアスの言い方がすごくムカついた僕は、無策に突っ走ってしまった。
そんな馬鹿な僕の顔に、ティアスは角でアッパーを炸裂させ、僕は再び地面にダウンした。
「一本」
これでティアスは3ポイント先制。
ダメだ・・・。
全く歯が立たねぇ・・・。
仰向けになって荒く呼吸する僕に、ティアスはゆっくり近づいた。
「リオル、正直言うてがっかりじゃ」
「はぁ・・・?」
「鍛練を積み、己の流派を見つけたと意気込んでおったが、どうやらとんだこけおどしだったようじゃ」
「そっ、それは・・・姫様の方が強いから・・・」
「ほう?わらわが強いからか?確かにそれも言えよう。じゃが一つ申そう。まさかお前は、『わらわが最初から強かった』と思うておるのか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
僕はハッとした。
最初からティアスが強いわけがない。
彼女が僕を叩きのめしているのは、それだけ彼女が僕以上に修行を積んだという証拠・・・。
四年前に敵に拉致され、ただ助けを待つだけだった彼女がこんなんになるんだから、見えないところでどんだけの苦労をしてきたことか・・・。
前世の頃からの悪い癖だ・・・。
「僕は頑張ったから人並み以上にできる」と勘違いして、調子乗って、勉強や仕事のスピードと出来具合ができないよりかはマシだと思い知らされる。
そして自信喪失するんだ・・・。
「・・・・・・もっと自分を知れ」
「え・・・?」
「お前は年が一つの頃にシノナの敵将、トーウミトの領主といった幼竜ならとても太刀打ちできぬ猛者と渡り合い、勝利を収めてきたではないか。お前には地竜として天賦の闘争心を持っておる。ならばそれを理解し、身を委ねるのじゃ」
そういえば、この手合わせをしてる時に、ティアスのことを『最初に会った頃の飛竜のお姫様』としか見てなくて、心のどこかで余裕ブッこいてた節がある。
「これは手合わせ。だけどいつもの遊びと変わらない」って・・・。
ティアスとのこれまでの関係が、無意識に僕をそう思わせてしまったのだろう。
これは遊びじゃなくて手合わせ。
1対1の実戦を想定した、言うなれば疑似的な、殺し合い。
だったら、ナメてかからないで本気にならないと。
「でも、どうやって・・・?」
「内なる竜の本能を心で見て、それに火を付けるのじゃ」
竜の、本能・・・。
火を、付ける・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ガウッ!!!」
仰向けになった僕は、起き上がりざまに爪でティアスの顔を引っ掻いた。
寸でのところで避けられたが、攻撃がティアスの右角を掠って先が欠けた。
「リオル、一本!」
さっきまでとは違う、どこか喜ばしい声色で、ボロスは僕に一点入ったこと伝えた。
「ようやくらしくなってきおったではないか」
「ウウウウウウウウウウウウウウ・・・!!」と牙を剥いて唸る僕に、ティアスはどこか誇らしげだった。
まだ闘争心が何たるか、そしてそれに火を付けることが何なのか、よく分からない。
だけどティアスは、僕を見込んだからこそボコボコにした。
だったら僕も、それに敬意を払って、目の前の彼女を全力でブチのめすしかない。
心臓が熱くて、胸が高鳴る・・・。
ざっくりとだが分かる。
これが竜の・・・闘争本能。
「待たせて悪かったですね。・・・・・・もう容赦なんかしねぇからかかってこい」




