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3章ー2:新しいチャレンジ

 ミーノ領の中心地・金砂城巣きんさじょうすに帰ってきた僕は、書斎で一息つきながら書類に目を通す。


 やっぱ仕事場に自分だけのワーキングルームがあるっていいね。


 前世の頃は下っ端でそんなの持てなかったから。


 と、感慨に耽るのは後にして、進捗状況を確認するとしますかっ。


「え~っと・・・今日見に行ったトコを入れると、ミーノ領の9割強で農地化が完了したってことだよね?うん!上々やな」


 四年前にオリワ、ミーノ、カワミ領の三国で取り決めされた『三竜同盟』は、それを軸に東側で新しく四つの領土が、ミーノとカワミ・・・そして僕の故郷であるオリワ領に友好の意を示してくれて、合計7つの領土でシノナ領を牽制することになった。


 この四年間でシノナによる領土拡大を狙った戦は三度起こったが、その度に各領土で連携して食い止め、去年の秋を皮切りにシノナが戦を仕掛けたことはただの一度もない。


 僕の構想していた『シノナ南部包囲網』は事実上完成したと言ってもいいだろう。


 国防のシステムが粗方完了した後に、新しくチャレンジすることになったのが、『領民の生活向上と社会制度の制定』だ。


 竜の国・サンブロドでは、『農業』という概念は一応存在するのだが、その実態は家の傍で自生した野菜や果物を採るという、ほとんど採集に近いものだった。


 だから年ごとに収穫量にばらつきが目立つし、作物の大きさもまちまち。


 住んでる家も屋根一個を柱が支えているという、とてもみすぼらしいモノばかり・・・。


「これじゃダメ」と思った僕は、できるだけ昔の日本の農民に近い生活環境を整えることにした。


 農民たちには『畑』という概念を教えてあげ、土を耕して作物の生育を邪魔する雑草を刈ることを伝えた。


 最初の内はほとんど実らなくて苦労したが、助けになってくれたのがミーノ領のドワーフと共同開発した、『竜動式耕運機』だ。


 馬車みたいな形をした、口でくわえて引く木造のトラクターみたいなので耕すことで、土壌が整って収穫量が安定し始めたのだ。


 草刈り道具については、今日持っていったフットバンドタイプの鎌などを始め目下開発・改良中だ。


 住居についてはこれもドワーフ達と一緒に考え、日本の弥生時代に似てて、かつ鳥の巣みたいな、飛竜ワイバーンが快適で落ち着くものを考案した。


 外観はすり鉢状、屋根は藁ぶきで風通しがよくて壁は断熱と吸湿性がいい素材を使っている。


 これなら夏は涼しく、冬は暖かい住環境が提供できるはずだ。


 あとは網トラップを使った漁や草食生物の畜産など、農民たちが動物性タンパク質が摂れるよう試行錯誤している。


 魚籠びくを使った漁は十分な成果が出たから、後は畜産かな?


 次に、『社会制度の制定』についてだが、それはズバリ・・・『年貢』の導入だ。


 実は金砂城巣きんさじょうすの武将や小姓、侍女たちも生活の全てを狩猟と採集で賄ってきた。


 これもやっぱり不安定で、食いっぱぐれる時があるから、農民が栽培した分の一部を徴収することにした。


 前世で税金を納めてた身として、心苦しく思ったけど、食料の安定供給のために思い切ってやってみることにした。


 今の段階では、とりあえず日本の消費税10%を真似て、収穫量の一割。


 野菜が100個実ったら内10個を納める設定にしてる。


 城巣内の保存方法が向上したり、農家ごとの消費量を鑑みて、肉や魚も納めさせたり、税率も変えるつもりだ。


「はぁ~・・・。領土運営って大変・・・」


 日本人だった頃は、やれ「税金が高い」とか、やれ「物価が高い」とかぶ~たれてたけど、いざやる側に回ってみると国や地方自治体にホント頭上がんなくなる。


 だってこういうのを日々の仕事としてやってたんだから。時に色んな意見やバッシングを浴びても・・・。


 でも、僕のやりたいことはまだまだ山積みだ。


 その中で一番やりたいのは、やっぱり『兵農分離』だ。


 戦のない平和な世の中になったら、もう農民たちが戦う必要もないし、ましてや戦場で命を落とすことなんて・・・。


 やるべきことはたくさんあって、頭と身体をいっぱい使う。


 だけどこの、群雄割拠の竜の戦国を、僕がいた平和な日本みたいにするためには、へこたれてなんかいられない。


「っし!やるかっ!!」


 頬をパンパン叩いて、僕は主人であるディブロに出す報告書と新しい法案の要望書として出す石板を爪で記入する。


 その時、襖の向こう側から「失礼いたします」と聞こえ、ボロスの小姓が訪ねてきた。


「リオル様。そろそろ・・・」


「ああ、もうそんな時間ですか・・・。分かりましたっ。すぐ行きます!」


 記入が済んだ書類とまだの書類をざっくり分けて、僕は書斎を後にした。


 実はもう一個チャレンジし始めたことがある。


 それは、直属の上司であるボロスとの稽古による、本格的な武術の修得だ。

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