3章ー3:竜の武術
「う~っし!今日も稽古頑張るぞ・・・って、あっ」
ボロスに稽古を付けてもらう城巣の庭に行くと、何故かティアスがいた。
「ようリオル!頑張っておるかえ?」
僕と同じくティアスも五歳になった。
最初に会った頃、ほんのちょびっとしか生えてなかった父親譲りの二本角は、倍以上にまで伸び先端は鋭利に尖ってて、フリルも大きくなってる。
なんだかトロサウルスを連想しそうな見た目だ。
「なんじゃ~?わらわがここにおるのがそんなに意外かの?」
声色は少し低くなり、どこか大人っぽさを感じるようにはなったが高飛車な口調は相変わらずだ。
「いやだって、姫様は稽古付けてないはずでは?」
「合間を縫って、ぬしと同じくわしが付けていた。今回は互いの力量を確認するため手合わせをしてもらう」
マジか・・・。
ここに来て同年代の子と練習試合するとは・・・。
「叩きのめしてやるから覚悟するがよいぞっ!」
「こっちこそ、相手が女子でも加減しませんよ」
「手心というのがわからんヤツじゃの~!指一本でも触れれば手折れてしまうほどの花のようなわらわなのにぃ・・・」
「育ち盛りの大木の間違いでしょう?」
「またかようなことを申す!あ~やだやだ!!女子心を大事にせぬ不埒なオスはっ!」
僕とティアスが軽口を言い合っていると、ボロスが「ブシュルルルルルルルルルルルル・・・!!」と荒い鼻息を漏らす。
「そこまで!」ってニュアンスだろう。
全くもぅ・・・ティアスのせいで起こられちゃったじゃん。
ジト目で睨む僕に、ティアスは「べ~!!」と舌を出す。
「ではまず、前回までのおさらいをする!リオル、来い」
「はっ、はい~!!」
ボロスに呼ばれた僕は、神妙な顔で彼と向かい合う。
「自分に合った型は見つかったか?」
「まだ手探りですがベース・・・いやいや、基本になる物はできました!!」
「よろしい。ではわしにそれを打ち込んでみよ」
「はいっ!では・・・いざ!!」
足に力を込め、僕はボロスに向かっていった。
成長して発達した爪でボロスに切りかかる僕。
ボロスはそれを素早く避けたり、冠状の頭部でガードしたりしながら捌いていく。
「直線的な“爪術”だな。これでは今までと変わらぬではないか?」
「まだまだここからですよ!!」
「ほう。それは楽しみだ!!」
特徴的な頭部をハンマーみたいに振り下ろしたり、死角から噛み付いてきたりするボロスの攻撃を、地竜自慢のフットワークの軽さで避ける僕。
毎度のことながら、あからさまに手加減されてるな・・・。
それでいて付け入る隙がまるでない。
もうちょっと粘る必要があるな・・・。
チャンスを見逃さないようにしなきゃだな・・・。
ずっと今日まで自主練してきたんだ。
ここで絶対に物にしてやる!!
攻撃と回避を繰り返しながら、僕は一個目の必殺技を打ち込むチャンスを窺った。
◇◇◇
『竜術』
それは竜の国・サンブロドに古来から伝わる武術だ。
日本の剣術や槍術みたいに身体の各部位ごとに種類が分かれている。
牙で噛み付く『牙術』、爪で切り裂く『爪術』、角で突く『角術』、尾を振る『尾術』。
そして、火球ブレスや放電など、色んな属性を使った『属術』だ。
最初これを習った時は、「属術が使えたらいいな~」って思ってた。
だって竜といったら火を吹いたり雷を角から出したりするのがカッコイイから。
だけど・・・僕は無属性。
火を吹いたり、雷を撃てたり、毒も持ってない。
正直、落ち込んだ・・・。
でもまぁ、モンハンでも無属性でも強いモンスターはいっぱいいるから、気を取り直して他を学ぶことにした。
どうやら竜術は、各領土ごとに流派があって、みんなそれを会得してるらしい。
カワミ流を学ぼうとしたが、飛竜用の物ばっかだったし、オリワ流の修行をするにも教えてくれる人、もとい竜がいない。
そこで僕は、ある結論に達した。
それは・・・『モンハンのモンスターの攻撃モーションを可能な限り再現して、我流として使う』こと。
せっかく竜の身体になったんだ。
ゲームの中で狩ったモンスターの攻撃を真似するのに、これ以上の機会はない。
それに・・・我流って、それはそれでカッコイイやん・・・。
こうして僕は、前世のゲームの記憶を頭の中で漁って、その中で見つけたモンスターの攻撃を真似して自主練を続けた。
そして、ようやく一個目の技が、完成した。
◇◇◇
っ!!
ボロスが正面を向いたまま僕の間合いに入った!
今や!!!
チャンスと見た僕は前足を踏ん張り、正面を向くボロスの顔に回転しながら尻尾を叩き込んだ。
まともに食らって後ろによろけるボロス。
僕は宙を舞った後、スタッと華麗に着地した。
「どうですか!?これが僕の技ですっ!!!」
「・・・・・・思ったより良いではないか」
ふらつきを覚えつつも、ボロスは微笑みながら僕の編み出した技を褒めてくれた。
「ありがとうございますっ!!」
「して、名は何という?」
流派と技の名前。
それはもう、とっくに決めてある。
僕がずっと、付けたかった名だ。
「・・・・・・『ヒノモト流竜術・渦跳び』です!」




