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2章ー35:バケットガップ海峡の戦い(拾)

「スラギア君っ!!」


「スラギア様っ!!」


 僕とレムアの顔を見たスラギア君は『ぱぁ・・・!!』と笑顔になった。


 さっきまでの緊張がウソみたいだ。


「ははっ、レムア!よく戻ってきてくれたな!今か今かと待ちわびておったぞ」


「申し訳ございません。かような荒天の中では兵の方々の飛行がままならず・・・」


「構わんよ。しっかしあれじゃの~?かなり派手な参上をしておったな?」


「ふぇ!?」


 さっきのアクロバティックな登場の仕方を見られたと知り、レムアの顔が赤くなる。


「はしたのうございましたでしょうか・・・?」


「麗しき女子おなごが鉄火場で勇猛になるのは見ていて爽快っ!!太陽と月、互いに相反する物どうしに存在する雅を感じる」


『ギャップ萌え』のことを言ってんだろな。


 確かにそれは同意見だ。


 僕もお淑やかでちょっと天然なキャラが、バトルシーンで豪快に戦うシチュはとっても好みだ。


「ましてやそれが、()()()()()()()であれば尚のこと良しっ!!」


「っ!!おっ、お戯れはこのくらいにして・・・!!早いとこケリをつけちゃいましょ!!」


「ああ、そうじゃな」


 なんかレムア、怒ってる?


 スラギアくぅ~ん、女の子に失礼なこと言っちゃアカンて~・・・。


 でもなんで、僕の方見ようとしなんだろ?


 まっ、まさか・・・!?


「・・・・・・って、それはないわな。いい加減分かれよ?」


 僕は「ひょっとしてレムア僕のこと好きなんじゃないの?」な~んて諦めの悪い高望みを持ってる自分にムカッとして、目の前の現実を見た。


「ミーノ軍・・・。おのれぇ・・・!!」


 ディブロにアッパーカット食らったバナデウスは、ぼやける意識をはっきりさせるために何度も頭を振った。


「スラギアぁ・・・!!貴様オリワだけではのうて、ミーノまで呼びつけおったかぁ・・・!!!かような姑息なマネをして、タダで済むとは思うまい?」


 スラギア君に向かって、バナデウスは殺気満々の眼差しを向けた。


「・・・・・・今回の奇襲の絵図を書いたのは僕だ。そんなにスラギア君を責めるなよ?」


 名乗りを上げると、バナデウスは即行僕に視線を移した。


 銀色の身体じゃ、サメみたいな真っ黒な目玉がよく目立つ。


「オリワの領主のせがれ・・・。なるほど。あのシノナからの使いが貴様を目の敵にするわけじゃ。その齢で大層な切れ者じゃの?」


「お褒めに預かり感謝するぜ。そんでよ?褒められついでになんだが、ここいらで手ぇ引くってことはできないか?」


「・・・・・・何ぃ!?」


巻牙城巣まききばじょうすがアンタの先祖の骨でできた代物ってのには何の根拠もない。カワミ領を諦めるってんなら、こっちから絶対に戦を仕掛けたりはしない。それでいいよね?スラギア君」


「無論、そのつもりじゃ」


「・・・・・・笑止!!!」


 バナデウスの怒声とともに、その場の空気が一気に重くなった。


 これがカワミと双璧を成す水竜リバイアサンの国の殿様の気迫ってことね・・・!!


「このまなこで見て分かるっ!!あれは、我ら先祖の骨から成りし牙城!!カワミの不届きな簒奪者さんだつしゃには爪の先一本たりとて触れさせてなるものかっ!!我らの領土・・・返してもらうぞ!」


 どうやら引く気はないみたいだな・・・。


 だから領土問題は厄介なんだ。


 一方が「ここは元はこっちの領土だ!!」って主張すると、頑として聞かず、時として強引な手段に訴えることだってある。


 尖閣諸島や竹島が、そのいい例かな?


 明確に昔から日本の領土だったって文献とか残ってんのに、中国と韓国にも『自国の領土だった』って記述があるから、問題をややこしくする。


 そういうのは、歴史の矛盾点を見つけて、双方納得いく合意が見つかるまで話し合うしかないと思ってる。


「頭お花畑かよ」って言われるかもしれないが、それが一番安全で無難だ。


 結局僕は、どういう決着になるのか、見届けることはできなかったけど・・・。


 そう考えると、今回の事例は幾分単純なのかもしれない。


 だって向こうは、「目で見て分かんだよ」っていう、むっちゃくちゃな理由で強引に奪いに来てんだから・・・。


 だったらこっちのやることは、一つしかない。


「・・・・・・平和な解決を望んでたけど、残念だ。そっちがその気なら・・・和睦を結んだ国の安寧を守るべく、お前の首、今日この場で獲らせてもらうぞ!!」


 戦う意志を見せた僕を、バナデウスはあろうことか嘲笑った。


「お前如きにこの首が獲れるものかっ!」


「それはどうかな?」


「ほぅ~大した自信じゃな。そう吠えるのであれば、何か策の一つでもあるのか?」


「あるよ」


 僕が断言すると、バナデウスは「くくっ・・・!!」含み笑いをした。


「ならば申してみよ」


「敵の大将に手の内を晒す馬鹿がどこにいる。だけど取っ掛かりだけは教えてやるよ」


「何じゃ?なんじゃ~?」


「お前・・・父上と戦った時、スラギア君が攻撃してこないって分かってたろ?」


「っ!!?」


 バナデウスの顔から余裕が失せた。


「そのぶったまげた顔を見るとアタリみたいだな。それはスラギア君の攻撃が無駄だからじゃない。スラギア君の攻撃が、下手をすれば父上すらも巻き込みかねないほど《《強力》》だからだ。お前はスラギア君の優しさに付け込んで、父上をなぶったワケだ。とんだクソジジイだな?」


 図星を突かれて憤るバナデウス。


 その時、スラギア君がとても不安そうに僕に近づいてきた。


「リオル、わしは・・・」


 戦いを躊躇っているスラギア君の手を、僕は優しく握ってあげる。


 僕があげた、守り爪が付けられている方の手だ。


「スラギア君なら絶対上手くいく。僕たちを絶対傷つけたりなんかしない。だから守り爪(それ)に願掛けして、ドーンとかましてやって」


「でっ、でも・・・」


「だいじょ~ぶ!!前にもいったけど、そのお守り・・・めちゃくちゃ効くから!!だよね?レムア」


 僕の問いかけに、レムアは微笑みながら頷いた。


「じゃあ、行くよ?レムアは僕と一緒にアイツの動きを封じる。スラギア君は、合図したらアイツの懐に思いっきり飛び込んで()()()()()


「張り付く?どういう意味じゃ!?」


「細かい話はナシ!あとはほぼアドリブで」


「あど、りぶ・・・?」


「出たとこ勝負ってことやっ!!!」


 その掛け声を合図に、僕とレムアはバナデウスの方へと全速力で向かっていった。


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