2章ー34:バケットガップ海峡の戦い(玖)
「ははっ・・・やっと来やがったかっ!」
地面から飛び出してきてバナデウスに思いっきりアッパーカットかましたディブロを見て、僕は乾いた笑いをした。
バナデウスの奴が必殺技みたいなのを撃つ気満々だったのに、すごく冷静なスラギア君に、めっちゃくちゃヒヤヒヤしていたからだ・・・。
「ミーノ軍!!?きっ、貴様まさか・・・!!!」
ああ、そうだ。ゲレドの相手してたんだっけ・・・。
「ああそうさっ!!カワミに援軍を寄越すよう頼んだのはウチだけじゃなかったんだよ!!なんせミーノからカワミと同盟組むことを提案したんだから、助けに来んのが筋ってモンだろ!?テメェは同盟を潰すためにここに来たが、まんまと裏目に出たなぁ!!!」
「くっ!!ぐぬぬ・・・!!!」
カワミ、ミーノ、オリワの三国同盟を妨害するためにトーウミトに味方をしたゲレドだったが、かえって三国の同盟を決定的にしてしまった結果に、歯がゆい気持ちを隠せないでいる。
大嫌いなクソ野郎にこれ以上ないほどの煮え湯を飲ませることができて最っ高の気分やわっ!
「つまりわしらは、貴様とあの小坊主の領主の策に、まんまと乗せられたワケじゃなぁ~・・・」
「まっ!そゆことだわな」
「おっ、おのれぇ・・・!!!絶対に、絶対に許さ・・・」
凄まじい殺気を漂わせて僕を睨みつけるゲレドだが、奴の上から青い何かが降ってきて、自由落下の要領でゲレドの顔を切り裂いた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
甲高い絶叫を上げてゲレドはのたうち回った。
どうやら左目を潰されたみたいだ。
「お待たせしましたっ!!リオル様っ!!」
「レムア・・・って、ええっ!!?」
満面の笑みを浮かべてレムアが僕の方へ駆け寄ってきた。
「遅くなって申し訳ございません!」
「それより・・・え?今、上から降ってきたよね!!?」
「はいっ!兵の方に運んでいただいて。リオル様がゲレドと相まみえているのが見えて、思い切って上から奇襲をかけてみました!!完璧な帳尻合わせだったでしょうか?」
ちょっと不安そうな顔でアンサー求めるレムアに僕は若干引いていた。
だって飛竜からダイブして、落下に身を任せて敵の左目を潰すなんていう、とんでもないアクロバティックなことをやってみせたのだから。
だけど僕のためにやってくれたことだ。
ちゃんと褒めてあげないと・・・。
「うっ、うん。軸合わせばっちしだった。やっ、やるねぇ~・・・♪」
「ふぇ?んんぅ///・・・」
とっても恥ずかしそうにしてたけど、その表情とは裏腹に、レムアの尻尾がワンちゃんみたいに嬉しそうにフリフリしてる。
かっ、かわええ・・・。
「よっ、よくもわしの目を・・・!!!八つ裂きにしてくれるっ!!!」
潰れた左目を押さえながら、ゲレドは僕たちを睨みつける。
「裏切りの代償しては全然足らぬわ」
「うっ・・・!?」
さっきバナデウスに一発かましたディブロが、数頭の兵を伴って来た。
「おっ、お館様・・・」
「何が《《お館様》》じゃあ・・・」
半年ぶりにゲレドに会ったディブロは相当ブチ切れのご様子。
娘を攫って敵に寝返り、自分と奥さんを自害させようとした謀反人が目の前にいるのだから、それは当然か・・・。
「安心せい。貴様は生きて捕らえる。己が見捨てた領土で、己が売ろうとした主の手で、大して役立たぬ悪知恵が詰まった頭は胴と泣き別れることになろう」
ミーノに連行された後にディブロの手によって打ち首にされると聞かされたゲレドは、ビビりまくって失禁してしまった。
「・・・・・・ゲレドは赤紫色の毒液を吐けるようになってます。くれぐれもお気をつけて」
「お主はどうする?」
「スラギア様の加勢に。バナデウスの首を」
「おぬしの父親でも持て余すほどの手合いじゃぞ?勝ちの目はあるのか?」
「お任せを。策はあります!」
ゲレドと向き合ったまま、ディブロは横目だけで僕を見る。
「・・・・・・よかろう。そもそもこの奇襲を考えたのはお主じゃ。ならばその手で終わらせて来い」
「ありがとうございますっ!!」
「わたくしも是非ご一緒に!!」
「許す」
「感謝いたしますっ!!」
「では僕はこれでっ!行くよレムア!!」
「はいっ!!」
ディブロに頭を下げて、僕とレムアはスラギア君のトコまで走った。
さっきのルータスとのやり合いを見てて、バナデウスが倒すのに相当骨が折れる奴ってのが分かった。
だけど確かに見えた。
あのバカデカい水竜を倒す方法が・・・。
そのためには・・・スラギア君の力が必要だ。




